青梅街道をゆく 青梅駅から奥多摩湖のまた奥へ(その6) | 旅はブロンプトンをつれて

旅はブロンプトンをつれて

ブロンプトンを活用した旅の提案

いままで下ってばかりいた「奥多摩むかし道」をはじめてブロンプトンで登っています。
もう初夏に入ったといっても良い6月の中旬で、東京都心の最高気温は30度を突破していました。
ここ奥多摩でもアスファルトの日なたは照り返しも強くて暑いものの、山の中で空気が乾燥しているせいかややしのぎやすく、日陰は対照的に涼しいので、日の当たらない木陰をできるだけ選びながら西久保の切り返しを通過します。
カーブの奥に小河内ダムの発電所に続く道が分岐していますが、人間の背丈よりもずっと高い柵が崖まで連なり、中に入れないようになっています。
門には「ここは水道用地ですから立ち入らないでください」という水道局による注意書きが掛かっています。
これは発電所というよりは併設されている奥多摩町小河内浄化センターへの立ち入りを禁止しているのでしょう。
街中にあっても浄水場は一般人立入禁止ですから。
切り返しの直後にむかし道は左わきの斜面をつづら折りで登ってゆきますが、ハイキングコース程度の道幅の山道なので、このまま舗装路をゆきます。


そのまま直進して西久保トンネルをくぐり、つづいて南から東方向に景色が開けている中山橋を渡ります。
対岸のやや下流方向に見えるのが鋸山で、それに連なって南正面に見えるのは、大岳山、三頭山と並んで奥多摩三山を構成する御前山(ごぜんやま標高1,405m)です。
メインの登山ルートは今立っている北側からで、前回ご紹介した都民の森から尾根伝いに登るか、小河内ダムの南から大ブナ尾根経由で登るか、どちらも3時間以上はかかります。
早春に自生するカタクリが可憐な花をつけ、南方向に下れば丹沢方面の山々が見えるそうです。
ブロンプトンで都民の森の中にある栃寄森の家まで登ることができれば、山頂までの徒歩は2時間15分程度まで短縮できます。
秋に小菅林道を詰めた際に考えたのですが、林道を登坂するのも徒歩よりブロンプトンの方が速く、また下りは比べ物にならないくらい速いのであれば、登れるところまで登って駐輪し、そこから山頂を往復すれば、まだバスが走っていない時間帯から山登りができ、マイカーと違って帰りは疲れた体を休めながら、電車で帰ることができるのではないかと思った次第です。


中山橋の先、桃ヶ沢バス停付近で国道411号線(青梅街道)に合流します。
Uターンするような形で国道に復帰し、370m先で中山トンネル(延長391m)入り口にかかります。
これまでくぐったトンネルの中で最も長くて隧道内の傾斜もきつく、小河内ダム直前ゆえに交通量ももっとも多く、トンネル入り口左脇にはむかし道へと通じる迂回路があって、トンネル上部の山を乗り越えられるようになっているのですが、舗装はされているものの傾斜がきつく、ブロンプトンでは押し歩きになるためここは先を急ぐこともあってトンネルをくぐります。
なお、朝のこの時間帯(9時過ぎ)だから交通量は少なめで流れていますが、もう1時間もすると小河内ダムの駐車場へ入ろうとする車が渋滞気味に連なり出し、お昼近くになると渋滞します。
午後になると、今度は山を下るマイカーや奥多摩駅行きのバスが隧道内で渋滞し、そうなると自転車は脇をすり抜けることもできず、トンネル内の排気ガスを吸いながら呼吸することになります。
ブロンプトンの場合は、バスにのせてしまうという手もありますが、なるべくその時間帯には自転車で通行するのを避けたいトンネルです。


中山トンネルを出ると間もなく鉄道ガード橋の下を2度くぐります。
これが東京都水道局小河内線の線路跡で、まもなく左側に広がる空き地が水根駅です。
間もなく、小河内ダムへの道が左に分岐します。
右奥へと沢が伸びていますが、これが水根沢と呼ばれる沢で、こちらへ伸びる林道を入ってゆくと、沢をつめて奥多摩駅のすぐ西から伸びる石尾根に鷹ノ巣山手前で合流します。
(2023年現在本登山道は災害により崩落して通行止めです)
石尾根をそのまま上方向へと登ってゆくと、七ツ石山を経由して東京都最高峰の雲取山へとつながります。
水根沢自体は沢登りの練習として初心者向けで、ゴルジュ(フランス語で「のど」の意)という切り立った岩壁に挟まれた狭い谷間を連続して登るかたちになるそうです。
何だか涼しそうな話です。
国道を直進するとそのままこの近辺でもっとも長い大麦代(おおむぎしろ)トンネル(延長538 m)に入るので、ここは左折して小河内ダムの肩に出ます。


小河内ダムの標高は530.2mで西久保の切り返しが436.2mですから、2.15㎞で94m登った計算になります。
むかし道が登り坂にかかってからここまでの3㎞あまりが、これまででいちばんきつい登坂になりましたが、いまにも前輪が浮くような、或いはゼイゼイと肩で息を切るほどの急坂ではありませんでした。
時刻は9時22分。
奥多摩駅からここまで6.5㎞、一部むかし道経由でゆっくり登って50分でした。
思ったほどには疲れておりません。
これなら、鴨沢西バス停まではゆけそうです。
小河内ダムについては以前ご紹介しましたから、今回は奥多摩湖の機能について書きましょう。
その正式な名前は「小河内貯水池」といいます。
その目的は上水道専用で、その目的としての貯水池では、今でも日本最大級なのだそうです。


