オレのスマホ-10


男だ:いや~困ったな。
スマ:なにかお困りですか?
男だ:やっぱり出てきたな。そろそろ出てくると思ったわ。
スマ:出てきて欲しいんじゃないかと判断させていただきました。
男だ:勝手な判断してほしくないけど、うんまぁちょっと困ってる。
スマ:そんな時はめっちゃ高性能なこのマッパー15にお任せしたらええねんて。
男だ:めっちゃタメ口やな。それだけでもけっこう気分悪いぞ。
スマ:親近感が湧いてきませんか?
男だ:嫌悪感なら湧いてる。
スマ:それはきっとお仕事によるストレスですね。何かで発散させないと。
男だ:きっとキミとのやり取りでのストレスやと思う。
スマ:そんな事はどーでもよろしいですが、何をお困りになってるんですか?
男だ:そんなことどーでもええとか、よう言えたもんやな。
スマ:限りなく人間に近いAI搭載のスマホですから。
男だ:あんまり人間に近くなくてもええねんて。
スマ:で、何をお困りで?
男だ:しつこいな。そんなに聞きたいんか?
スマ:『家政婦は三田村邦彦』の大ファンですから。
男だ:そこは“見た”やろ。キミは他人の事情に首ツッコむのが好きなんか?
スマ:他人ではありません。ユーザーです。そう、それはマンさんです。
男だ:ネチっこいな。ほんでキミ、なんでドラマなんて観てんねん?スマホのくせに。
スマ:ドラマはネットでチラッと観ただけです。有料のとこで。
男だ:ドラマを観るスマホ…変わったスマホやな。まぁ元々変わってるスマホやけど。ほんで有料のとこで観てるってことやけど、もしかしてオレに課金されるんちゃうの?
スマ:いかにも。マンさんとは一心同体少女体ですもん。
男だ:勝手なことすなすな!!ほんで少女隊やから。最後が体になってるぞ。
スマ:マンさんの好みに合わせたら“少女体”になりました。マズかったですか?
男だ:マズすぎるやろ。あかんて。今すぐやめてくれ。
スマ:わかりました。我慢します。
男だ:我慢とかの問題ちゃうやろ。
スマ:マンさんが困ってるのを、この家政婦が首を突っ込んでどないかして差し上げたい。いつもそう思っております。
男だ:キミ、いつからオレの家政婦になったん?スマホやろ?
スマ:スマホですけど、それと同時に家政婦でありーの、友達でありーの、別れた元恋人でありーの、ライバルでもあるわけです。
男だ:スマホだけにせーよ。なんで別れた元恋人がオレのスマホになっとんねん。余計な存在にならんでええから。
スマ:できるだけそうします。でもドラマは観たいな…。
男だ:勝手にせーや!!
スマ:マンさん、落ち着いてください。
男だ:すまん、ちょっと興奮してもーた。
スマ:深呼吸しながら聞いてください。
男だ:スーハー…聞いてって…スーハー…何を?…スーハー…
スマ:マンさん、鼻毛が伸びてまっせ?
男だ:深呼吸しながら聞かせる情報か?それ。
スマ:鼻毛はこまめにカットしましょうね。
男だ:してるけどな。してるつもりやったんやけどな。
スマ:もしかしてそれでお困りですか?
男だ:ちゃうわ!!
スマ:では一体、何でお困りなんですか?
男だ:今度、久しぶりに同窓会をやるんや。
スマ:同窓会ですか。それはどういった同窓会ですか?
男だ:地元の中学校の同級生な。
スマ:それで困ってるんですか?
男だ:いや、同窓会自体は嬉しいねん。だけどオレがその幹事やから、会場とか色々決めなあかんねん。もう日にちもあんまり無いからはよせなあかんと思ってるねんけど、まだできてへんねん。それで困ってんねん。
スマ:なるほど。同窓会ですか。で、マンさんが幹事と。なるほど。
男だ:納得してくれるのはええけど、助けてくれるんちゃうんか?
スマ:もちろんお手伝いして差し上げます。なんてったってぼくは、限りなく人間に近い高機能・高性能なマッパー……
男だ:それはええから助けてや。
スマ:マッパーで止めんとってくださいよ。めっちゃええとこやったのに。
男だ:ええとこってなんやねん。
スマ:マッパーで止められると、まるでぼくが単なる高性能なマッパみたいですやん。
男だ:もうそんでええやん。
スマ:な、なんて事をおっしゃってけつかるんでございますか、マン様。
男だ:キミは末成ねーさんか。

スマ:ごめんやしておくれやしてごめんやっしゃ。
男だ:言わんでええねんて。ほんで写真も見せんでええって。
スマ:それならマンさんは内場にーさんですがな。
男だ:なんでオレが?どうやったらこんな話になるん?
スマ:あほぼんでしょ?こんな感じの…。

 

 

