​県岐商 春の王者を下しベスト4 

2025年夏の甲子園準々決勝が行われ、第三試合は、横浜(神奈川)と県岐商が対戦。延長11回TBまでもつれた大接戦は、8x-7で県岐商がサヨナラ勝ちを収め、16年振りの準決勝に駒を進めた。敗れた横浜は、春夏連覇の夢が絶たれた。

※なお、この後の内容は全て県岐商目線で書いていくのでご留意ください。



​試合経過 

先行は横浜、後攻が県岐商。県岐商の先発は前の試合(明豊戦)4回無失点の好投を披露した背番号20の渡辺大投手(2年)。対する横浜はここまで失点0、今大会屈指の好投手、背番号10の織田投手(2年)。


1回表 横浜に二死2塁のピンチを作られるも、横浜4番奥村頼選手の右翼手横への痛烈なライナーを県岐商ライト横山選手スーパーキャッチし、無失点に抑えた。


1回裏 先頭の駒瀬選手がいきなりヒットで出塁すると、3番内山選手のフライは横浜レフト奥村頼選手のダイビングをかいくぐり、適時二塁打となって一走駒瀬選手が生還。県岐商がいきなり先制する。


4回裏 県岐商は二死から、6番小鎗選手、7番横山選手の連続安打で1.2塁とし、8番渡辺璃選手のライト前タイムリーが飛び出す。2-0とリードを広げた。ここで横浜は2番手、山脇投手へ継投。


5回裏 県岐商は2番稲熊選手、3番内山選手の安打で1.3塁とし、4番坂口選手の適時二塁打で追加点を奪う。ここで横浜はレフトを守っていた奥村頼選手を3番手に送る。背番号1だが、今大会1/3回しか投げておらず、投げてみないと分からないと言われるエースを引きずり出した。続く5番宮川選手が高いバウンドの二ゴロでさらに1点を追加し、4-0に点差が広がった。


6回表  クーリングタイム明け、県岐商は5回2安打無失点と好投を続けていた渡辺大投手から、エース柴田投手へ継投。しかし制球が定まらず、安打、死球、死球で一死満塁のピンチを背負う。続く横浜5番小野選手は併殺コースの打球を放ったが、県岐商ショート稲熊選手の送球を受けた駒瀬選手の一塁転送がズレ、ファースト坂口選手の足が離れたという判定で1人が生還。さらに3塁をオーバーランしていた二走阿部葉選手を見た坂口選手が慌てて本塁へ送球したものの、ベースカバーがおらず生還。ミス?から2点を奪われ、4-2に。そして6番池田選手にセンター前タイムリーを浴び、4-3まで追い上げられる。


8回表  横浜の先頭為永選手、阿部葉選手の連打で1.2塁となり、二死までこぎ着けたものの、池田選手の強烈な二ゴロをセカンド駒瀬選手が後逸。奥村頼選手を打ちあぐねている間に、ついに同点にされてしまった。


9回表 タイブレークになると破壊力がある横浜打線有利が予想され、勝つには9回決着が望ましかった。柴田投手は三振、投ゴロ、遊ゴロの三者凡退で、攻撃の流れを作る。


9回裏  先頭渡辺璃選手が遊内安で出塁。駒瀬選手の打球はファースト正面を突き、併殺かと思われたものの、二塁への送球が一走渡辺璃選手の頭に当たりボールが転々。一気に2.3塁のチャンスを作る。するとここで横浜は内野5人シフトを選択。横浜バッテリーは奥村頼投手のストレートを県岐商が打ちあぐねていることから、ストレートでどんどん押してくる。県岐商藤井監督はこれを見て内野の頭を越すのは無理と判断したのか、稲熊選手に2ストライクからスリーバントスクイズを指示。打球は内野5人目のレフト阿部駿選手の正面へ転がり、本塁封殺。内山選手が死球で二死満塁となったが、4番坂口選手は二ゴロに打ち取られ無得点。一塁手がベースへ向かう際バランスを崩しチャンスかと思ったが、横浜二塁手奥村凌選手はそれを見逃しておらず、すかさず二塁でアウトに。何度も好守備を見せている内野陣にサヨナラは阻まれた。



