今日ご紹介する話は、以前読んだ都筑道夫氏の小説に出てきたエピソードである。

あまりに上手くできた話なので、誰かに教えたくなった。

 

はるか昔の話。

一卵性双生児の兄弟がいる。ひとりは天才児で、もうひとりは障がいがある。便宜上、天才児を兄、障がい者を弟とする。

兄は幼少より、弟を傀儡とし、支配している。弟は兄に唯々諾々と従うしかないわけだ。

そして兄は宗教家になる。瓜二つの弟を利用し、離れたところにいきなり現れてみたり、知っているはずのないことを見てきたように話したりと、数々の奇跡を起こす。裏にもう一人影武者がいるのだからわけのないことだ。

しかし当時の宗教は対立しており、兄は次第に迫害を受け、追われる身となる。奇跡を起こし、弟子も増えた彼を危険人物と認めた、強力な一派がいたのである。

ここまでと悟った兄は、こっそり弟と入れ替わる。そして自分が裏切者の弟子となり、弟を自分として敵に売る。弟は処刑されてしまう。

数日後、身を潜めていた兄は再び現れ、復活が完成する。

 

固有名詞を出さずとも、この話がなんなのか、お分かりでしょう。
すごいものだ。見事に整合性が取れている。このエピソードは、そのまま一遍の小説というわけではなく、登場人物のひとりが誰かに話す、台詞の形で出てきたので、都筑氏が考えたものなのか、どっかの言い伝えを持ってきたのか、それすら分からない。海外文学にも明るく、引用の好きな氏のこと、意外に有名な話なのかもしれない。

 

最近起きている大きなこと…、その歴史やなんかを考えていたら、この話にたどり着いた、というか、久しぶりに思い出してまた感心してしまった、というわけだ。

 

どうです、誰かに教えたくなりませんか?

 

そして、この話が出てきた「都筑道夫氏の小説」、このタイトルがどうしても思い出せない。ショートショートか小品集の中のひとつなんだけど、小説のタイトルも作品集そのもののタイトルももう分からない。ご存知の方がいらしたら、どうぞ教えて下さい。