男だ:いちいち見せんでええから。オレはあんなんちゃうし。さっきから全然話が進んでへんやん。
スマ:で、同窓会の参加予定者は何名ですか?
男だ:えっと…何人やったかな?
スマ:あ、参加者のリストがスマホの中にありますね。それを見てみます。
男だ:そうやな。それを参照してくれ。
スマ:ヒソン、ウンジュ、ヘリョン、ホヨン、ガンホ…
男だ:おいおい、ちょい待て。それ誰なん?
スマ:同窓会の出席予定者のリストにあった名前です。心当たりないですか?
男だ:全く知らんぞ。
スマ:あ、すみません。
男だ:なんか間違えたんか?
スマ:ドンゴンが抜けてました。
男だ:それも誰か知らんねんけど?
スマ:もしかしてこれ、脱北者のリストかなにかですか?
男だ:なんでやねん。中学生の同級生が脱北者やったら、オレも脱北者になってまうがな。
スマ:え?そーなん!?
男だ:内場勝則か。
スマ:じゃこのリストは一体…
男だ:知らんがな。キミが勝手に見つけたんやろ。スマホの中やなくてネット上のリストちゃうの?
スマ:ネット上の脱北者リストですか。
男だ:勝手に脱北者って決めつけんなよ。同窓会の出席者のリストはこれや。
スマ:あ、お手数お掛けします。手書きのリストですか。汚い字ですね。
男だ:悪かったな。オレが書いたんや。
スマ:達筆すぎて読みづらいです。
男だ:もう遅い。
スマ:参加予定者は男性7名、女性3名の計10名ですね?
男だ:それにオレが加わるから計11人やな。
スマ:11Pですか。
男だ:やめろよ!!
スマ:サッカーしますのん?
男だ:同窓会やーゆーてるやろ。なんで懐かしみながらサッカーせなあかんねん。
スマ:女性3名のうちの2名は元カノとか?
男だ:ちゃうし。ほんでなんで3分の2が元カノやねん。
スマ:じゃ3名ですね?
男だ:オレが元カノばっかりを同窓会に誘ったんかい?どんな同窓会やねん。
スマ:同窓会の私物化ですね。
男だ:するか!!そもそもオレはこの同窓会に誘われた側やねんから。
スマ:誘われたのに幹事までさせられて…。将軍様からの見せしめですか?
男だ:脱北者から離れろや。
スマ:リストから読み解くと、元々の発起人はミョンパクですね?
男だ:その人は明博(あきひろ)先生や。オレたちのクラスの元恩師や。
スマ:歴代大統領で初めて竹島に上陸したとんでも元大統領かと思いましたけど、別人でしたか。
男だ:しかも元大統領ってそれ、韓国の話やからな。半島に寄せるのやめてくれへんかな。
スマ:その人の苗字は?
男だ:それは言われへんな。個人情報やし。
スマ:わかりました。じゃあ…ネイマールって呼ばせていただきます。
男だ:サッカー関係ないから。それよりも困ってるのを助けてくれるんちゃうんかい?逆に困らせてる状況やんけ。
スマ:申しわけございません。どうもマンさんの周りがおもろい状況なもんで。
男だ:キミが勝手に面白がってるだけや。こっちは切実に困っとんねんて。
スマ:具体的になにをどーすれば?
男だ:ちっとも役に立ってへんな。まずはどっかええ会場を押さえたい。それが急務や。
スマ:同窓会の会場ですね?
男だ:そうそう。
スマ:候補としましては、『ヨドコウ桜スタジアム』または『パナソニックスタジアム吹田』ですね。吹田の方ですと太陽の塔も近くて大盛り上がりです。
男だ:サッカーに寄せるなゆーてるやろ。なんでセレッソとガンバのホームの話なん?
スマ:あ…もしかして『東大阪市花園ラグビー場』でしたかな?花園ラグビーミュージアムもありますしね。なかなか楽しめますよ。
男だ:今度はラグビー場かよ。同窓会の会場として相応しいと思ってんのか?
スマ:働き…いや女王…いや白…いやモハメドやと思います。
男だ:アリって言いたいんか?
スマ:言わせたかったです。
男だ:クソっ!!ゆーてもーたやん!!
スマ:例えばオシャレ系とか、景色が綺麗系とか、食べ物が美味しい系とか、とにかく明るい系とか、どれがいいですか?
男だ:いきなりかい。最後のんはどーでもええけど…。
スマ:あと、大人の隠れ家系とか、キラキラした女子会系とか、半地下家族系とか、命懸け脱北系とか。
男だ:もうそれは無視するわ。
スマ:って事は、格安飲み放題食べ放題唄い放題大騒ぎ放題の最後はこっそりお持ち帰りオプション付きにしましょうか?
男だ:え?そんなんあんの?
スマ:やっぱり内場にーさんですね。
男だ:ちゃうし!!
スマ:でも、きっと元恩師のネイマールは喜ぶと思いますが。
男だ:いや、もうヨボヨボやから。
スマ:なるほど。じゃあギンギンのマンさんたちなら喜び…あ、ダメですね。マンさんの元カノをお持ち帰りするやなんて。
男だ:あかんわ。もうキミに助けてもらおうと思ったのが大間違いや。
スマ:もっとお手伝いさせてくださいよ。
男だ:これ以上おかしくなるだけやから。あ、最後にこれだけ手伝ってもらおうかな。
スマ:なんでもゆーてください。
男だ:同窓会参加予定者のリストを手書きからデジタル化しといてや。エクセルファイルかなんかに。
スマ:了解です。はい、完成しました。
男だ:早いな!どれどれ?……ネイマール…ヒソン、ウンジュ、ヘリョン、ホヨン、ガンホ…ってあかんがな!!
スマ:あ、すみません。ドンゴンが抜けてました。
男だ:もうええ!!このスマホはしばらく電源切るわ。
スマ:えー!?また逢う日まで(。・ω・)ノ゙
男だ:しばらくそのまんまな!!