10回表  為永選手の投前バントを柴田投手が悪送球し、二塁走者が生還、さらに2.3塁のピンチが続く。阿部葉選手にも前身守備の二遊間を割られ、全ランナーが生還。4-7に点差が広がってしまった。その後はバント邪飛、三振、中飛で3失点にとどめたが、痛すぎる点差がついてしまった。


10回裏  TV観戦していた私は諦めかけていたが、県岐商の選手は1人として諦めていなかった。先頭宮川選手が初球を中前へ弾き返すと、続く小鎗選手が左中間を破る走者一掃3点二塁打を放ち、わずか3球で同点に追いつく。

ラスト1点を取るべく横山選手はバントを試みたが、打球は投前へ転がってしまい失敗。横浜内野陣のハイプレッシャーはお見事だった。

渡辺璃選手はこの日3安打目となるヒットで1.3塁を作ったが、ここで県岐商藤井監督が柴田投手の代打で送ったのは、打力を買われた1年生丹羽選手


初球をかち上げ、打球はライト線への大きな当たり‼️横浜ライト今村選手が飛び込むもボールは弾み、一塁側アルプスは大盛り上がり。しかし一塁塁審はファウルの判定。横浜の選手達も、うおー、あぶねぇぇ!といった表情であった。


すかさず横浜村田監督はこの回2度目の伝令を送ろうとするも、既に小鎗選手の二塁打の後に使っており、何やら手振りで指示。

すると横浜高校は2度目の内野5人シフトを展開。変な間を取られてしまった丹羽選手は、命拾いした奥村頼投手に一邪飛に打ち取られ、駒瀬選手も三振、同点どまりとなってしまった。


11回表  エースの柴田投手に代打を出した県岐商は、甲子園大会で一度も登板がない和田投手を3番手に送る。ちなみにこの和田選手は、大垣市の隣の不破郡垂井町出身である。今大会初登板が7-7の同点、延長11回でさらに無死1.2塁から始まる過酷なシーンだとは、本人も思っていなかっただろう。しっかりバントを決められるも、セカンドゴロ、ショートゴロでなんと無失点に抑える。なんという強心臓か。とんでもない投手だ。


11回裏  和田投手が無失点で抑え、今度こそ試合を決めたい県岐商。全球ストレートで押してくる奥村頼投手に、稲熊選手が三振、内山選手が一ゴロに倒れ、二死1.3塁に。

次打者は今日2度目のサヨナラチャンスの4番坂口選手。今度こそ捉えたい。2ストライク後、際どいコースを見極めて1ボール2ストライク。全球ストレートだ。4球目。









ストレート1本にしぼっていたのだろう、逆らわず美しく打ち返した打球は三遊間を真っ二つに割るサヨナラタイムリーに。延長11回に及ぶ激闘を制した。県岐商8x-7横浜




​試合後 

試合が決まった瞬間、横浜の選手達は泣き崩れ、すぐに並ぶ事が出来なかった。野手が本塁付近まで来るのを待つ選手達も、皆泣いていた。全員集まり、球審の方が三言ほど横浜ナインに話しかける。何を仰っていたのかは聞き取れなかったが、後半「前を向け!自信を持ってー!!」と叫んだように聞こえた。そして最後に中継でも聞こえる大きな声で「終わりまァす!礼ーー!!!!」。万雷の拍手が両チームの選手に送られる中、県岐商がベスト4に進んだ事を知らせるサイレンが響いた。礼をしたあと、握手をし、抱き合う選手の輪はなかなか解けなかった。

贔屓目を抜いても、今大会のベストゲームになったのではないかと思う。


県立岐阜商業高校 校歌

緑滴る金華山  
水清冽の長良川
山河自然の化を享けて  
城北の地に聳え立つ
我が学び舎を仰がずや