2019年2月
一ノ宮巡りをしようと思ってまず取り組んだのは、日本の路線図の白地図を手に入れること。そこに全国の一ノ宮神社の場所と名前を赤ペンで書き足す。
これを広げてどこから攻めるか考えていると何時間も経ってしまう。
一ノ宮について調べてみると、実はどこまでが一ノ宮かについては諸説あるらしいことが分かった。
何事も理屈っぽい私にはハッキリしていないことがどうも辛い。
ムキになって調べていると、四国に全国一ノ宮神社の名前を彫った石碑があることが分かり、私の一ノ宮はここに掘られたものだけ、と心に決める。とりあえずだけど。
それが香川県にある田村神社。是非とも一ノ宮巡りの序盤にこの石碑を写真に収めてこようと思った。
次の目的地を四国にしようと思ったきっかけは、もう一つある。日本に唯一残る寝台特急「サンライズ号」だ。
サンライズ号はスーツさんの動画で知った。寝台特急なんて乗ったことがない。
9時きっかりに大船駅のみどりの窓口に行き、サンライズに乗りたいと言ったら、窓口の人が部屋の種類を丁寧に説明してくれた。ラスト一部屋だったシングル個室を購入。スマホサイズの大きな切符を手に入れて、通の人になったみたいな気分。
22:00 東京
金曜の夜まだ帰宅ラッシュの余韻残る東京駅。電光掲示板にはサンライズ瀬戸の文字。
駅なのに、ホームには人がいるのに、すぐこちら側ではコートを脱いでベッドに腰掛け足を投げ出している不思議。
ドキドキして発車を待つ。キラキラと忙しなく見える東京の街をスペシャルな乗り物に乗って脱出する気分。
この大きな夜景の中、
まだ働いてる人も、
飲んでる人も、
家路を急ぐ人も、
いつもと変わらない金曜の夜ですか?
今夜、私は違います!
という気持ちを全開にする。
部屋についてるラジオからジャズが流れてきていい感じ。
壁にもたれて伸ばした足全体でレールの上を走る車輪を感じる。
ふっとラジオが途切れ車内放送の静かな声。外はまだ明かりがたくさん。窓のシールドを開けたまま寝っ転がって外を眺めていたから、駅を通過するときまだ終電前だから人がホームにいて、あっと思う。2階席だから大丈夫なんだけど。
揺れる電車の中で眠れるのかなあと心配だったけど、振動よりも壁のスイッチの小さなランプが気になってなかなか眠れない神経質な私。
カバンの底にあったポストイットをランプの上に貼ってなんとか眠れた。
08:39 琴平
サンライズ瀬戸号の通常の終点は高松なんだけど、期間限定の臨時号が琴平まで連れて行ってくれる。この日も臨時号だったので、田村神社の前に金刀比羅宮をお参りするため臨時の終点琴平駅まで乗った。
金刀比羅宮はとにかく長い階段をひたすら登り、登り、登ったところにある。途中、心と膝が折れかけたけど、上まで上がらないといただけないという金色のお守り欲しさに頑張った。「こんぴら駒犬開運みくじ」は大吉だった。
ほうほうのていで降りてきて何か食べたいなとお店を見ていたら、ガヤガヤ楽しそうなおじさんの団体にすれ違いざまおねえちゃん一緒にこんぴらさんお参りしようや〜と陽気に声をかけられた。心臓が跳ね上がりつつもいや今降りてきたところなんでと早口でつまらない返しをしてしまったことに静かに落ち込む。おじさんたちは笑顔だったのに。おみくじは大吉だったのに。
その後勇気を出して入った参道のうどん屋さんはきつねうどんの揚げが丼からはみ出すほど大きくて、添えられたレモンが爽やかでとっても美味しかった。
そうか私は今香川県にいるんだなと思った。
金刀比羅宮を参拝後、JRから高松琴平電気鉄道(ことでん)に乗り換えて一宮駅までいく。そこから静かな住宅街を歩いて15分くらいで田村神社に到着。
立派な灯籠に一宮と刻まれていた。参道の植え込みが綺麗に剪定されている。清々しい神社だった。駅から神社まで誰にも会わなかったのに、滞在中、参拝客は途切れなかった。なんとも威厳を感じる。
それほど広くない境内に所狭しと石像や彫刻が置かれていた。端から一つ一つ見ていく。日本庭園風の池の周りに干支の彫刻が点在していた。自分の干支を探し出して満足する。
さらに境内中をキョロキョロと見て周り御朱印もいただいた。御朱印には力強い筆で「讃岐國一宮」の文字。壱之宮の印も押されている。
しかし遠くまできたものだなと感慨にふけりながら駅に向かう。
そう、
何を隠そう田村神社では例の石碑のことがすっかり頭から抜け落ちていて、写真どころかどこにあったかさえも探さずじまいだったのだ。新しい経験が多すぎて完全に心がオーバーフローしていたらしい。
石碑のことはこの日の夜まで思い出せなかった。ガッカリ。
後編に続く。





