1級キャリアコンサルティング技能検定の実技面接試験について、
指導関係構築のことを私の考え方で解説してみます。
キャリアコンサルティングに関しての事例指導(スーパービジョン)において、
事例相談者と事例指導者の関係は、基本的にクライエントとキャリアコンサルタントとの関係とは異なります。
※ただし、面接の進め方や視点等に関しては、キャリアコンサルティングの基本フレームに事例指導の基本フレームを当てはめて考えることが出来るなど共通点があります。
例:基本的態度、関係構築力、問題把握力、具体的展開力
事例指導は、事例相談者がキャリアコンサルタントとして適切なキャリアコンサルティングが出来るように、そのキャリアコンサルタントの成長を目的に指導を行います。
基本的には、
事例相談者自身の問題点を論理的に掘り下げて本人に問題点の気づきとその修正を促す支援を行なったり、
時には教師的に直接アドバイスや指導・指示を入れたり、
時には事例指導者自身が事例相談者のモデルとしてやってみせることなど、
様々な方法で事例相談者の成長と面談力を向上させていきます。
また事例指導者は、目の前の事例相談者がキャリアコンサルタントとして相応しくない(事例相談者自身がクライエントの問題を解決することが出来ない状態等)と判断出来る時には、その事例相談者が担当するクライエントを守る門番役にもなる必要があります。
よって、事例指導は、クライエントへのキャリアコンサルティングの提供とは異なり、
専門家同士の究極の学びの場(専門的・論理的な学習同盟)と言えると思います。
ここで若干話がそれますが、
事例指導は、専門家同士が学び合う事例検討会とも異なりますので注意が必要です。
事例検討会はケースカンファレンスのように、
その個別の事例について、各専門家の方々で視点を変えてみたり、
個別の問題の対処の方法、問題点等を協議したりします。
事例相談も個別の事例を通して検討していく点では似ているように思われるかもしれませんが、
その事例だけに特化して視点や問題点を掘り下げていくだけに留まらず、
事例相談者の関わり方によってクライエントはどうしてそうなったのか等、
事例相談者自身の専門的なスキルや、その癖のようなものに焦点を当てていき、
事例相談者のキャリアコンサルティングスキルを上げていくことが目的となっています。
事例相談者本人は問題の原因となるその面談の癖等に気がつき、他の面談でも気をつけなければいけないと自覚出来、自分で修正していこうと前向きな行動に移せる状況になっていくことが事例指導です。
このようなことから、指導関係を構築する力は最初の難関なポイントといえるのではないでしょうか。
今回は、指導の関係構築力【Part1】として色々書いてみます。
どうすれば指導関係構築が成り立つのか、
どうなれば指導関係が構築出来たこととなるのか、
こうすれば良いというマニュアルがあるわけではありません。
しかしながら、技能検定試験には関係構築力として評価区分があり、内容が公表されていますので、
それを再度見直して実際の事例指導での関係構築場面を思い浮かべて具体的に書いてみます。
1級キャリアコンサルティング技能検定の実技面接試験の評価には、
『職業専門家に向けた育成効果の高い関係を構築し、事例相談者に気づきや成長を促す関係を作ることができること。
キャリアコンサルティングの進め方を体系的に理解したうえで、キャリアコンサルタントとして、事例相談者に対する受容的・共感的な態度や誠実な態度を維持しつつ、
事例相談者が面接の課題に気づき成長できるよう、様々な理論とスキルを用いることができること。』
との内容になっています。
これを実際の事例指導のシーンに置き換えて少し検討します。
実際の事例相談者は、専門機関の情報や人伝を通じて、事例指導者のプロフィールをある程度知ったうえで事例指導者を選択しています。
この段階で指導関係は多少なりとも成り立っていると言えます。
事例指導者の活動領域や経歴と実績、取得している資格、
その指導者のキャリアコンサルティングへの想いや目標等々、
諸々の情報を、事例相談者は積極的に収集して指導者へアクセスするわけです。
これは、事例相談者が専門家としてもっと勉強したいと思っていて、
この事例指導者なら、自己の成長へと導いてくれるのではないかと思える先生を見つけようとする行動です。
関係構築の面で言えば、この段階で、
『職業専門家に向けた育成効果の高い関係を構築し、事例相談者に気づきや成長を促す関係を作ることができること。』
という評価内容にはまっていることがわかります。
しかしながら、技能検定試験現場では、短い時間の中で上記のような人間関係の構築をしなければならないので、どのように成立させるかが課題ですよね。
初対面の際の人間関係を良好にする基本的な要素は、
一般的にその人(良好にしたいと思う側)の姿勢が重要だと言われます。
その人の第一印象について、万人に好感を持たれる身なりや所作等、
特にキャリアコンサルティングやその指導を行う側には普遍的なスタイルが大事です。
例えば、ある先生は講師のお仕事に立たれる時や実際のキャリアコンサルティング、スーパービジョンの場でネクタイを外したところを見たことがありません。
ふとした時、この点に触れてみたら、
「僕は仕事でネクタイを外してというスタイルはどうもしっくりこなくて…」
という意味合いの事をおっしゃられていました。
今の時代、その価値観は人それぞれだと思いますし、
こうしなければならない、いけないという事はないと思います。
しかしながら、重要な席や年に一度の大切なイベントに臨む際の姿勢としてどう考えるでしょうか。
我々はキャリアの専門家です。
面接に向かう方々に基本的に正装をアドバイスしています。
私が事例指導を受講する際、
事例指導をしていただける先生方はいつでも正装の姿です。
試験会場で事例指導者役の受検者の方は、初対面の事例相談者役の方と出会い、
そして、その方のキャリアコンサルティングの事例を通して育成指導を行う立場に立つわけなので、
基本的態度・姿勢という点で、その事例指導者の良識を見ることになるかもしれませんし、
人間関係として情報が少ない中、そこにこだわる事例相談者役もいるかもしれませんよね。
ですから、万人に好感を持たれるように努力することが一番ベストではないでしょうか。
勿論、それを払拭出来る匠の技術やスキル、
または著名人等の権威性パワーのある方等は服装などに影響されることはないと思いますが…。
決まり事のないことなので、どう考えるかは受検者の方次第だと思います。
年始早々から手厳しいお話しかもしれませんが、
このあたりのことも少し慎重に検討してみてもよいかもしれません。
技能検定試験の評価に上記内容にあてはまる項目があるかないかではなく、
1級キャリアコンサルティング技能士の更なる質の向上を目指すためにも、
このような視点を持つ指導者が存在することはとっても重要だと私は認識しています。
次回は、指導関係構築【Part2】として、
『キャリアコンサルティングの進め方を体系的に理解したうえで、キャリアコンサルタントとして、事例相談者に対する受容的・共感的な態度や誠実な態度を維持しつつ、
事例相談者が面接の課題に気づき成長できるよう、様々な理論とスキルを用いることができること』
について、解説を続けていきます。