1級キャリアコンサルティング技能検定の実技面接試験で、
ロールプレイ時に事例相談者へ目標設定と方策の企画提案を行う場面を書いてみます。
 
その前に話が少し脇道に逸れますが、
私の考え方では、
事例相談者と目標設定が出来るような場面では、
事例相談者と事例指導者の関係の中に指導に関するヒエラルキーが確立されていると思っています。
 
これまでこの記事で事例相談者と事例指導者の関係は、
学習同盟であること、
プロとプロの関係であること、
お互いが良い仕事を承認出来ること、
事例指導者側も事例相談者から学ぶことがあること、
等々、
ある意味、関係が対等的であるような考え方を書いてきています。
 
勿論これらは、
事例指導者側の姿勢や態度という視点から書いてきたわけで、
事例相談者への指導を行ううえで、安心・安全を提供するという点でも重要なことです。

 
この記事で表現を行うには少し難しい内容にもなるのですが、
事例相談者と事例指導者の関係はヒエラルキーがあり、
それを事例指導者がどのように丁寧且つ慎重に考えているのかによって、
事例相談者にとって敏感に得られる事例指導者の姿勢や態度の情報になるのではないかと思っています。


何故、この話を書いているかというと、

指導関係は、概ね目標設定まで展開されていくと、
ヒエラルキーが表出している段階に進展していると考えるからです。
 
この状況を第三者としてライブ観察している方からみれば、
時にはアートを感じられるのではとも思います。
 
”キャリアカウンセリングはアートかサイエンスか”
 
という視点をある先生に教えていただいたことを思い出しますが、
まさにその場で起こるコミュニケーション発展による創造性の展開や人間同士の関係性の変化は芸術とも科学ともいえると思います。

話を戻すと、
事例相談者とケースを使って問題把握と共有化が出来、
また、そのケースを概念化したうえで事例相談者の抱える問題の本質がわかり、目の前が開けるようになることで事例相談者の意欲がより強くなっていく状況が出来ていきます。

そこで、事例指導者が具現化出来る目標を設定して事例指導者が学習意欲を向上化させていく展開を図ります。

事例指導者から事例相談者の問題を解決するための明確な目標を提案することが重要です。

ロールプレイでも、この明確化は重要なポイントだと私は思っています。

この提案の際、
事例相談者に恐る恐る語りかけている感じがあったり、
ズルズルとなんとなく目標的なことを伝えていたり、
事例相談者に受け入れてもらえないのではないかと考えて、
はっきりと目標提案を伝えられない状況では、
ヒエラルキーの良き効果が出ず、メリハリのない指導展開になってしまいます。


せっかく事例相談者が気づいた自分の問題について、
事例指導者はその問題の解決を専門的な介入によって支援していくわけです。

しっかり目標を提案する意味でも、事例相談者の意欲を向上化させていく支援を行うためにも、
明確に宣言してその目標を達成することでどんな意味があるのか、
事例指導者は教育的視点で説明することも必要な場面はあると思います。

目標を共有化出来たら、
その目標を達成するための方策を丁寧に企画します。

実際の事例指導でも、
この場面では事例相談者が相談のために作ってきてくれたケースを有効に使うことが多いです。

実技面接試験でもロールプレイ中でこの方法はやりやすいのと、事例相談者にとっても理解しやすくて良いと思います。

事例相談者のケースを使うことで、実際にリアルな振り返りが出来ますので、

『それでは作ってきていただいたケースを使って、今気がついた問題のところを、どのように進めればクライエントにとってより良い面談になっていくか、実際に一緒にやってみませんか?』

事例相談者に具体的になにをするのか企画提案してみます。

その際、ケースのどこを使うのか、
ある程度こちらで決めておいても良いし、
事例相談者にケースのどこをどうすればどうなると思うか等、
考えていただいても良いと思います。

どちらにせよ、事例相談者がわからない時、
若しくは頑張ってやってみたとしても今ひとつな感じの場合は、
事例指導者から、
『私だったらこうしてみるかな』
という感じで、役割交代してこちらがやってみることも大事です。

そして、事例相談者から、
「なるほど」
というような反応があれば、
そう働きかけることでどうなるのか、
事例相談者に感じたことを聴きながら気づきを促す展開をします。

理解を深められたら、
改めて事例相談者の言葉でやってもらうことも大切ですので、
こちらから教えただけにならないようにして欲しいところです。

なお、事例相談者が今回の問題に陥った原因は様々だと思いますが、
今回事例相談者が学んだことを継続していくにはどうすれば良いのでしょうか。

こんな視点からも事例指導者は、事例相談者に自己研鑽の必要性や方法について気づきを促していきます。

この働きかけは啓発を行なっているという点の視点でも必要ですし、
何よりも、目の前の事例相談者の成長について自助努力を具体的にイメージさせていく支援となり、
事例相談者のネットワークへの具体的な働きかけを検討する機会にも繋がります。

また、ケースの活用については、その一部を使うロールプレイだけに終わらず、
時間があるようであれば、さらにケースを有効に活用する方策を展開します。

例えば、
『このケースの場合、クライエントの環境に働きかけて、クライエントの問題解決に繋がることは何がありそうか』
という視点にも具体的に気づかせていきます。


クライエント自身の環境や、事例相談者とクライエントの関わりの環境次第で、様々な働きかけが創造出来ます。

これも以前から記事にしていますが、
クライエント自身を通じて、クライエントのあらゆる環境へ働きかけていく方法を提案することも有効ですし、
事例相談者の立場等によっては、倫理の面を十分に考えた上で、クライエントが所属している組織等へ働きかけを行なう有効な方策もあります。

いくつものパターンがあるかと思いますが、
事例相談者にいきなり様々なことを一度に提示していくことは妥当ではないので、
先ずは、事例相談者自身の優先すべき課題解決が一番大きなポイントで、
それをどのように継続していくか等の共有化と、
プラスαとして、
視点を変えての周囲への働きかけの方策のうちのひとつ位の気づきで良いのかなと感じます。


事例相談者のキャパの問題もあるので、
一度の事例指導で出来ることは決まってくるのではと思います。

以上で、目標設定と方策についてのひとつひとつの意味合いを解説しながら、
ヒエラルキーという視点をもって書いてみました。

このブログに記している内容は絶対的なことではなく、
私が考えていることや意見を含め書き続けています。

読者の方々にとって、何かひとつでもご参考にしていただければと思っています。

CVCLAB/小林幸彦