青梅街道をゆく 青梅駅から奥多摩湖のまた奥へ(その5) | 旅はブロンプトンをつれて

旅はブロンプトンをつれて

ブロンプトンを活用した旅の提案

(奥多摩駅)

武蔵中原駅を4時43分に南武線下り一番列車に乗って羽村駅に着いたのが5時54分。
そこから河辺駅付近まで走って朝食の取れる牛丼屋さんで20分弱食事をし、青梅駅前を出たのが6時55分。
そして奥多摩駅に8時27分着と、青梅駅からここまで20.5㎞を1時間32分、平均時速は13.37㎞/hと標高差141.1mを途中トイレ休憩も含めてゆっくり走ってきたので、まずまずの運動になっています。
ここまでに息をつくような急坂はありませんでした。
但し、ここから先は小河内ダムの建設により付け替えられた道になるため、ダムまでの区間に急坂が予想されます。
奥多摩駅から西東京バスに乗ると、ダムまではエンジンを唸らせて坂をのぼるのに、湖畔に出ると一転して道は平らになります。
かつて柳沢峠や小菅林道の帰り道に奥多摩駅までブロンプトンで下って来たときは、ダムが無い頃の「むかし道」を逆方向から走る際、ダムに近い場所ほど工事の際に無理やりつけたような急坂があって、両ブレーキをフルで使って奥多摩駅へ下りました。
今日はそこを逆に登るので、突入する前から気が重く感じます。

(氷川大橋)

(むかし道入口)
実は8時半に奥多摩駅につくように走ってきたのには理由があります。
お財布の中に現金が殆ど無く、この地域に唯一の信金ATMが8時半から営業開始するのにあわせて走ってきたのです。
今どきカードとスマートホンがあれば大概のことは何とかなりますが、これから山の中に分け入ってゆくと現金でしか清算できないお店というのもまだあります。
だから、家に帰るまでの電車賃くらいの現金は持ち合わせておいた方がよいと思ったのです。
もっとも、昨今の記事ではハイキングコースに強盗が出たそうですから、これから山に入るのに分不相応なお金を持ち歩くのも考えものです。
(そういう人を山賊と呼んでいいものかどうか)
山の中でアクシデントにあった時に必要以上の現金は何の役にも立たないので、必要最低限に抑えておきます。
氷川大橋を渡って鍾乳洞のある日原方面への道を左に分け、橋から190mさきの左手に氷川保育園のある信号を右折すると、旧青梅街道である「奥多摩むかし道」に入れます。
以前殆どの区間をブロンプトンで下ったことがありますが、ここから白髭トンネルの先、梅久保バス停付近までの「むかし道」は未舗装路で車は走れず、幅も狭いので小径車で乗ったまま登るのは困難です。

(奥多摩消防署)
ただし旧道はダム建設の際に利用された東京都水道局小河内線の廃線跡と交差するので、廃線マニアさんには押し歩きして登ると興味深いかもしれません。
乗り鉄かつ自転車で登坂が好きになった自分からいわせてもらえば、できれば同線の跡地を全部サイクリングコースにして、ダムから奥多摩駅までの間自転車と自動車の道路を完全に分離して欲しいのです。
橋梁もトンネルもそれぞれ23ずつあって、観光鉄道としての利用が検討されるくらい景色が良かったみたいですから、自転車専用道になったら人気が出ると思います。
鉄道線跡ですから、道路ほど勾配もきつくはないでしょうし。
今回は多摩川サイクリングコースからブロンプトンに乗ったまま(つまり押し歩きせずに)柳沢峠まで達することができるかという実験を兼ねているので、「むかし道」には入らず、このまま国道411号線を進みます。
むかし道入口から南氷川大橋を渡って290m先で奥多摩町消防署前を過ぎます。
時間的にちょうど始業準備をおこなっている所でした。
右側に鉄筋4階建ての新しい庁舎、左側にも別棟があり、とても規模の大きい消防署ですが、支所などはなく奥多摩町全域をここでカバーし、山火事に備えるほか山岳救助も行って専用車もあるそうですから、これくらいの施設が必要なのでしょう。
何かで読みましたが、山で行方不明者を救助するのは、場所の特定が困難で、砂浜に落とした塩粒を見つけるようなものだし、二次災害の危険もあるので、場所が分かってもそこへ到達するのがまた至難の業だといいます。
そういう話を聴くと、安易な気持ちで素人がひとりで山奥へ入ってはいけないと思います。

