Little Dorrit, etc. | Have a cup of tea

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主に英国に関する出来事を記録しています

最近続けて、英文学作品のドラマをDVDで鑑賞した。



まず1つ目はチャールズ・ディケンズ原作の 'Little Dorrit'(リトル・ドリット)。これは、昨年のロンドン滞在中にテレビのBBC1で放映されていたもの。最後まで見られなかったので、9月に渡英したときにAmazonで購入した。



物語の舞台は、ヴィクトリア時代、ロンドンのテムズ川南岸のSouthwalkに実在した債務者監獄 Marshalsea Prison(マーシャルシー監獄)。少女リトル・ドリットことエイミーは、父親の借金のために、生まれたときからマーシャルシー監獄での生活を余儀なくされ、父親を支えて健気に生きる。そこに中国から帰った青年アーサーが現れ、彼の家族と、エイミーの父親の借金についての関連性が浮かび上がり、物語が展開していく。


ヴィクトリア時代、債務者監獄、借金・・・という題材で全般的に暗い印象があるが、個性豊かなたくさんの登場人物が興味深かった。物語にはヒーロー、ヒロインがいるが、どちらかというと、彼らを取り囲む人々のほうが人間味溢れ、身近に思えた。エイミーに片思いするマーシャルシー監獄の牢番の息子ジョン、幼馴染のアーサーを思うフローラ、裕福な家に引き取られるが違和感を感じいつも怒っている孤児のタティ・コーラム、ランドロードの元で働く家賃徴収人の男バンクス、等々。見た人はきっと、登場人物の誰かに共感したり、自分を重ね合わせたりするかもしれない。



2つ目は、D.H. ロレンス原作の 'Women in Love'。原作の邦訳版は「恋する女たち」というタイトルで文庫本が出ており、上巻は古本を入手できたものの下巻は入手困難で、現在、ペーパーバックを読書中。DVDは60年代か70年代に製作された映画版。


物語は、イギリスの炭鉱の町を舞台に、若い男女のカップル2組のそれぞれの精神的な関わりあいや愛の模様、ことの成り行きを、その家族の死や生活環境を絡めて描いている。異なる愛情のかたち、男性同士の友情(愛情)、男と女の愛の求め方の違いなど。20年代という背景から、映画ではその当時のファッションやインテリアが用いられているようで、またモダニズムの話などが出てきて映像も興味深い。



3つ目は、ジョージ・エリオット原作の 'The Mill on the Floss'
(フロスの水車小屋)。


ヴィクトリア時代の地方の田舎で、水車小屋の管理人をする一家の物語。率直に言って物語は悲劇なのだが、エミリー・ワトソン演じる水車小屋の娘マギーをみていると、ジョージ・エリオットの分身に思えて、当時の女性としては先進的だった彼女のことをもっと知りたいと思う。情熱や才能があるにもかかわらず、時代のためにそれを十分に発揮することができなかった女性の代弁者のようにも思える。また、マギーの父親の敵対者であるウェイカムの息子フィリップとマギーの友情(愛情)も切ない。フィリップは身体が不自由であるが、芸術を愛する繊細な心を持ち、彼が言う"We cannot escape pain, pain is part of life"というのが心に残る。その後に"as love is"と続くのだが。また、マギーのセリフで"I don't think much happiness can come to me from love,"とあり、こちらもちょっと共感するし、いろいろと考えさせらる。loveといってもいろいろな種類があるけれども。 原作本を読んでみたいと思った。