1級キャリアコンサルティング技能検定

実技面接試験のロールプレイ時に直面しやすい状況を書いてみたいと思います。

 

ロールプレイをしていて、事例相談者の出来ていないところ、

いわゆる事例相談者の問題点が掴めず、

同じところをぐるぐると回ってしまい、

どんどんと時間が経過していく手詰まり感を覚えたことはないでしょうか。

 

このような時って焦ってしまって、

面接が全然前に進まなくって袋小路状態になりますよね。

 

この状態でよくある事例は、事例指導者の都合で、

 

・なんとかうまく面接を進めたい、自分が思うように面接を進めたい

・事例相談者の問題はなんだろう、悪いところはどこだろう

 

このようなことばかりに気がいってしまっている場合に陥りやすいと思います。

 

検定試験だからこそ、特にそのような状況になることが多く、

上手く進めたいと考えるのは当然かもしれません。

 

しかしながら、これでは事例指導者としての

より良い事例指導の展開は期待出来ないと私は思います。

 

何とかして早く事例相談者の問題を見つけるため、

手掛かりがどこかにないかと焦るあまり、

同じようなところを何度も行き来したり、

こちらが気になった点に誘導をするために同じような質問を何度もしたり、

結局、事例相談者が違和感を感じて指導関係がどんどん薄れていってしまいます。

 

事例相談者は、

自分の事例に問題や悩み、行き詰まり感を感じて事例指導を受けに来ているのです。


なんとかより良い支援方法がないだろうか、

もっとキャリアコンサルティングが上手になれないのだろうかと考えて来ているのです。

 

だからこそ、先ず、事例相談者がやろうとしたことと、出来ているところ、

承認していけるところを根拠をもってしっかり評価して、

この事例に向かう本人のモチベーションを高めていく必要があります。

 

悪いところを探すのではなく、

やろうとして上手くいったところを先にしっかりと見つけて共有化しましょう。


その練習をしておくと意外とスムーズに事例相談者から、

「出来ている点をそのように言ってもらえて自信がつきました。良かったです。

でも、クライエントのことを考えてこうしたのに…。なぜかここではこうなってしまったんです。

それが私にわからないのです。」


というように主訴が出やすくなることも多いです。


するとその問題の原因を一緒に考えていきましょうかと指導が前に進みますよね。


その問題の本質を掴むには、キャリアコンサルティングの基本フレームに当てはめていくことで見えてきます。


そして、目の前の事例相談者は、

キャリアコンサルティングの基本フレームを知っているのでしょうか。


相談歴がどの程度のキャリアコンサルタントで、どんな学びをしてきた方でしょうか。


キャリアコンサルティングの基本フレームについて共通認識があるでしょうか。


事例相談者はもっと上手くなりたい、なんで思うように面談が進まなかったのか知りたい等、

悩みを持っているわけですから、

 

事例指導者は、

事例相談者と基本フレームを通して、

どこが出来ていてどこがイマイチなのか、一緒に検討していくことで問題の本質を把握する手掛かりを得られることは多いです。


例えば、

関係構築の評価は、

『さっき◯◯さんは、クライエントの気持ちを受け止めて いきながら、丁寧に聴いていきましたよね。事例のこことか、このあたりです。

だから後日クライエントからも報告がきちんとあったんでしょうね。先程も申し上げましたが、関係構築の面ではとても良く出来ているのではないでしょうか』


そして、問題把握の評価は、

『問題把握は、クライエント視点の問題とキャリアコンサルタント視点の問題があるのですが、一つ一つ確認していきましょうか。

先ず、クライエント視点の問題は、クライエントの主訴になりますが、このクライエントの一番訴えたいこと、特に強く感じていることや一番問題であると思っていることはなんだったのでしょうか。

それは事例のどの点に出ていますか。』


と、事例相談者がクライエントの主訴を捉えられているかを一緒に考えていきます。


主訴が捉えられていないとクライエントの気持ちは置き去りにされた感じになり、

関係構築の維持が厳しくなりますよね。


ここがしっかり捉えられているのであれば、

次は、その主訴の原因はどこにあるのかを、

キャリアコンサルタント視点で把握することが出来ていたかを検討していきます。


『では、◯◯さんは、このクライエントの問題の本質は、どのように見立てていましたか。

それは事例のどのあたりを捉えてそう考えましたか。』


これを捉えていなければ、

問題の解決に向けた目標設定が出来ませんし方策も検討出来ません。


目標設定も方策設定や実行も、

クライエントが合意していなければ前に進めないわけなので、

キャリアコンサルタント視点の問題は、

クライエントと丁寧に共有化しなければ、クライエントは目標や方策の意味が理解出来ていないということになり、

クライエントに前向きな行動変化は起きないこととなります。


クライエントの主訴とキャリアコンサルタント視点の問題は繋がっているので、

そこを上手くクライエントに共有化することが出来て、

ようやく問題把握が出来ていると評価することが出来るだろうし、

また適切な目標設定が出来ることに繋がっていきます。


意外と、キャリアコンサルタント視点の問題把握が出来ていながら、

クライエントにそこを気づかせないままに目標設定したり、

方策の提案をしてしまっていたりする先走りパターンも多いです。


こんなことから、事例相談者は基本フレームのどこにつまづいているのだろうかと事例を通して一緒に検討をしていくことで、ぐるぐると回ってしまうことは起き難いと思います。


なお、事例を通して検討するという点が重要で、

事例相談者がせっかく作成した事例記録をどこかへ置いてけぼりにしないように気をつけてくださいね。


また、事例を通してということは、

この事例だけではなく、その問題は、他の事例でも起きやすい問題であり、その事例相談者の面談の進め方や視点の持ち方の傾向であると考えて、

その癖に気づきを促さなければいけません。

これが事例指導となります。


お話は戻りますが、

袋小路に入り込んでしまう感じは、

事例指導自体がシステマチックに進んでいないということになります。


要は基本フレームに忠実に進めていないのです。


目の前の事例相談者の育成を目的に、

構造的な指導展開を進めていきましょう。