「折り畳み」というお題で連想ゲームを行ったとき、あとに続く言葉として思い浮かべる人が多い順位を予測してみました。
一位「傘」
二位「椅子」
三位「自転車」
四位「テーブル」
五位「収納ボックス」
あとはベッドとかマットレス、キーボードなどを思いつきしました。
「折り畳み携帯」という言葉もかつてはありましたが、それが当たり前になり、さらにスマホの登場で「ガラケー」という名前になりました。
今は「折り畳みスマホ」なる商品が出てきているそうです。
どうでしょう。
三位以下の順位はその人の生活スタイルや趣味で変化してゆきそうですが、四位までは一般的な商品が並んでいます。
どれも、収納時にコンパクトになるということを目的につくられているようです。
私はブロンプトン発明者のリッチーさんが来日した折に、鉄道が発達したイギリスで、交通機関に載せやすくするため、つまり持ち歩くのに簡便になるように開発したのですか?と質問したのですが、答えは「収納のため」でした。
折り畳みの椅子やテーブルもそうですが、キャンプ道具として使うなど、車に積載する場合も含めて、収納のために折りたためるようになっているものがほとんどです。
空母などに搭載されている艦載機も、少しでも詰めてたくさん積めるように第二次世界大戦の頃から折りたたみ翼を供えた飛行機が存在しました。
しかし、この中で「傘」と「自転車」だけは、据え置きではなく、移動しながら使うという前提で考えれば、仲間ではないでしょうか。
収納を目的にコンパクトにたためるようになった自転車ですが、その副産物として、いつでも、どこでへでもお供する自転車になったのです。
「今日は雨が降るかもしれないから」と、鞄に折りたたみ傘をしのばせてゆくような感覚で、「今日は向こうで自転車があったら便利だろうから」という気持ちで玄関を出てゆく自分が居ます。
というか、家から駅までバスに乗るよりは自転車にまたがって走ってしまった方が早いから、習慣的にそうしているだけです。
ところで、折り畳み椅子のことは英語で「スタッキング・チェア」”stacking chair”といいます。
でも、折り畳み自転車は”folding bike”や"folding bicycle"です。
上述の「折りたたみ翼」も”folding wing”です。
これは”fold”が「折りたたむ」に対し、"stack"は積み重ねるを意味しているからでしょう。
つまり、折りたたむという機能よりも、積み重ねるという保管の方法に着目したネーミングで、直訳すると「折り畳み椅子」ではなく、「積み重ね椅子」だったわけです。
この辺、座敷などで使われる脚が折りたためるテーブルも、積み重ねて保管するという意味では”stacking table”となるはずです。
たしかに、自転車を”stacking bike”として横倒しにして積み重ねて保管したら、小径車はタイヤの空気圧が抜けてしまいますし、下の方の自転車が重みで壊れてしまうかもしれません。
なお、発音が似ていてカタカナで書いたら同じの”stuk”ですが、こちらは「行き詰まった」とか「動けなくなっている」という形容詞ですから、"stucking bicycle"では、動かなくなった自転車ということになってしまいます。
なお、ブロンプトンをたたんだ状態で複数台並べる、つまり本棚に本を並べるような動作は、”place (the book) uplight”と表現するのだそうです。
(もちろん平積みは”stacking”です。)
さて、折りたたみ傘は親骨とそれに支えられた傘地の部分が折りたたまれるから”Folding Umbrella”なのであって、柄の部分は写真撮影に使う三脚の脚のように伸縮するようになっています。
あそこは”Folding”ではなく”Telescopic”というのだそうです。
望遠鏡で遠くのものを拡大してみることを”Telescoping”というのですが、そこからつくられた造語です。
なるほど、ブロンプトンのシートポストも、そのように呼べなくもなさそうです。
こんな理由から、”Folding Umbrella”という言葉はあまり一般的ではなく、"Portable umbrella"(携行傘)とか、”Travel umbrella”(旅行用傘)という呼び方をするのだそうです。
ということは、折りたたみ傘に近い使われ方をする折りたたみ自転車も、"Portable bicycle"とか、”Travel bicycle”と呼びたくなります。
自転車に関しては、まだ携行する人はごく僅かですし、旅先で利用するのは家から持ってきた折りたたみ自転車ではなく、レンタサイクルという人が圧倒的に多いでしょう。
たしかに、貸自転車なら鉄道や車で移動する際には身軽になれるし、積載の手間も必要ありません。
家に帰って整備しなければならないということもありません。
しかし、レンタルスキーで滑るのと、自分の道具で滑るのとでは雲泥の差があるように、自転車もまた、一緒に旅をするうちに自分の手足の一部として感じたり、旅のともがらとして感じるようになってくるものです。
それは、ブロンプトンのようなともに「旅する自転車」を所有し、実際に一緒に旅してみないと実感としてわかりにくいかもしれません。
折りたたみ傘のように、旅先で雨が降らなかったら鞄にしまったままということは、ブロンプトンの場合まるで逆で、旅先が晴れていてブロンプトンを持ってきているのに全く走らないということは、まずありません。
たとえホテルから食事場所やコンビニまでの短い区間であっても。はじめての、そして見知らぬ街を自転車で走り抜けるというのは、とてもスリルのある感覚で、もうブロンプトンに乗り始めてからひと回り(12年)になるのに、今でも続いています。
いや、通いなれた路でも、一本違う路地に入れば、または、家から都内までも、いつも利用しているのとは別の沿線を自転車で走ってみると、家の近所でも様々な発見があるというものです。
私が折りたたみ自転車は、「学びのあるどこでもドア」だと感じる所以です。