秋の雲には特徴がある。秋ならではの形があるのだ。
私が「秋の雲」にちょっと興味があるのは、実をいうとある逸話からだ。
長嶋茂雄さん、という、日本の球史に輝く方がいる。
言うまでもなく、長嶋一茂さんのお父様である。
長嶋茂雄氏(お父さんのほう)が、ジャイアンツの監督だったころ、秋晴れの日に、グラウンドで雲を見上げながら、取り囲んでいた番記者たちに
「サバ、という字は、さかなへんにブルーだったかな?」
と尋ねたという。
空には、見事なイワシ雲。
なんで鯖が出てくるのよ?しかも「さかなへんにブルー」って!!
と、大爆笑が起きたというが、実は「さば雲」というものも、ちゃんとあるらしい。
魚の鱗のような雲が、いわし雲、うろこ雲、さば雲、というように分かれていったというのだ。
さらに、その鱗のひとつひとつが大きくなると、羊の群れのように見えてくる。
さかなへんにブルー。いいなあ。
もう何十年も前から、私は秋の空を見上げては
「あっ、さかなへんにブルーだ!」
と心の中でつぶやいているのである。恐るべし、長嶋茂雄氏。
これも有名な逸話だが、長嶋一茂氏が、もうずいぶん前…、まだお父様の方が有名だったころに
「実は僕の父も野球をやっていまして」
と仰ったという。「知ってるよ」とみんなでツッコミを入れる。…こういうのを、遺伝的才能、とでもいうのだろうか。
秋の空は美しい。
「天高く馬肥ゆる秋」とはよく言ったもので、重苦しい湿気がなくなり、より空が高く見えるのだ。こんなのを見ていると、馬ならずとも食欲が増し、自分も肥えてしまいそうである。イワシだサバだと言われると尚更だ。寒くなったり暑くなったり、気温がこんなに乱高下する秋ははじめてだが、皆様くれぐれもご自愛を。