愛という名のもとに


札幌じゅん先生のPMAでいこう~!



これだけの質と規模を備えたコンサートは
二度と見ることが出来ないだろう――。


浜田省吾のツアー「ON THE ROAD 2011 The Last Weekend」を見ながら何度もそう思った。


浜田省吾は今年がソロデビュー35周年。
4月16,17日の静岡エコパアリーナから始まった6年ぶりのアリーナツアーは、その記念すべきツアーになる。

浜田省吾が他のアーティストと一線を画していることの一つに音楽の伝わり方がある。


すでに誰もが知るように、彼はテレビに出ない。歌番組やCMなどの力を借りてこなかった。若い頃は年間100本を超えるコンサートツアーだけで大きくなってきた。


それは、聞き手と送り手の間に間接性を媒介しないということでもある。

たとえ相手が数百名だろうと、その時の全ての力をライブに注ぎ込む。


アーティストの人間性と歌われる楽曲に対しての信頼や共感が生まれなければ成立しない濃密な関係を積み重ねてきた。


今回のツアーは、そういう意味でも集大成と言っていい。

35年という蓄積から生まれるステージと客席の一体感。

三世代を超える幅広い年齢層が集まっている。
未就学児童から上は60代以上まで。中核をなしているのは30代40代。

家族連れが多いというのも特徴だろう。

大人の解放感に溢れている。



「ON THE ROAD 2011 The Last Weekend」が、
これまでのどのツアーとも異なるのは、35年の区切りというだけではない。

選曲が新作アルバムに捕らわれていない。同じように区切りのツアーであっても新作があれば、その中の収録曲が主体になる。今回はそういう制約がない。


35年というキャリアをたどるのに相応しい選曲。

一時の流行や一過性のブームに流されることのなかった息の長い曲。

思春期のときめきや青春の痛み。

怖れを知らない若さや社会に出てからの壁。

愛する人との出会いや家族と生きる喜び。


どれも時代を超えて色あせない。“ヒット曲”だから聞かれたわけではない。


その人が日々の暮らしの中で見つけた自分だけの大切な一曲。

ステージ上での彼の言葉を借りれば、“人生というドラマのサウンドトラック”であり、それぞれの人にとっての“心のヒットパレード”を飾る曲ばかりだ。



そこにはロックンロールやリズム&ブルース、ソウル・ミュージック、映画音楽のような情景感豊かなハートフルなラブ・バラード、自然に身体が動き出してしまうダンスミュージックもある。


しかも日本を代表する超一流バンドメンバーにストリングスやホーンセクションを加えた総勢23名という大編成の演奏は、コンピューターサウンドには絶対に出せない生音の温もりや奥行きを醸し出している。




音だけではない。大画面を生かした多彩な映像や会場全体を包み込む照明との連動。これだけ細やかな気遣いと生命力を持ったゴージャスな完成度のロックコンサートが出来るアーティストが他にいるだろうか。


二度と見ることが出来ないだろう、と書いたのは、それだけではない。




音楽に何が出来るか――。



今年、そんな自問に捕らわれなかった音楽関係者はいないはずだ。
3月11日の東日本大震災がもたらした衝撃。未曾有の天災と究極の人災は、僕らも含めて人々の心に未だに先の見えない不安の影を落としている。


浜田省吾は、80年代から核や地球環境をテーマにした作品を発表してきた。

そこに歌われていたのは、まさしく今年僕らが目の当たりにしている現実の先取りのようだった。


彼は、去年、そうした作品ばかりを集めたベストアルバムとDVDを発売している。その中の収録曲は、今回のツアーでも重要な役割を担っている。ツアータイトルの「The Last Weekend」は、82年に発売された「僕と彼女と週末に」の英語表記である。



2011年の現実が図らずももたらした曲のリアリティが、コンサートの感動をより深いものにしていることは言うまでもない。


彼は、前半戦のステージでザ・フーのギタリスト、ピート・タウンゼント


「ロックは悩みを解決しない、悩みを抱えたまま踊らせる」という言葉を引用しつつこのツアーに賭ける決意を口にしていた。


哀しみと歓びが表裏一体であるように、涙と笑いも相反するわけではない。

たくさん泣いた人の笑顔がかけがえなく美しいように、フィナーレを迎える客席の表情は、これまで見たどのツアーよりも清々しい。

それはまさしく音楽の力、なのだと思う。


二度と見ることが出来ないだろう――。
そう思わせたもう一つの所以について触れなければいけない。


浜田省吾は来年“大台”を迎える。
その年齢で毎回3時間半を優に超えるツアーを行っているアーティストがいるだろうか。
それだけの規模のライブがこの先も可能だろうか。体力的なことを考慮すれば容易でないと思わざるをえないからでもある。



デビュー35周年の集大成。

前半戦は7月16,17日、札幌・北海きたえーるで終了した。
9月10,11日の長野ビッグハットから10月29,30日のさいたまスーパーアリーナ二日間まで全12本の後半戦が控えている。



来年には、当初の7月から延期されていた仙台公演も実現しそうだと言う。
明日が今日と同じである保証はない。

せめてコンサートの間だけでも豊かな時を過ごしてほしい。ステージに関わる全ての人々のそんな願いがひしひしと伝わってくる。


音楽の楽しさとはどういうものなのか。
その答えがここにある。


文・田家秀樹


素晴らしい解説。浜田さんのことを言い当ててる内容で感動しました


じゅん先生