以前テレビで警察が用いる業界用語についてバラェティ番組を観たことがありますが、”ホシ(犯人)”、”ガサ入れ(捜査突入)”、”バンカケ(職務質問)”などが有名です。
医療分野では”クランケ(患者)”、ステル(死亡する)”、”カルチ(癌)”など、患者さんが理解しづらいドイツ語由来の専門用語を暗号のように用います。
僕の場合は手術室勤務が長いので、手術関連の業界用語を用いますが、例えば”バイタル・サイン”とは血圧・呼吸・意識・脈拍など生命徴候を表しますし、”サチュレーション(SPO2)”は血中酸素濃度を表します。
僕はたまに海外の知人形成外科医の手術に参加したりしますが、その際は米国で用いられる医療業界用語が飛び交い、例えば手術室への入室を”スクラブ・イン”と言いますが、それは”スクラブ”が手を洗うことを意味するので、その単語を使って手術室入室を表すようになったようです。
僕にとって興味深いのは、手術道具にユニークな名前がついていることで、例えば手術用ハサミは”メーヨー”と言いますが、それは米国で高度医療を提供することで大変有名なメーヨー・クリニックで開発されたから、そのような名前がついたと推測します。
電気メスは”ブービー(Bovie)”と呼びますが、僕の予想では電気メスボタンを押すと”ブー”とか”ビー”という音がするので、愛称みたいにそうやって呼ばれるようになったのではないでしょうか?!
また手術領域を確保するための鉤は”アーミー・ネイビー(陸軍・海軍)”と呼びますが、多分この特殊な鉤は軍医療で開発されたのだと思われます。
実は僕も自分が頻繁に用いる手術器具には、自分が気に入った固有名詞をつけて呼んでいますが、その理由はいちいち正式名称で呼ぶのが面倒くさいのと、例えばハサミ一つにしても様々なサイズがあり、ただ”ハサミ”!と呼んでもスタッフが僕がどのタイプのハサミを要求しているから解らないので、それぞれに固有名詞を付ける必要があるのです。
また、治療中患者さんは必ずしも無意識下にあるとは限らず、”ハサミ”などもし患者さんが治療中聞いたとすれば、何をされるのか具体的イメージを抱きやすく、そういった単語は恐怖を煽る恐れがあるので出来るだけ使うべきではありません(>_<)
従って僕は手術中、助手に”青”、”黒”とか”ネコ”、”ナオイ”などなど、意味不明な単語で手術器具を呼んでいて、それを聞いている患者さんは”おやっ?何を言っているのだろう。。”と不思議に思うかもしれませんが、僕が手術と無関係な名前を手術器具に付けているのは上記の理由によるのです(^_^;)
なのでそのような意味不明の単語が僕の口から発せられていたとしても、治療には全く支障は来しませんのでどうぞご安心下さい(^-^)