▼101回目の夏が訪れた。令和初の全国高校野球選手権大会が開幕。優勝をかけて49代表がしのぎを削る。毎年議論になるのは甲子園常連校が県外から選手をスカウトなどする「野球留学生問題」。予選参加チームが多い愛知(188校)に比べ、最少の鳥取(23校)で出場機会に8.17倍の格差があるのも問題視される。
▼野球はベンチ入り選手も含め18人だが、今年出場の石見智翠館(島根県)はほぼ全員(17人)が県外者。このほか八戸学院光星(青森)と花咲徳栄(埼玉)は16人、鶴岡東(山形)14人、立命館宇治(京都)13人。県外0人の「純粋地元校」は旭川大(北海道)、作新学院(栃木)、広島商、宇和島東(愛媛)など10校だけと批判もある。
▼でも、でも…。私はある記事をみて泣きそうになった。タイトルは「野球留学、頑張ったけど記録員」。甲子園に憧れて県外の強豪校に進学したが、レベルが高くレギュラーメンバー入りは遠い。2年の秋の終わり。「(選手を辞めて)マネージャーにならないか」と野球部長から言われた。事実上、甲子園の夢は閉ざされた。
▼選手で力になれないのは誰よりも分かっていた。父に電話すると「立場が変わってもチームの力になればいい」。この一言で吹っ切れた。練習メニューを考えたり、ノックを打ったり。彼は特待生でも何でもないから、遠くまで進学させてくれた両親には感謝しかない。選手としての出場は叶わなかったが、裏方で甲子園の出場を支えた実際の秋田の高校生の話である。「給料で両親やじいちゃん、ばあちゃんに恩返しします」
▼いま甲子園に来ている。これから観戦する試合は7年ぶり2回目出場の宇部鴻城(山口)と宇和島東(9年ぶり9回目)の試合。どちらも「純粋な地元校」だ。甲子園の舞台はこうあるべきだとの声もわかる。だけど強豪校にもストーリーがある。夢への思いはどこも一緒。今年の熱い戦いはまだ始まったばかりだ。