1級キャリアコンサルティング技能検定の
面接試験評価区分【問題把握力】について考えてみます。
 
 
前々回と前回でキャリア・コンサルティング協議会が明示している評価区分の内容から、
【基本的態度】と【関係構築力】を解説をしてきました。
 
今回も同様にその内容から考えてみます。
 
 

『事例相談者が担当している相談者や事例そのものの状況を客観的に把握し、事例の本質を掴むことができること』

 
私の場合、実際の事例指導では事前に事例をメールや郵送で送っていただくようにしています。
※事例記録か逐語記録のどちらかを事例相談者に決めてもらい、記述ルールを指導させていただいた上、郵便やセキュリティメールで送ってもらっています。
 
中には記録の記述方法がわからない方もいらっしゃるので、
キャリア・コンサルティング協議会の各種講座で使用されている逐語記録やケース記録のフォームを参考にした雛形を、
予め事例相談者に送り、そのフォームの項目を網羅した内容で作成いただいてます。
※ほぼ1級論述試験問題の事例記録の形式と同様です。
 
何故、このような事を書いているかというと、
実技面接試験での事例記録の扱い方に繋がるからです。
 
事例相談の面談を行う1週間前までには記録をいただくようにしていますので、
前もって内容をじっくりと研究し、事例の本質を掴めるように疑問点や確認すべき事にチェックを入れ、事例の見立てをしつつ、指導日に質問を行う準備をしておきます。
 
 
スーパービジョンは先生方によって様々なやり方がありますが、ここで共通なのは、
「事例そのものの状況を客観的に把握する」
「事例の本質を掴む」
です。
 
これらは、
事例相談者の間接的な情報によってそれらを見立てていくということです。
 
要は、事例相談者からしっかりと事例内容を聴かなければわからないのです。
 
1級の面接試験は例年通りであれば、
事例相談者役の方から試験会場のその場で事例記録を手渡されます。
 
試験が始まってから、きっかけを作ってその事例を見せていただくわけですから、
事例指導者(受検者の方)は、
瞬時に事例記録の内容を把握出来るわけがありませんよね。
 
かといって、自己紹介をした後、ちょっとした会話をして、
残り30分もない貴重な時間に、手渡された記録をその場でジッと読み込むというのも、
少し違和感がある感じがします。
 
事前に受検票とともに送られてきたロールプレイケースにどのような事例かが概要版で提示されているので、
どんな事例相談目的であるかはざっくりとわかります。
 
ただし、事例の詳細内容や事例相談者の主訴は、改めてきちんと事例相談者に説明を促さなければ、
指導者として把握出来ないので、このあたりの面接の進め方はとても大切になります。
 
面接試験でのスタンダードなやり方は、
事例相談者に事例を説明していただくことが一番いいのかなと思いますが、
私の友人は、
「預かった事例を、その場で自分がはっきりと声に出して読んで、疑問に思ったところは事例相談者に都度質問したよ」
というエキセントリックな進め方をしたそうです。
※この方は、実技面接試験は受かっています…(笑)
 
確かに事例を客観的に把握する、事例の本質を掴むという点では、面白い進め方かもしれません。
しかしながら、事例相談者に説明をしてもらう方が、その説明によって事例相談者の能力やスキルを把握する手掛かりが見つけやすいと私は考えます。
 
『事例相談者の能力やスキルを客観的に把握し、育成的な視点で事例相談者が取り組むべき問題を特定することができること。』
 
前述の通り、事例相談者に事例の説明を促していき、その説明自体から事例相談者の視点が見えてきたり、質問を投げかける事で事例の本質が見立てられ、事例相談者がこの事例でやろうとしている事や考えている事も明確になり、事例相談者の問題点が把握していけるわけです。
 
また、注意したいことは、
事例相談者がクライエントためにやろうとしている事や考えている事は、
事例相談者の戦略なわけですから、基本的に事例指導者はそれを尊重する姿勢をみせていくべきです。
※勿論、クライエントにとってその戦略が余程酷い場合は、事例指導者はクライエントを守るゲートキーパーとして機能しなければなりません。
 
先ず、事例相談者がやろうとしている戦略について同じやり方で進めた場合、
どこに問題点がありそうか、どんな事をすればもっといい面接になったのか、
事例相談者が気づけるように働きかけていきます。
 
事例記録を使いながら、
「クライエントのこの沈黙は何か、言葉や行動の意味は何か」
「この質問にはどんな意味があったのか」
「ここでのクライエントの発言にはどんな意味があったのだろうか」
「この発言を拾っておけばどうなっただろうか」
「事例相談者の苦手意識や迷い、不安や自身のなさ等がなかったか」
等々、
 
事例相談者の問題点の気づきに関わるところに焦点を当てていく事で、もっと他の対応があったのでは、ここが自分は弱いのかな…と気がつけるのです。
 
 
また、他の戦略もあるという事にも気づけるように支援して事例相談者の視野を広げていく事も大切です。
「他のアプローチ方法は考えられるか」
「どんなキャリア理論が役立ちそうか」
 
こうした面接を通じて事例相談者が自分の問題に気づき始めていくわけです。
 
最後に、
『事例相談者の問題を明確化し、状況や環境に適した問題を共有化することができること。』
という評価内容ですが、
 
事例の中での問題点に理解が得られたら、
「いつもそうしているのか」
「他の面談でもそのような進め方になっていないだろうか」
と、事例相談者へ問いかけ、概念化を行うことが非常に重要です。
 
自覚なく、いつしか面談の進め方の癖や思考が偏ってしまっていることがあるので、
今回の事例以外でも、事例相談者のキャリアコンサルティングの弱い点、出来ていない点に共通点があったりしないか検討します。
 
 
このような展開を、1級面接試験ではロジカルに実施したいですね。
 
次は、最後の評価区分となる【具体的展開力】について解決していきます。
 
受検者の皆様、頑張りましょう!!