あったね?こんなこと! 
後藤さん殺害事件で、以下のようなコメントがあった。
特筆すべきは、"僕らが考えなきゃいけないことというのは、後藤健二さんが一体、何を伝えようとして
いたのか、ということ。 戦争になったり、紛争が起きると弱い立場の人がそれに巻き込まれて、
つらい思いをするということを、彼は一生懸命に伝えようとしていたんじゃないか。
 
上記のコメントを見て、彼の行動が少し理解できた。 しかし、あの場所に個人が立つことで
何ができるのか?  という思いも同時に湧き上がる。 他の方法では、国民の目を向けることが
できなかったと言いたかったのだろうか?    自分の死をもって伝えること。 
そんなもの、あるものか?  あの場所に向かうという無謀な行動と判断していたが、
彼は、戦争の無意味さを世界中に伝えたかったのだ
戦争になったり、紛争が起きると弱い立場の人がそれに巻き込まれて、つらい思いをすると
いうことを、彼は一生懸命に伝えようとしていたんじゃないか。
そんな思いがあったのなら、死んでそれを伝えなくてもよかったと思う。 
そう、思いませんか?
 

後藤さん殺害事件で「あさイチ」柳澤キャスターの珠玉の1分間コメント

水島宏明 | 法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター

http://rpr.c.yimg.jp/im_siggaiJPfdXt7NMpTRKmPCL.dw---x32-y32/yn/rpr/mizushimahiroaki/profile-1374372981.jpeg 2015年2月2日 9時53分 
 
 
 
 

若者言葉ならば「神コメント」と言うのだろう。

偶然、テレビからそんな言葉が聞こえてきた。 
NHKの「あさイチ」で、メインキャスターの有働由美子、井ノ原快彦の2人の横でどぼけたオヤジギャクを時折飛ばす柳澤秀夫解説委員。 
ふだんは温厚で駄洒落好きのちょっとズレた中年男性という役割で発言するが、今朝は冒頭から違った。 
有働、井ノ原の「朝ドラ受け」をさえぎって、以下のようにコメントしたのだ。 

「あさイチ」を見ていなかった人のために、あえてその全文を書き写してみた。

「冒頭なんですけど、すみません。昨日から今日にかけて大きいニュースになってきた後藤健二さんなんですけど、 
ちょっと、あえて、冒頭で、一言だけ・・・。 
僕も後藤さんとはおつきあいがあったものですから、一番、いま、強く思っていることは、ニュースではテロ対策とか過激派対策とか、あるいは日本人をどうやって守ればいいか、が声高に議論され始めているんだけど、ここで一番、僕らが考えなきゃいけないことというのは、後藤健二さんが一体、何を伝えようとしていたのか、ということ。 
戦争になったり、紛争が起きると弱い立場の人がそれに巻き込まれて、つらい思いをするということを、彼は一生懸命に伝えようとしていたんじゃないか。 
それを考えることが、ある意味で言うと、こういった事件を今後、繰り返さないための糸口が見えるかもしれない・・・。 
われわれ一人ひとりにできることというのはものすごい限界があるんですけど、この機会にそういうことを真剣に考えてみてもいいのでは・・・。 
それが後藤さんが一番、望んでいることじゃないか。そう思ったものですから、冒頭なんですけど、ちょっとお話をさせてもらいました。」 

時間にすれば、わずか1分あまり。

 
実は、柳澤秀夫氏は1990年から91年にかけての湾岸戦争当時、数少ない西側諸国の特派員としてイラクに残って、レポートを繰り返した伝説的なテレビ記者だ。 
アメリカを中心とした多国籍軍が空爆した後の様子をイラク当局が検閲するためにあえて英語で伝えた記者レポートは各局のテレビ記者たちの間で語りぐさになったほどだ。 
私自身も柳澤氏にはるかに及ばないが、湾岸戦争やイラク戦争などの悲惨さを取材したことがあるので、今回の後藤さんの事件を受けた彼の思いは痛いほど伝わってきた。 
後藤健二さん殺害を伝えるビデオメッセージで「イスラム国」側が、今後も日本人を標的にすると宣言したことで、急に各社のニュースが「「日本人の安全」をや「テロとの闘い」をめぐってザラついたものになっている。 

柳澤氏が指摘するように、「後藤健二さんが本当に望んだことなのか」が疑わしい雰囲気が一気に訪れている。

どうか、柳澤氏の上記のコメントを、かみしめて読んでほしい。 
 
NHK、民放を問わず、スタジオのコメンテーターは吐いて捨てるほど存在する。 
 
私自身もだいぶ以前、テレビのコメンテーターを務めた経験があるが、大きな事態に、大事だと思うことを、適切な言葉を選んで視聴者の心に届くように話すということは簡単にみえて、実際にはとても難しい作業だ。番組の限界や局の限界もある。 
 
 

だが、コメンテーターにとって本当に大事なことは、こうした節目の事態にこそ、きちんとした「見識」を示すことだろう。

後藤さん殺害の後で、今、テレビに求められているのは、この事件をどう受けとめるべきなのかという「解釈」をきちんと示すことだと思う。 
柳澤氏は、ジャーナリストとしての長い経験に裏付けられた見識を示した。 
 
柳澤氏と同じようにジャーナリストとして紛争地の周辺を取材した人間として、柳澤氏や後藤さんの胸中を想像して、思わず涙が出るほど、心に響くものだった。 
番組の冒頭からあえて発言した柳澤氏の勇気をたたえたい。 

「われわれ一人ひとりにできることというのはものすごい限界があるんですけど、この機会にそういうことを真剣に考えてみてもいいのでは・・・。」

柳澤氏のこの言葉の意味は重い。NHK、民放ふくめてテレビに出演している人たちだけなく、あらゆる人たちが今問われていることだと思う。
 
http://rpr.c.yimg.jp/im_siggtMBjZBUpPEEhXPsC8fBp2Q---x48-y48/yn/rpr/mizushimahiroaki/profile-1374372981.jpeg
水島宏明
法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター
1957年生まれ。東大卒。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー 『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロン ドン、ベルリン特派員を歴任。日本テレビで「NNNドキュメント」ディレク ターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。『ネットカフェ難民』の名づけ 親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科 学大臣賞受賞。2012年から法政大学社会学部教授。