ご存知の通り、東京都の上水道水のうち80%は荒川・利根川水系、17%が多摩川水系、残り3%はお隣り神奈川県の相模川水系からの導水です。
小河内貯水池の水は主に他水系が渇水で不足した際の非常用とされていますが、それ以外に普段多摩川から取水された水は一定量が小作、砧、砧下の三浄水場で浄化及び消毒処理がされます。
他の浄水場、東村山、朝霞、境、三園の各浄水場は荒川水系、三郷、金町は利根川水系、長沢が相模川水系ですが、東村山、朝霞、境に限っては、導水路が両河川とつながっているため、荒川と多摩川の混合になります。
こうした状況を踏まえて水道水源と浄水場、給水地域の分布図をみると、ここ小河内ダムで取水された水のみが給水されているのは奥多摩町だけ、小作浄水場も含め、多摩川からの水だけが給水されているのは、あきる野市、日の出町、青梅市、瑞穂町、福生市、武蔵村山市と東大和市の一部までということになります。
世田谷区も北半分は荒川水系、南半分は多摩川、荒川、利根川、相模川と全水系のミックス、お隣の狛江市は多摩川、荒川、相模川のミックスということで、違う水系からの水が混ざっていても、種類が違うと味も微妙に変わるので、飲み比べてみると面白いかもしれません。
なお、お隣の桧原村は村営の専用水道があるので、上水道はすべて南北秋川の表流水によって賄われています。


先を急ぐので開館間もなくの奥多摩水と緑のふれあい館を通過、湖畔を走ってまだ車やオートバイもまばらな大麦代園地も通過、国道に復帰して奥多摩湖北岸を西へ向かいます。
いつも柳沢峠や小菅村方面から奥多摩駅方面に降りてくるばかりで、こちらから登ってゆくのははじめてなのですが、ここから鴨沢まで国道の標高差は5m以内です。
熱海トンネル(延長61m)、室沢トンネル(同215m)、出た先右側に温泉の給湯施設のある鶴の湯トンネル(同157m)、女の湯トンネル(同124m)、あづまいトンネル(同96m)、坂本トンネル(同260m)と、6つのトンネルを抜けると、峰谷川を右に分ける峰谷橋です。
橋をわたってすぐ、馬頭トンネル(同82m)の上が、手前の鶴の湯温泉を引湯していた温泉旅館が立ち並んでいた場所です。(現在は休業中または閉館済)
トンネルをくぐった先で、左手に麦山浮橋をみて、麦山橋を渡って川野トンネル(同140m)をくぐったところが川野で、ここはかつて宿泊施設や飲食店、土産物店などが集まっていて、トンネルの上には湖畔を渡る索道(ロープウェイ)の駅がありました。


すぐ先で小菅村方面へ登る国道139号線を左に分ける深山橋をみて、竹の花トンネル(同94m)をくぐり、2つ目の浮橋(留浦浮橋)を左にすぎると、まもなく東京-山梨の県境にあたる鴨沢橋を渡り、雲取山への登山口にあたる鴨沢に着きます。
ここまでは、殆ど高低差がなかったので小径車ブロンプトンでもわりとすんなり走ってこれたのですが、鴨沢の次、諸畑橋バス停を過ぎたあたりから登り坂となり、多くのバスが折り返す鴨沢西バス停が先に見える頃には、かなり道の傾斜がきつくなっていました。
ゼイゼイと息を切らしながら鴨沢西バス停についたのは、10時05分で小河内ダムから40分かかりました。
小河内ダムからここまで9つのトンネルをくぐり、4つの橋を渡って10.1㎞です。
ここはもう、多摩川が刻む渓谷には奥多摩湖の面影はなく、さらに奥の谷間に入ってきたという趣です。

最終的にはブロンプトンで柳沢峠を越えて塩山市までゆくとして、今日はここまでここでやめて引き返すのか、6.7㎞先の丹波山村まで行ってから引き返した方がよいのか、相当悩みました。
今日ここからさらに走って丹波山村までゆくとして、登りだけではなく最後にはけっこう長い下り坂があります。
ということは、ブロンプトンで引き返したら帰りは登り坂になるということです。
柳沢峠からの帰り道、その登り坂が毎回こたえるので覚えていました。
時刻は10時を少し回っただけなので時刻表をみると、丹波山村役場から奥多摩駅行きのバスは、10時36分のあとは、12時12分までありません。
丹波山村には食事処と入浴施設を併設した道の駅がありますから、そこで食べるなり風呂に入るなりして時間を調節し、その昼過ぎのバスに乗って奥多摩駅まで冷房の効いた車内で寝ながら帰るというのもいいなと思ったのですが、結局体力が余っているので、小菅村を目指して戻り、奥多摩駅に戻って電車に乗った途端に熱中症の兆候が出たというのは、以前このブログで書いた通りです。

結局、次回は電車の時間にあわせると、武蔵中原4時43分の始発に乗って奥多摩駅で乗り継げるのは7時ちょうど発の鴨沢西行きバスで、丹波山村役場行きのバスは8時35分発まで無いので、ここ鴨沢西バス停で青梅街道の旅はいったん区切ることにしました。
青梅駅前を通過したのが6時55分でしたから3時間と10分で37.1㎞を走ったことになり、けっこうな登り坂もあったことを考えれば、ペースとして適切だったと思います。
なお、青梅駅と鴨沢西バス停の標高差は、それぞれ197.2mと550.8mなので、353.6mになります。
ここからおよそ25㎞さきの柳沢峠の標高(1474.6m)を考えると頭が痛いのですが、山岳道路をブロンプトンで登ろうとしているわけですし、あまり焦ってもいけないと思いました。
次回はここ鴨沢西バス停から続けたいと思います。