三浦しをん/著「神去なあなあ日常
」を読み終えた。
面白かった。主人公は平野勇気、横浜の高校を卒業したばかりだ。勉強は「全然好きじゃない」から大学に行くつもりはない、「人生決まっちゃうのかと思うと暗い気持ちになる」ので、就職するのは気が進まない。やりたいことがあるわけでもない。
「甘ったれんじゃねぇ!」と一喝してやりたいようなヤツだけれど、担任の先生はそんな勇気の就職先を決めてきてくれた。「緑の雇用」という国の助成制度を利用して、神去村という三重県の奈良県との県境の山奥の森林組合で林業に従事することに..
勇気が行った神去村の神去地区は住民が百人ぐらい。おしゃれなお店や娯楽施設があるわけはなく、郵便局も学校さえもない。もちろんケータイは「圏外」。こんなところの暮らしに、18才の青年にそうそう耐えられるはずがない。ところが、物語は1年後の勇気のひとり語りから始まる。
物語が持つ雰囲気が瑞々しい。それは、林業という過酷な現場ではあっても、自然と一体となった神去の人々の暮らしが力強く活き活きしているからだ。山の神様を敬い神事を大事にした暮らし。神を身近に感じる出来事も多い。
登場人物たちも抜群に素敵だ。勇気が居候している家のヨキは、野うさぎをタックルして捕まえ、川の大岩を動かして即席のプールを作ってしまう野生児ながら、厳しく温かく勇気を指導する。読んでいて思わず吹き出してしまう部分は、まずヨキが関わっている。
勇気とヨキと一緒に働く「中村林業」の若い社長の清一も巌さんも三郎じいさんも、みんなおおらかで年齢とは関係なく若々しい。ヨキの奥さんのみきと、清一の奥さんの祐子と、隣の地区にある学校の先生と、若い女性がみんな美人なのはお愛嬌だ。勇気が神去村に溶け込み、居場所を見つけたように思われる。神去村を愛するようになった。