前回は、1級キャリアコンサルティング技能検定試験における面接試験の評価区分
【基本的態度】について私の考え方等を含めて書きましたが、
 
今回は、
【関係構築力】について解説していきたいと思います。
 
 
1級の面接試験で、事例相談者役の方との人間関係がうまくいかなかった経験がある方、
または、事例相談者役の方の態度が気になって面接がうまく進まなかった経験がある方は、
是非ご参考にしていただけたらと思っています。
 
 
 
お話しのベースになるのは、
キャリア・コンサルティング協議会のホームページで記載されている評価内容です。
 
 
先ず、【関係構築力】の評価内容は、
 
『相談者との人間関係(職業専門家に向けた育成効果の高い関係)を構築』
 
と記されています。
 
「育成効果の高い関係」
というものは、どんな関係かな…と考えてみます。
 
事例相談者が、
「是非この指導者から気づきや学びを得たい!」
などの気持ちになれること、
その指導者に期待が持てるということではないかと私は思います。
 
その状況は、事例指導者に対して、
キャリアコンサルティング専門家としての信頼と安心を感じられ、
大なり小なり尊敬の念を抱くことが必要になるのではないかと考えます。
 
 
試験会場で初めてお会いした事例相談者役の方に、
どうやってこの点を成就させれば良いのでしょう。
どのようにアプローチすればそのような効果的な関係になれるのでしょうか。
 
もし、これまで1級の面接試験で、
基本的態度の項目と関係構築力の項目が低め(100点満点中60%未満だった方や、何とか60%台クリアの方)の方は、ここの考え方を注意したいですね。
 
前回、所要点に達していたとしても、何が原因で40%程減点になっているのか、
振り返りを行っていないと厳しいかもしれません。
 
 
人間関係の構築ですから、
最初だけ良ければよいということではなく、
面談プロセスを踏んでいって関係の度合いがダイナミックに変化していきます。
面談が進みながら、指導関係が維持促進していくことは、継続的に重要です。
 
 
しかしながら、先ずは関係を作る力、ファーストアプローチもとても重要です。
この印象で育成効果に影響することも大いにあるわけです。
 
これは前回解説した基本的態度にも繋がり、また、自己紹介の内容にもかかってきますよね。
 
自己紹介の際、
きちんと事例相談者に時間をいただくことを了承してもらったうえで、
事例指導者自身のキャリア、そして志など、簡潔明瞭、且つ凛とした立ち振る舞い、
誠実で優しく余裕を持ってお話しされる姿があったらどうでしょうか。
 
「この人は本当にプロだな」
「色々なことを教えてもらえそうだな」
「優しい感じで安心出来るな」
等々…
 
相談者の立場からみてワクワクする感じがわき上がったらどうでしょうか。
きっと、この人に出逢えて良かった、自分の役に立ちそうだと思うことでしょう。
 
この空気を創る力は指導関係の構築に重要なファクターとなります。
 
 
そして、関係構築力の評価内容には、
 
『事例相談者に気づきや成長を促す関係を作ることができること。』
 
とあります。
 
 
事例相談者が指導者を信頼していなかったらスーパービジョンは成り立ちません。
 
実際は、
事例相談者側の成長したいという気持ちや姿勢、
そのための準備も大切なのですが、
 
その前に、事例指導者が事例相談者に対して、そういった姿勢のあり方を啓発することや、
実際のケース内容についての疑問等を様々な視点で質問するなどして、
事例相談者の気づきを促すことが出来る人間関係を構築出来ていなければ、
最初から指導面談が展開出来ないこととなります。
 
事例相談者が、事例指導者のことを信頼できない場合、
いくら事例相談者が自分の課題を持っていても、
その事例指導者から事例指導を受けることにモチベーションが上がらず、
効果的な面談に発展出来ないのです。
 
 
ちょっとしたことですが、
例年通りの試験の流れであれば、試験当日、待機室から試験会場に移動して、
実際に試験会場に入室する前の数分間、
事例相談者役の方と並んで座る時間がありますよね。
 
試験会場では基本的に一切の私語は出来ませんが、
事例指導者としての落ち着いた態度や空気感は大切かもしれません。
※威圧的な態度とは違い、温厚で落ち着いている様子等のことを言ってます。
 
その数分間、非言語の世界ですが、
隣に座っている事例相談者役の方も責任感相応にストレッサーをきっと感じています。
 
次に、試験時間オンタイムで試験会場に入室しますが、
その時の挨拶や試験官から説明を聴く態度等の立ち振る舞い、
そして、いよいよの面接試験後の自己紹介。
 
この一連の流れを”大切に…大切に…”扱うことが出来るキャリアコンサルタントは、
優しさと思いやり、温かさと安定感、人間味が溢れた太陽のような存在感を提供出来るのではないかと思います。
 
 
また、関係構築力の評価内容に戻りますが、
 
『キャリアコンサルティングの進め方を体系的に理解したうえで、キャリアコンサルタントとして、事例相談者に対して受容的・共感的な態度や誠実な態度を維持しつつ、事例相談者が面接の課題に気づき成長できるよう、様々な理論とスキルを用いることができること。』
 
と、たたみかけるかのように、
キャリア専門家として、カウンセリングの包括的な知識と技術を持ちあわせて、
それを実践出来るか評価しますよ!という意味合いで記されています。
 
 
キャリアコンサルティングの進め方は、日頃から皆様も意識していることだと思いますが、
試験ではそれを模範的にはっきりと示す必要があります。
 
 
クライエントとの人間関係を構築して、今回の面談目標を共同で検討しながら定めていき、その目標達成のための方策を設定、クライエントが実行していく支援を行い評価をしながら必要に応じてフォローアップして、次回の課題を検討、なければ終結する。
 
キャリアコンサルティングの基礎としてシステマティックアプローチ等を体系的に理解していて、
事例相談者がその中で何が優先すべき問題なのか、どこに引っ掛かってしまっているのか、30分の中で事例相談者への気づきを促すことを実践出来、指導目標を設定して方策の実行、クロージングまでいかなければ1級合格は厳しくなると思います。
 
あくまでも事例相談者の成長を目的に行う面接なので、
事例相談者がクライエントにやろうとしていたこと、目的やそのアプローチ方法、
これらを事例指導者は受容、共感していけなければなりません。
 
そして承認出来るポイントはしっかり伝えていく。
 
事例相談者がやろうとしたカウンセリングアプローチや使おうとしているキャリア理論を肯定的に受けとめて、一旦、同じやり方を尊重して、どう展開出来るか検討出来る指導者、
それから、例えばということで、他のアプローチや理論も使えることを気づかせていったり、手本としてやってみせたり、
このような態度や姿勢が、関係構築力の中で高い評価を得られるのではないかと推測します。
 
なお、2級と異なり、1級は口頭試問で面接試験内容のフォローが出来るわけではないと私は思っています。
 
口頭試問は10分間ありますので、
恐らく、試験官は公表されている評価区分と内容について、最初から最後までの流れの中で気になるところや確認すべきところを諸々確認することが出来ます。
 
要は、専門家の指導者としての態度の把握や面談でやっていたことの意図とその効果の度合い等、面接でやっていたことと口頭試問で答えることに一貫性がなければ、たまたま面接でやっていただけで、口頭試問の確認内容と辻褄が合っていないと悪く評価されることもあります。
 
お話しが口頭試問に行ってしまいましたが、ご参考にしていただければと思います。
 
次回は、【問題把握力】を考えていきます。