一七三カレー

ぼくはカレーを食べたかったのだけど、カレーだけを注文することができなくて、生ビール、ギアラ、塊のハラミ、生レモン酎ハイを乗り越えて、カレーにたどり着いた。ひとりでギアラを焼いて食べた。塊のハラミは店の人が焼いてくれた。

この店は、カウンターだけの大阪下町スタイルの焼肉とのことだった。カウンターの内側には大阪の言葉を話す人々がいた。それをふまえると、大変に文化的なカレーだと思った。

手鍋でカレーペーストと、くし切りの生の玉ねぎをゆっくり温める。

カレーはコチュジャンのような味噌が入っていて、とても甘い。香りの少ない唐辛子がたっぷり入っていて、とても辛い。少しだけ水分の残る玉ねぎからは酒場の雰囲気がする。それほど煮込まれていない牛スジが入る。

大阪というところには、先進的で洗練されたところと、べたっとして重たい粘着性がどちらもあるのではないかと思う。それらは混じり合っているのか、あるいは大阪の中でも別々のところから発せられているのか分からない。
出汁ときれいな盛り付けのいわゆるスパイスカレーが洗練された方なら、このカレーは俄然重たい側のものだった。

大阪に根付くコリアンの厚い文化と、牛スジの粘りけのカレーだった。多様な日本の多様なカレー。