36. 地獄の門(The Gates of Hell)
天国と地獄は地理的な場所ではない。心理的なものであり、あなた自身の心の状態である。
天国と地獄は人生の終わりに現れるものではない。それは今ここにある。
毎瞬間、扉は開いている。
そしてあなたは毎瞬間、天国と地獄のあいだで揺れ動いている。
それは一瞬ごとの問題であり、とても切迫したものだ。
たった一瞬で、地獄から天国へ、天国から地獄へと移ることができる。
地獄も天国も、あなたの内側にある。
その扉はとても近くにあり、右手で一つを開き、左手で別の扉を開くことができる。
ただ心のあり方を少し変えるだけで、あなたの存在は変わる。
天国から地獄へ、地獄から天国へと。
あなたが無意識に、気づきなしに行動するとき、あなたは地獄にいる。
あなたが意識的で、完全な気づきをもって行動するとき、あなたは天国にいる。
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禅の達人 白隠(はくいん) は、まれに見る偉大な覚者の一人である。
ある日、一人の武士が彼のもとを訪れた。侍であり、優れた兵士だった。
彼は尋ねた。
「地獄は本当にあるのか。天国はあるのか。
もしあるのなら、その門はどこにあるのか。
私はどこから入るのか。どうすれば地獄を避け、天国を選べるのか。」
彼は素朴な武士だった。
武士というのは常に単純なものだ。そうでなければ武士にはなれない。
武士はただ二つのことだけを知っている。
生と死である。
彼の人生は常に危険にさらされている。常に賭けの中にある。
だから彼は単純な人間なのだ。
彼は教義を学びに来たわけではなかった。
ただ、地獄を避けて天国に入るための門がどこにあるのか知りたかった。
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白隠は、武士にしか理解できない方法で答えた。
白隠は言った。
「お前は誰だ?」
武士は答えた。
「私は侍だ。」
日本では侍であることは大きな誇りである。
それは完璧な戦士であり、命を捨てることを一瞬たりともためらわない人間を意味する。
彼にとって、生と死はただのゲームのようなものだ。
彼は続けた。
「私は侍であり、侍の指揮官だ。天皇でさえ私に敬意を払う。」
すると白隠は笑って言った。
「お前が侍だと?
お前はまるで乞食のように見えるぞ。」
侍の誇りは傷つき、彼の自我は打ち砕かれた。
彼は自分が何のためにここへ来たのか忘れてしまった。
彼は刀を抜き、白隠を斬ろうとした。
天国の門はどこか、地獄の門はどこかを尋ねに来たことさえ忘れていた。
そのとき白隠は笑って言った。
「それが地獄の門だ。
その刀、その怒り、その自我――そこに地獄の門が開く。」
これは武士に理解できる言葉だった。
彼はすぐに悟った。
これが門なのだ。
彼は刀を鞘に収めた。
すると白隠は言った。
「今、天国の門が開いた。」
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地獄も天国もあなたの内側にある。
両方の門はあなたの中にある。
あなたが無意識に行動するとき、地獄の門が開く。
あなたが目覚め、意識的になるとき、天国の門が開く。
あの侍に何が起こったのだろうか。
彼が白隠を斬ろうとしたとき、彼は意識的だっただろうか。
自分が何をしようとしているかに気づいていただろうか。
自分がなぜそこへ来たのか覚えていただろうか。
すべての意識は消えていた。
自我が支配するとき、人は目覚めていることができない。
自我は麻薬のようなものだ。人を完全に無意識にしてしまう。
人は行動する。しかしその行動は意識からではなく、無意識から生まれる。
そして無意識から生まれる行為はすべて、地獄の門を開く。
あなたが何をしていようとも、
自分がしていることに気づいていなければ、地獄の門が開く。
その瞬間、侍は突然目覚めた。
白隠が
「それが門だ。すでに開いている」
と言ったことで、彼ははっと気づいたのだ。
もう一瞬遅ければ、白隠の首は斬り落とされていただろう。
しかし白隠は言った。
「それが地獄の門だ。」
これは哲学的な答えではない。
覚者は哲学的に答えることはない。
哲学は平凡で、悟っていない心のためのものだ。
覚者の答えは言葉だけではなく、存在そのものからの応答である。
この男が自分を殺すかもしれない――そんなことは問題ではなかった。
「もし私を殺すことでお前が目覚めるなら、それだけの価値がある。」
白隠はそのゲームを演じたのだ。
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武士の中で何かが起こった。
刀を手にし、白隠の目の前で立ち止まった。
白隠の目は笑っていた。顔は微笑んでいた。
その瞬間、天国の門が開いた。
彼は理解した。
刀は鞘に戻された。
そのとき彼は完全な静けさの中にいたに違いない。
怒りは消え去り、怒りとして動いていたエネルギーは静寂に変わっていた。
もしあなたが怒りの真っ最中に突然目覚めたなら、
これまで感じたことのないような平和を感じるだろう。
エネルギーが動いていて、突然それが止まる。
するとすぐに静けさが現れる。
あなたは内なる存在へと落ちていく。
しかもその落下はとても突然なので、気づかないでいることはできない。
ゆっくりした変化なら人は気づかない。
しかしこれは突然の変化だった。
行動から無行動へ。
思考から無思考へ。
心から無心へ。
刀が鞘に戻るその瞬間、武士は悟った。
そして白隠は言った。
「ここに天国の門が開く。」
静けさが門である。
内なる平和が門である。
非暴力が門である。
愛と慈悲が門である。
