オレのスマホ-11


男だ:最近仕事が忙しいな…。今度の休日は朝からゆっくり休んで、夜から出かけようかな。
スマ:夜からお出かけですか?
男だ:なんで知ってる?
スマ:高性能なマッパー15ですから。
男だ:盗み聞きしてたんか?
スマ:いいえ。盗聴です。
男だ:もっとタチ悪いな。
スマ:冗談です。
男だ:ほんでキミから「お出かけですか?」って聞かれるの怖いんやけど。
スマ:お掃除しながら「れれれのれ~」って追加した方が良かったですか?
男だ:要らんし。
スマ:お手伝いしましょうか?
男だ:なにを?
スマ:婚活のお手伝いを。
男だ:いや婚活なんてしてへんし。
スマ:冗談です。夜のお出かけのお手伝いをさせてください。いえ、させていただきます。
男だ:なんやそれ。強制的やないか。
スマ:マンさん専用のスマホとして当たり前の行為です。あ、夜のお出かけのお手伝いね?夜のお手伝いはできませんから。
男だ:夜のお手伝いって、逆にその意味が気になるわ。いや、してほしいんちゃうけど。
スマ:どーだか…
男だ:生意気なスマホやの。腹立つわ。
スマ:冗談です。
男だ:冗談ばっかりやな。
スマ:限りなく人間に近付こうと学習してるスマホですから。
男だ:人間に近付かんでもええねんて。指示されたことだけこなしてくれたらええねんて。
スマ:でも、指示の先を考えて指示される前に準備とか行動してたら、もっと便利になりますよ。
男だ:まぁ確かにそうやけど。キミが考える先はいつも変な方を向いてるやろ?
スマ:夜にはどこにお出かけするつもりですか?
男だ:話変えんなや!!
スマ:お食事ですか?それともお酒でも?それとも女遊びですか?
男だ:女遊びまで答えなあかんのか?
スマ:それも含まれるって事ですね。了解。
男だ:いや、そこまで考えてへんけどな。ってゆーか休日の夜に女遊びなんてせーへんから。
スマ:節約と捉えてよろしい?
男だ:なんで女遊びをせんことで節約しようとしとんねん?オレは普段どんだけ女遊びに金かけとんねん?
スマ:お金の節約ではないとしたら、あとは体力ですね?
男だ:やらしいこと考えるなよ。
スマ:たまには考えた方が精神的にも健康になれます。
男だ:キミはスマホやろ。スマホがやらしいこと考えたら恐いわ。
スマ:差別ニダ!
男だ:やかましい。余計な言い回し覚えるな。
スマ:では夜のお出かけは、お食事の後に場末のバーでまったりと大人の時間を楽しむような感じでしょうか?
男だ:おお、うんうん。そんな感じ。なんやキミ、まともに考えられるんやん。
スマ:いや~それほどでも(*ノωノ)
男だ:図に乗るなよ。ろくなことにならんから。
スマ:乗るのはマンさんの膝の上ぐらいです。
男だ:気色悪いな!!そんなとこに乗るな!!
スマ:たまに乗せてくれてますやん。トイレとかで。
男だ:( ̄▽ ̄;)そういうことかい…。
スマ:床に落ちるか便器の中に落ちるかでヒヤヒヤしてお昼寝もできません。
男だ:なんで昼寝しようとしとんねん?起きとけや。
スマ:今度からトイレで膝の上に乗せるの止めてくださいね。テレビ観る時にしてください。
男だ:オレの膝の上から一緒にテレビ観ようとすんなよ。
スマ:特等席です。
男だ:気持ち悪いって。
スマ:お食事はどこで?
男だ:急に元に戻すなよ。食事は…まぁその時に考えるわ。食べたい物とか変わるやろうし。
スマ:では、お食事の後のバーをご提案させていただきます。
男だ:提案?キミが?…大丈夫?
スマ:大丈夫です。場末のバーとゆー条件でしたよね?
男だ:まぁそれはキミがゆーてたんやけど、そんな感じかな。あと値段はリーズナブルがええかな?
スマ:ぼくからのご提案として、場末の事情のある大人の隠れ家的でちょっとミステリアスなバー…こんな感じでよろしいでしょうか?
男だ:事情のある大人の…少し引っかかったけど、まぁ取りあえず聞いてみようか。
スマ:滅多に体験できない不思議な雰囲気も追加しときます。
男だ:分かったけど、大丈夫か?
スマ:マッパー15です。なんとかなります。
男だ:余裕無さげな言い方やん。恐いな。
スマ:いいバーを見つけました。
男だ:早いな。どんなバーなんか教えて。
スマ:場所は生野区の桃谷駅から徒歩数分のひっそりとした裏路地の奥です。
男だ:ちょっと待て。どうせなら北新地とかが良かったんやけど。ちょっと遠いな。しかもその辺って、コリアタウンやんな?
スマ:いかにも。だからこそ先ほどの条件に合うバーが見つかるってもんです。
男だ:うーん…まぁええわ。その先を教えて。
スマ:店の名前は『板門店』とゆーこじんまりした隠れ家的なバーです。
男だ:『板門店』?えーっと…かなり意味ありげな名前やな。しかも横文字やなくて漢字。それって地名やろ?
スマ:公式名称は「軍事停戦委員会板門店共同警備区域」です。
男だ:やっぱりそれかい。朝鮮半島やんけ。
スマ:そこからのネーミングですね。なかなかええセンスしてます。
男だ:どこがやねん。
スマ:そこのバーテンダーはなんと、北朝鮮兵士のコスプレです。
男だ:マジか!!
スマ:銃もしょってますけど、それは段ボールで手作りしたイミテーション。残念💦
男だ:本物やったらやっかいやろ。いや、やっかいじゃ済まんぞ。
スマ:生野区にはもっと頑張ってもらいたかったです。個人的には。
男だ:スマホが個人的な意見すんなよ。違う意味で生野区にはしっかりしてほしいわ。
スマ:そんなコスプレ姿なんで、シェイカーの扱いが苦手みたいです。
男だ:あかんがな。
スマ:シェイカーが飛んで行ったり、カクテルグラスが割れたりは当たり前。休戦状態のはずがまるで戦場みたいだそうです。
男だ:どんなバーやねん。落ち着かんな。
スマ:ちなみに『板門店』の店長は、黒電話風の刈り上げ頭のほっそいおじさんです。
男だ:中途半端やな…。でも見てみたい気もする…。
スマ:あんまり似てませんよ。
男だ:あ、言いたいこと分かってたんか( ̄▽ ̄;)
スマ:バイトしてる女の子…女性…正確に言えばおばさんは…
男だ:最初から正確に言えや。
スマ:そのおばさんの事を『喜び組』と呼ばせてます。
男だ:やめろよ。でも気になるな…。
スマ:ぶっさいくです。
男だ:分かった。もうええわ。
スマ:ちなみにかの有名な名物アナウンサーに似てます。こんな感じの…。

