雪の日の折り畳み自転車通勤 | 旅はブロンプトンをつれて

旅はブロンプトンをつれて

ブロンプトンを活用した旅の提案

久々に東京に雪が降った夜、私は明日の出勤をどうするか悩んでおりました。

電車が止まるほどに積もったら、道路も積雪で自転車は走れないでしょうから、これはもう休むしかありません。

(四輪駆動にスタッドレスという小型車を所有しているので、どうしてもという場合は行きますが、それでも、他の車が立ち往生している可能性もあります。)

問題は、電車が動いた場合です。

駅まで自転車で走れるか、歩いてゆかねばならないか。

歩くのなら、靴はありますし、それなりの格好ができる準備がありますから問題ありません。

バスが動き出す時間には電車もそれなりに混んでまいりますので、歩いて早朝の電車に乗ったほうがよいとわたしは今感じています。

では自転車で行く場合です。

道路に積雪がある場合でも、スパイクタイヤをはいたブロンプトンで走るという手があります。

早朝であれば、まだ雪は緩んでおらず、固くしまっているでしょうから、スパイクタイヤの走行には問題はありません。

電車に乗る際はカバーをかけるので、これまたスパイクタイヤが問題になることもありません。

行った先でも、6時前なら道路もすいているし、十分走れるでしょう。

但し、帰りに雪が解けていた場合、スパイクタイヤはかなり音を立てるので、道行く人から注目を浴びてしまうでしょう。

それも一瞬のことですから迷惑をかけているわけではなく、こちらさえ気にしなければ問題にはなりません。

しかし、一部の道路にだけ積雪がある場合、スパイクタイヤは必要なく、積雪がある区間だけ押し歩きをすれば済んでしまいます。

積雪が無い場合は、これはもう、問題なく自転車でゆけます。

そんなことを考えながら、珍しいなと思いつつ、冬の雷鳴を聴きながら眠りに就きました。

翌朝4時に起きて外を確認すると、しっかり雪はやんでいますが、家の前の道には雪が積もっていました。

とりあえず服を着てバス通りにでてみると、道路の真ん中には雪がありません。

これなら大丈夫そうだと、駅まで走ることにしました。

関東の雪は水分を多分に含んでいる重たい雪なので、一晩中コンスタントに車が走っている道路は、車の往来する部分は濡れてはいるものの、雪は残っていません。

幸い、空も曇っているので、放射冷却で凍結ということもありません。

スキーをしたことのない人にはわからない感覚かもしれませんが、夜空が晴れているか曇っているかで、気温はだいぶかわります。

風があるかないかも、凍結にはかなり影響を及ぼすのですが、さいわい無風に近い状態です。

私は昔からスキーをするために雪国に通っていたし、アルバイトの為月単位で滞在していたこともあるので、雪道の歩き方も心得ています。

重心を真下にむけてやや落としたまま、その重心の位置を変えずに歩くわけですが、手に荷物を持っているとバランスが崩れるので、できれば荷物は背負うか肩掛けにします。

そして両手は開き気味に、むかしドリフターズがやっていた、「ひげダンス」のような雰囲気で歩くわけですが、ひとによってはこれを「ペンギン歩き」と呼んでいました。

ブロンプトンの場合、シートポストを思い切り下げて、両足がぺたんとつく状態で乗車します。

上り坂は窮屈ですが、こうすれば重心を低くして、いつ前後輪が滑っても、リカバリーができる態勢で走ることができます。

もちろんスピードは控えめに、コーナーではリーン・イン(自転車は傾けずに身体だけカーブの内側に入れる乗り方)気味にして転回します。

そして、いつも10分かかっている道のりなら、13~15分程度を見込んで家を出ます。

それでも歩くよりは遥かに早く駅まで到達できます。

こんな乗り方も、実際に雪の積もった道で自転車を走らせてみないと、加減が分からないと思います。

これが朝6時をすぎて道路に車が多くなってくると、自転車はなかなか車道の中央寄りを走れなくなりますから、4時5時なら通用する乗り方ともいえましょう。

しかし、折り畳み自転車だからこそシートをさげて重心を低くして乗れるのであり、普通の自転車ではこうはゆきません。

加えて、自宅から最寄り駅まで走り、下車した先でも最寄駅から仕事場まで、最低限の距離を注意深く走れるから、こんな形がとれるのです。

電動アシスト自転車だって、あの重量を考えると、滑った時の恐怖は軽快な折り畳み自転車の比ではないと想像しています。

また、全行程を自転車通勤する「電車に載せるという選択肢はない通勤」となると、雪が積もった時点で自転車通勤自体を諦めねばなりません。

実際、2番電車に乗ったら、普段乗っている人が乗れなかったのか、いつもより空いていて、すぐに座ることができました。

地下鉄線に直通し、都内の駅で下車して地上に出ると、横浜市内の自宅周囲よりも積雪量は多めでした。

それでも、幹線道路の車道には雪が積もっていないので、徐行すればブロンプトンで走れました。

車もまた、徐行をしていますし、そもそもいつも走っているような車を今日は見かけません。

スタッドレスタイヤやチェーンなど、積雪装備のない車は、家から出たら、50m先の大通りまでもたどり着けないというケースがままありますから。

こうしたことを考えても、車に頼る生き方からは、はやくから距離をとったほうが賢明です。

体力がなくなって、いまさら自転車なんかとなってからでは遅いですからね。

また、朝の6時前から除雪作業をしている人たちをそこかしこに見かけました。

この人たちは、雪が降ったから早起きして作業しているわけではなく、普段から掃除をしている人たちだと、いつも同じ道を走っているので知っています。

お寺で掃除しているときもそうだったのですが、毎朝の掃除を「世の塵掃いて、わが心の塵を払わん」と自己修行の一部にしているひとが日本には大勢いるので、こうした文化が成り立つのだと思います。

これが、お金をもらってやっていたなら、却って毎日が苦しくなると思うのです。

そういう目に見えない人生の価値のようなものが、ブロンプトンに乗るようになってから、目に見えるものだけを信じてアテにする人たちから距離を置くようになったこともあって、よく見えるようになりました。

やはり、人生には雨ばかりではなく雪の降る日もあるのだから、そんな日は速度を落として、心の眼で周囲を見渡すと、見えてこなかったものが見えてきます。

昨夜あれこれ悩んでいた自分が小さく見えた朝でした。