前回に引き続き、事例相談者の問題について書いていきます。

 

前回は、

事例相談者が、

”クライエントに何かを働きかけたけど思い通りにいかなかった…”

 

みたいな感じで、

自分の面談の中で気になるところを話し始めるところが、

事例相談者自身の主訴に関わってくる場合があるという話を書きました。

 

勿論、ケースによって様々な話の展開があるので全くことなる場合もありますが、

先ずは、一つの例として記しています。

 

事例相談者の主訴を掴んで、その主訴を明確化することで、
事例相談者は、
”そうなんです!!
そういう思いでクライエントにアドバイスしたのに、何故か行動に移してくれないんです。
もう、どう支援をしたらいいのかわからなくて…”
 
こんな風に事例指導者に自分の気持ちや、やろうとしたことが伝わっていくと安心しますよね。
 
こうして指導関係が深まっていくと書きました。
これが事例相談者視点の問題です。
 
 
そして、もうひとつの視点は、
事例指導者から見た事例相談者の問題です。
 
これは事例相談者の面談が何故うまくいかないのか、
何故、クライエントの前向きな変化が生まれないのか、
事例相談者の問題の本質となるわけです。
 
前述した事例相談者視点の問題、いわゆる主訴が共有化出来ていなければ、
この事例指導者視点の問題は宙に浮いたままとなります。
 
いきなり、
「あなたは傾聴がうまく出来ていないので、結果、関係構築がイマイチですね。
だからクライエントは来なかったんですよ。」
 
みたいな話をされたら、
事例相談者はいくらプロでも、冷静な受け止めが出来ないものです。
 
 
実は以前、私が標準レベルのキャリアコンサルタントで、
これから2級を受検するという時に以下のようなことがありました。
 
某大学の男性教授に、グループワークの中で、
「あなた小林さんだっけ?
あなたはいつもあのようなアプローチをクライエントにしているの??」
 
クライエントによって異なりますが、あのようなアプローチはやることが多いです
と答えると
 
「あれじゃ、もう来たくなくなるよな…なあ、どうだった?聞いてて??」
と他のメンバーに同調させるように質問したのです。
 
すると、目の前にいた女性が、苦笑しながら
うんうん…と教授の言う通りだという仕草をされていました。
 
その時の私の気持ちは奈落の底に突き落とされた気分でした。
 
とても有名な教授ですし、先生がそこまで言うということは、
私の面談は相当ひどいのかな…こう感じたし、愕然としたものです。
 
しかしながらすぐに救ってくれたのが、そこにいた学び仲間にかけてもらった言葉でした。
 
その時の数ヶ月前に、田中先生の講座で一緒に学んだ仲間で、
たまたま、その大学でのワークでも一緒になったのです。
 
『小林さんらしいアプローチだし、その後の展開も考えられての積極的な内容だったと思うのであれでいいと思います。いろんなやり方があるので気にしないでいいんじゃないですか』
 
こんな感じで声をかけてもらいました。今でもその方とは学び仲間です。
 
このように肯定的に言っていただいた方がやる気を削がれずに頑張って学ぼうと思えます。
 
その時、もっともっと勉強して価値あるキャリアコンサルティングを提供出来るように成長してみせると誓ったものです。
 
※その教授が、私の性格や感情等をキャッチして、わざとそのようなアプローチをしていただいたとすれば、人を動かすスペシャリストかもしれません。
そう考えるようにするのも悪くはないと思います。
 
 
しかしながら、事例指導者は事例相談者のダメなところを指摘することが目的ではありません。
 
むしろ、事例相談者の良いところをしっかりと掴み、その良いところをさらに伸ばすにはどうすればいいのか、
事例相談者の持ち味をどう活かしたらよりよい面談になるのだろうか、
出来ていないところは出来るようになるという前提で何に気がついてもらえれば良いか等、
さらに良いキャリアコンサルティングをクライエントへ提供出来るように育成を目的として支援していくのです。
 
このように捉えなくては良き指導者にはなれないと私は思います。
 
事例指導者視点の問題に戻りますが、
きちんと事例相談者の主訴があるのですから、どうして事例相談者の考えたやり方で上手くいかなかったのか、
一緒に問題を掴んでいこうとした姿勢がとても大事です。
 
事例相談者との課題の確認の方法として、面接フレームの基本を使いながら、
①関係構築、維持はどうだったか
②主訴は何だったのか(CL視点の問題)
③問題の本質はどこにありそうか(CC視点の問題)
④CLに問題の本質を気づかせていく働きかけが出来たか
⑤CLは問題の本質に気づけたか
⑥問題解決のための目標設定とその意味の理解・共有(目標受入れ)はどうだったか
⑦目標達成のためのプラン設定と共有(受入れ)はどうだったか
⑧実行してみてどうだったか、CLと一緒に評価してどうだったか
⑨CLの環境等に問題はなさそうか、あればどのように働きかけるといいか
⑩他に課題はなさそうか、終結できるか
 
これは私が作った10項目リストですが、
スーパービジョンの時に、事例相談者と一緒にそのケースについて評価を進めます。
 
すると、事例相談者が自らここが弱いかも…と言い始めます。
そして、その根拠を事例相談者に聴きます。
 
すると、この時にこうなった、ああなった、こんな発言もあった等々
色々な事が振り返って出てきます。
 
キャリアコンサルティングが上手くいかないのは、
特に①~⑥に集中することが多いと思います。
※例外もあるので決めつけてはいけません。
 
キャリアコンサルティングのプロセスの重要性は体験することで理解が深まると思うので、
例えば、④と⑤が出来ていないのに、⑦に焦点を当てて、そこが出来るようにしようとしても、
全くしっくりこない事が本人にわかります。
 
ですので、スーパービジョンでは、本人の意向を尊重して、
⑦だけやってみて問題解決になりそうか、ロープレなどで体験させていくこともあります。
 
本人が⑥までは出来ている、問題はないと言っているのに、
事例指導者が、何が何でも④や⑤に問題の焦点を当てようとすると、
事例相談者は指導者の言葉を受け入れられなくなります。
 
先ずは本人が気づくように成長させていくことなので、やってみることが大切です。
 
検定試験では、実際のスーパービジョンと同じような時間はないので、
ここまで細かくすることは難しいかもしれませんが、ロープレが出来なくても、
効果的な質問を投げかけながら、事例相談者のやろうとしていることを尊重したうえで、
 
本人が問題だと言っているひとつ前に戻って、
ここはどうでしょうか?
〇〇さんは、CLのためを思ってこうしてたけど、もしかしたら…
CLは、それをやる意味が理解出来ていないってことはありませんか?
 
せっかく〇〇さんは、こうなると思って⑦で提案しましたよね。
でもCLは動いてくれない。
 
ということは、その意味が理解出来ていないってことはありませんか?
 
こうすると、事例相談者は、
 
なるほど!!そうかやる意味を説明すれば良かったのか。
 
みたいになってくれることもあります。
 
するともっと掘り下げてみませんか?
 
と提案出来ますよね。
 
⑤はどうでしょうか。
そして④は?
 
〇〇さんはCCとしてCLの問題の本質はわかっていたけれど、
肝心のCLは自身の問題に気がつかないまま、
〇〇さんの方策を聞いているから行動出来ないってことになりませんか。
 
ということに本人が気づき、
プロセスを丁寧に踏んでいく事の重要性に改めて理解を深めていきます。
 
ここで何が足りなかったかが事例相談者と共有出来、初めて概念化に進むこととなります。
 
今回はここまでにして、
次回、事例相談者の問題の本質の概念化について書いてみたいと思います。