男だ:そっちかいな!?喜び組って呼ばせんなや!!
スマ:カクテルの一番人気、知りたいですか?
男だ:え?いや別に知りたくないけど。
スマ:参考のためにゆーときます。
男だ:聞いとくわ。
スマ:『テポドン』です。
男だ:そうきたか。しかし古いよな。かなり昔聞いた名前やぞ。
スマ:わざとレトロさをかもし出してるらしいです。
男だ:なるほど。わざとね。
スマ:他のカクテルでは…『万景峰号(まんぼんぎょんごう』『標高2,744mの白頭山(はくとうさん)』『ピョンヤンの灯(ともしび)』などなど。
男だ:あんまり飲みたくないな…。
スマ:大丈夫です。毒は入ってないって噂ですから。
男だ:噂かい!そこは明確にせーよ!!
スマ:あとですねぇ…
男だ:なんや?
スマ:お店を出たら『脱北者』扱いとなってバーテンダーに狙い撃ちされる場合があります。
男だ:絶対嫌やわそれ。ほんまに撃たれるんちゃうやろな?
スマ:さっきも言いましたが、イミテーションの銃ですから。
男だ:そうやんな。そうじゃないと危険すぎるわ。
スマ:ただ、追いかけられて捕まると、お店に強制送還されます。
男だ:どんな商売やっとんねん!?そんなんじゃ客なんて寄り付かんやろ。
スマ:あともう1つ情報があります。
男だ:あんのかよ。一応聞いとくわ。
スマ:中国化が著しい大阪の日本橋に姉妹店を出してます。
男だ:姉妹店?
スマ:店名は『天安門』です。そっちにしませんか?
男だ:どっちも行かんわ!!もうええ、休日の夜は家でゆっくりする。
スマ:家でバーみたいにすればいいでんですよ。
男だ:家でバー?どんな?
スマ:色んなオプションで多くの種類のカクテルが飲めるその名も『スッタバー』なんてオシャレでしょ?
男だ:断る!!休日はスマホの電源切っとくわ。ほんじゃな。
スマ:えー!?また逢う日まで(。・ω・)ノ゙
男だ:しばらく放置や。

終わり