(鋸山林道入口)

(琴浦橋)
消防署の先、弁天橋手前で左に分岐する道は鋸山林道です。
この林道はここから大沢に沿って左岸をのぼります。
鋸山は房総半島にある石切場だった同名の山が有名ですが、奥多摩にもあります。
行き止まりの林道が多い奥多摩にあって、唯一の秋川の谷へ抜けることができる山越えの林道で、私が20歳前後の頃までは半分が未舗装、峠部分の眺望も割と良かったのでオフロードバイクで何度か通り抜けました。
今は全線舗装されているので、頑張ればブロンプトンでも越えられると思います。
但し頂上部の標高は986mあり(すぐ東にある鋸山山頂の標高は1,109m)今いる青梅街道からの入口が標高390mですから、林道頂上までの標高差は600mちかくあり、かなりハードだと思われます。
柳沢峠を無事越えることができたら、挑戦しようと思います。
弁天橋を渡ると、すぐ先の愛宕大橋交差点で左手から都道148号奥多摩あきる野線が合流してきます。
古里の先、将門交差点で分岐して多摩川の右岸をのぼってきた、トンネル多用の新しい道です。
古里と将門の間さえ開通すれば、ここから下流方向の多摩川南岸(右岸)道路は全通するので、青梅街道の渋滞解消が期待されますが、なかなか難しいようです。

(橋詰トンネル)

(梅久保バス停付近のむかし道入口)
愛宕大橋を渡って奥多摩病院の前を過ぎ、琴浦大橋を渡り、浄水場を右上に見あげながら桧村橋を渡ります。
このあたり、要所要所に平らな場所があるものの、断続的に小径車にはきつい坂道が増えてきます。
桧村橋をすぎて間もなく、奥多摩駅からきて最初の橋詰トンネル(延長238m)に入ります。
長さは大したことはないのですが、トンネル内が登り坂になっていて、ダム建設の際に掘られたトンネルらしく、路肩は殆ど無いため、前後から来る車に注意します。
トンネル内を自転車でノロノロのぼっている時に、後ろからバスやトラックなどの大型車が来て、対向車も来るような状態だと、おそらく追い抜けずに後ろをつかれることになります。
まだ9時前なのでどちらの方向からも車が続いてくることはないので構わないのですが、週末の昼間など自転車は危険だと思います。
ライトも点けなければいけないし、トンネルに入る前に車が切れるのを待ってからの方が良いかもしれません。
なお、橋詰トンネルは桧村橋手前を右折して、多摩川左岸をおおまわりする旧道を使えば、舗装している道路で迂回できます。

(むかし道いろは楓)


橋詰トンネルをでてすぐ、奥多摩都民の森入口があります。
都民の森とは都の環境局が設置した森林や林業に対する理解を深めることを目的とした施設で、ここと、前述した山向こうの桧原村の二カ所にあります。
林業体験や山歩き、渓流釣りなどの体験プログラムを実施していて、宿泊施設もあります。
そのすぐ先で境橋をわたり、右から旧道を合わせた後に入るのが、延長359mの白髭トンネルです。
さきほどの橋詰トンネルより100m以上長く、傾斜もややきついのですが、このトンネルを迂回しようとしたら手前の旧道を入り、160m先で左に折り返して分岐する、アップダウンがあって未舗装の「むかし道」しかありません。
信仰の対象になってきた白髭大岩や耳神様、弁慶の腕抜き岩と呼ばれる奇岩などがあるのですが、今回はパスしてトンネルをなるべく早く通り抜けます。
2つの坂道トンネルを通過しながら、先日ご紹介した箱根旧街道越えにはこんな場面はなかったことを思い出しました。
やはりダム建設のために機械のちからで開削された山奥の道は、自転車や歩行者とは相性がよくないのかもしれません。

