ごろごろチキンカレー

南口の狭すぎるバス通りを歩くと、懐しさがこみ上げる。通りの店は変わっても、松屋の歌は変わらない。あなたの食卓でありたいと歌う。ここは確かにぼくの町だと思う。

ぼくが学生の頃、松屋のカレーはかなりエキセントリックだった。S&Bから買うのをやめて、自社開発を始めたころかもしれない。スパイスオイルと紅生姜と彼女の笑顔は結びついて、ぼくの心のなかでひとつの塊になっている。
そこには霞ヶ関駅のブルーシートとRadioheadのOk Computerが関連している。そういう年頃だ。実に暗い年月だった。あれから氷河期が続いて政権が変わり、地震が起こって、そのあとしばらくして右傾化した。彼らがもたらしたのは嘘と貧しさだった。コロナが持ち上がって、嘘と嘘が対決を始めた。ありのままの人類の程度が表れた。許して受け入れる社会でないと、生きるのはつらい。

今年のごろごろチキンカレーは、数限りない変遷を経て、玉ねぎをローストした香りの落ち着き払ったカレーだった。
余ったお米に、フレンチドレッシングとバーベキューソースをかけて食べた。