
新玉ねぎと鶏手羽元の黒酢カレー
旬野菜の豆乳カレー
黒酢のポークビンダル
たまごのアチャール
お店の人の笑顔はまぶしくて、決してぼくのものにはならないものを心の底から欲しがる古い甘美を思い出した。これまでにかなわなかったことが、ぼくの上には積まれている。
ほんとうに望むものなら強く願えばかなうと言うが、古い甘美があるかぎりそれは間違いだ。欲しいものは、ただひたすらぼくのものにはならない。
どちらにせよかなわないのだから、もはやほんとうに願うことはなく、ほんとうに願わないのだから、かなうこともない。
そんなことを思うほど、まぶしいカレーだった。
野菜が折り重なるおいしいスープに、肉のうまさ、黒酢などが加わって、とびきりにおいしい料理になっている。スパイスの使い方は大胆で、とても好きだと思った。たまごのアチャールからはマスタードオイルが滴る。
五分づきの米はほろりとして、カレーにとてもよく合っていた。
人の手による有機的なすばらしいカレーだった。
しかし、その他の有機的なカレーと違いが際立っていたのは、パフォーマンスがぎらりと光るところだった。無為自然ではない。それは思いやりであり、自己顕示かもしれないが、いずれにせよ他者に向けられたものだ。
これほどに有効に純粋に他者に向けられたものがあるということが、ぼくの物語を揺るがす。おそらくこれが他者と交わるということだと思う。
誰かが誰かのものになるという発想は、最大の過ちだろう。でもそうであるならば、どうしたらいいか分からない。
カレーを食べている間、白と黒の柄の蚊がぼくのまわりを飛んで、ときどき身体に止まった。
ぼくは蚊に刺されてもかゆくならない。
