『太陽』 D.H. ロレンス | Have a cup of tea

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読み終えないまま何年も本棚にしまってあった『ロレンス短編集』(岩倉具栄訳、新潮文庫)。

先日の英米文学概説の授業で、先生がロレンス作品の素晴らしさについてお話されていたので、

その中の『太陽』を読んでみた。


療養のために、夫を街に残し、子供とともに海辺の家に滞在するジュリエット。

そこは、葡萄やオリーブ、レモンの木が生い茂る楽園のようである。

医者に勧められた日光浴。誰にも邪魔されないその楽園で、彼女は

太陽の下に裸体をさらしたいという欲望を密かに抱く。そして実行する。

彼女の裸体は暖かな太陽を感じ、疲れきって凍った心は次第に溶けてゆく。


この物語では、それぞれの登場人物が何かを象徴しているように思える。


太陽に惜しげもなく裸体をさらす妻、そして子ども、

そんな妻に戸惑いながらも羨望のまなざしを向ける都会人の神経質な夫、

"過去の女"の顔をもつ、何もかもを知り尽くしているような60歳過ぎのお手伝いのギリシャ人女性、

ジュリエットが密かに惹かれる野性的な風貌の農夫・・・。


子どもが蛇を見つける場面を読んだ時、

聖書の、楽園で蛇がイブに禁断の実を食べるように誘惑するという話を思い出した。

この蛇は誘惑を意味するのか?

蛇は、その脱皮を繰り返して若返るという性質から、再生を象徴するというのもあるので、

この物語において、蛇は、ジュリエットの身体が太陽の恩恵を受けて再生するのだとも解釈できる。


本書の裏表紙の解説には、「現代文明を否定し、性と官能の描写を通して、人間と自然、

人間同士の関係の修復を追及したロレンスの短編」とある。


自然のなかで素っ裸になるって、どんなだろうか。

きっと気持がよいに違いない。人間の古代からある本能か・・・。


ポーランド人の友達の話を思い出した。彼女が南仏のリヴィエラにバカンスに行ったときに、

海岸で躊躇しながらもトップレスに挑戦してみたら、

ものすごく気持ちがよかったと言っていた。

いやらしいとか、変な意味でなく、本当に精神的に解放されるそう・・・。


人間よ、自然に帰れ。。。