(オオキンケイギク)


白髭トンネルを出たら、すぐ右手の舗装されている「むかし道」に入ります。
ここまで奥多摩駅入口交差点から3㎞です。
国道411号線の方はこれから、梅久保(延長38m)、惣岳(149m)、板小屋(115m)、桃ヶ沢(275m)と、再び合流するまで大小のトンネルが続きますし、ここからダムに近づくほど登り坂の傾斜はきつくなりますから、車を避ける意味でも小径車には旧道の方がゆっくり登れて有利だと思います。
むかし道に入ってからしばらくは、谷沿いのやや下り気味の道になります。
せっかく苦労してのぼってきて、1mでも高度を稼ぎたいところですが、ここに下り坂があるということは逆走したときに確認しています。
路面の舗装も谷間は寒暖の差が激しくて傷みやすいのか、修復を繰り返した跡だらけで小径車にとってはお世辞にも走りやすいとはいえません。
しかしまだ9時前のせいか、車はもちろん歩いている人もいませんから、狭いながらも道幅いっぱいをつかってじっくり走れます。

(しだくら橋)

山の斜面に咲く黄色い花にモンシロチョウが舞っていて、いっけん微笑ましい風景なのですが、この花はオオキンケイギクといって特定外来生物ではないかと思われます。
人がたくさん歩く道ですからやむを得ないのでしょう。
2軒しかない人家と公衆トイレを過ぎ、すれでもまだ道は下りです。
なんだかどんどん谷底に下っていっているような気分になります。
何年か前の秋に訪れた時には渡れた「しだくら橋」という名の吊橋は、老朽化により「2人以上で渡らないように」という注意書きが出ていました。
縁結びの地蔵尊という小さな石仏が擁壁上に鎮座し、「人に知られずこっそりと二股大根を供えて一心に祈れば結縁成就といわれている」とあります。
「結縁(けちえん)」とは、一義的には仏さまと縁を結ぶ、すなわち仏道に帰依することですが、対象が文物でも使いますし、最後の方に「親戚になること」という意味があります。
でも縁を結ぶということは、人間の意思などを越えたところにあるものではないでしょうか。
人と人の出会いって、偶然ですが奇跡でもあるわけですから。

(かなり奥まで下りが続きます)

(最後の方に坂が待っていました)
むかし道をさらに進むとだいぶ日陰が多くなって、所々の沢に小さな滝を見かけます。
おそらくここは桃ヶ沢でしょう。
ゆっくり登っているので、通過するだけでも滝から出てくるマイナスイオンをじっくり浴びることができます。
かなり小河内ダム直下まで近づいてから、いきなり登り坂になりました。
この道は何度も下っているのですが、こうして逆方向から登ってみるとずい分と印象が違います。
下っているときは「これは登ったらきつそうだ」と思っていたのに、実際に登ってみると「これなら登れそうだ」と感じます。
自転車や徒歩の場合、同じ道を往復歩かないと分からないことがあるのかもしれません。
昔話「京都のカエルと大阪のカエル」のように、景色だってまるで逆さまですし。
それに登りは下りに比べて速度がずっと遅いため、息を切らしながらも道路の周囲をじっくり観察しながら走ることができます。
(徒歩の場合、速度は自転車ほどには変わりません)
やがて、小河内ダム直下に近い西久保の切り返し近く、旧道を奥多摩むかし道として蘇らせた記念として植樹されたモミジやベンチ、東屋のある場所に着きました。
奥多摩駅入口交差点からここまで5.7㎞を23分で走ってきました。
奥多摩駅下の氷川大橋の標高が332.8m。
西久保の折り返しの標高は436.2mですから、この区間で100m以上高度を稼いだことになります。
たしかに登り坂もありましたが、むかし道に入ってからゆるい下り坂が多く、そんなに登ったかなぁという印象です。
次回はここ西久保の切り返しから続けます。