英国のポップスグループ、 The Divine Comedy
の曲に 'Lucy
' というのがある。
この曲の歌詞は、英国の湖水詩人ウィリアム・ワーズワース
の『ルーシー詩篇』から引用されている。
リーフレットの訳詞は、田部重治氏訳の『ワーズワース詩集』(岩波文庫)の引用が掲載されているが、
ちょっと自分なりに訳してみた。(叙情的なセンスに自信がないけれど・・)
(原文)
Lucy: She dwelt among th' untrodden ways
She dwelt among th' untrodden ways
Beside the springs of Dove,
A maid whom there were none to praise
And very few to love:
A violet by a mossy stone
Half-hidden from the eye!
- Fair as a star, when only one
Is shining in the sky!
She liv'd unknown, and few could know
When Lucy ceas'd to be;
But she is in her grave, and, oh!
The difference to me.
(訳文)
ルーシー (誰も踏み込むことのない地に暮らした娘)
彼女は、ダヴの泉のほとりの
誰も踏み込むことのない地に暮らしていた。
誰からも賛美されることなく、
愛されることもなかった娘よ。
苔生した石の傍に
見え隠れして咲く菫よ!
その清らかさは、
夜空にひとつ輝く星のようだ!
ルーシーは人知れず生き、
また、人知れずこの世を去った。
彼女はとわの眠りについている
ああ!なんということか。
(拙訳:cuckoo)
孤独で不遇な乙女を詠った詩である。Lucy = 菫の花とも考えられる。
哀しげな詩の雰囲気とは異なり、この詩が引用されている The Divine Comedy の 'Lucy' は、
イギリスの夏を思わせるような、アコースティックで、わりとさわやかなチューンなのだ。
'Lucy' という名前について、先日の英米文学概説の先生が言っていた。
19世紀の英文学作品の中に登場する"L"で始まる名前(Laura, Lily Lydia など)のヒロインは、
大抵か弱くて、短命で、受身なキャラクターなのだという。
そう、当時の小説のヒロイン像は、色白で病弱で受身な若い女性(少女)が主だったそうだ。
それぞれの名前に何か由来というか意味があるのだと思う。
たとえば、Lucy は「キリスト教徒の殉教した聖女(リーダース英和辞典より)」とあるように。。