エッセイ
「“姫”が“男”になったら&その逆5」


こんばんは。アイソーポスRIOです。《イソップに謝れ》

このエッセイ「“姫”が“男”になったら&その逆」シリーズは、有名な物語でよくある『~姫』とか『~太郎』のタイトルをそれぞれ『~男』とか『~女』のように性別を逆にしたら、その内容はどのようになってしまうのかを考えてみようという世界的・画期的なエッセイです。《自画自賛やめろって》

そして『桃女』は細かい描写と無駄なやり取りが多く、結局今回で3発目となってしまいました。
現時点では、書いてるぼくですらいつ終わるのか全く分かっていません。
まぁいつか終わるでしょう。《ええ加減やの》

とりあえず前回のリンクを貼っておきます。

 

 


では急いで進めるで~。





『桃太郎』→『桃女』(3発目)


まるでバイブの『強』設定のように強烈に震え出した金色の桃を仏壇の中に置いて、《バイブゆーなって》
しばらく放置したまま3日間が過ぎました。
その間にバイブの…いや、桃の震えはいつの間にか止まっていました。《桃の震え…まぁええか…》
おじいさんは桃の事はすっかり忘れて、いつものようにジグソーパズルに熱中していました。《どんだけハマっとんねん…》
しかしそんなおじいさんとは違い、おばあさんはいっときも桃の事を忘れてはいませんでした。
だってこのまま放置してると、いつかは傷んで食べられなくなるんやないかとヤキモキしていたからです。桃は傷むのが早いですから。《そっちを心配してたんかい》

洗濯が終わったおばあさんが、おじいさんに言いました。
「これからスーパーに買い物に行ってくるわ。お昼ご飯は何が食べたい?」
おじいさんはジグソーパズルの前で腕組みをしながら目をつむっています。
「チミ?聞いてる?もしかして寝とるんかな?」
「ぼんち揚げが食べたい」
「起きとったんかーい。ほんでお菓子かーい」
「昼ご飯は、豪華海鮮丼がええな」
「冷凍のチャーハンやな?わかった」
「冷凍て。このクソ寒い季節に?」
「チンするがな~。熱々やがな~」
「大盛りのやつにしてな」
「チミな、そんなんゆーてていっつも少し残してるやん。もうちょっと少ないやつでええやろ?」
「残したらキミが食べてくれるやん」
「そんなんしてるからウチは太っていくんやん」
「キミは太ったって魅力あるからええねんて」
「ウチに魅力…?チミはいっつもそんなんばっかりゆーてるけど、ほんまにそう思ってるん?」
「わしは嘘は言わん。キミの魅力に心を奪われて、キミを菊池家に迎え入れたんや」《これ、何が始まろうとしてんの?》
「それももう何べんも聞いた。ほんで菊池家はウチの家やから。チミは婿養子な」《婿養子やったんか…》
「まぁとにかく大盛りでよろしく」
「分かった。じゃ行ってくるわ」
「ちょっと待った!!」
急におじいさんが大声を出したのでおばあさんはビックリしました。
「なになに?ねるとんみたいやん。ウチを狙ろてるライバル出現か?」
「たまごスープも作ってな」
「……」
おばあさんは無言でトートバッグを持って玄関に歩き出そうとしました。
その時でした。

ガタンッ!!

突然大きな音がしました。
二人ともギョッとしながらその音がした方を見ました。

ガタガタガッタン!!

今度はもっと騒がしく大きな音がしました。
「なんや?仏壇か?またあの桃ちゃうんか?」
おじいさんは怯えた様子で言いました。
「うん…今までみたいに震えてるとかやなくて、暴れてるみたいやね」
今度はおばあさんも少し怯えてる様子でした。
そんなおばあさんを見て、おじいさんは表情を引き締めて言いました。
「よ、よし。わしが見て来る。キミも一緒に来て」《一人で行けや》
おばあさんは
「チミはここにおり。ウチが見て来るから」
と言って歩き出しました。《おばあさんの方が肝っ玉デカいな》
するとおじいさんがすかさず大きな声で
「パズルに気を付けてや!!」《そっちかーい》
そんなおじいさんの事は気にもせず、おばあさんは仏壇に近付いて行きました。
おばあさんがトートバッグを肩に下げ直して、恐る恐る仏壇の扉を開けようとしたその時…
突然仏壇の扉が開き、中から例の金色の桃が転がり出て落っこちそうになりました。
おばあさんは慌てて肩に下げていたトートバッグを降ろしてバッグの口を広げ、桃のそばに持っていったと同時に、桃はそのトートバッグの中にストンと落っこちました。
二人は黙ったまま、バッグの中の桃を見ていましたが、
「間一髪やったな。しかしこれ…こないだよりデカくなってへんか?」
近付いてきたおじいさんが言いました。
おばあさんは、
「大きなったね。今が食べ頃なんやろか?」
こんな時にまでそんな事を言うおばあさんに対しておじいさんは、
「なんでこれを食べようと思えるねん?どんだけ桃が好きやねん」
とたしなめました。

すると、また桃がガタガタと大きく動きました。
動くと言ってもトートバッグの中なので大きく転がる事はありませんでしたが、相変わらず『強』の設定かのように振動しています。
おじいさんはその様子を見ながら
「この桃の中、やっぱりなんかおるんかな?」
とつぶやきました。
それを聞いたおばあさんはパッと目を輝かせ、
「やっぱりそう思う?ウチもそう思っとってん。ほら、前に桃の中から声みたいなんも聞こえたやん?絶対なんかおるやんね?」
おじいさんはやっぱり怯えた顔しながら、
「でもなんか刺してきたような感じやったけどな。もし桃の中になんかがおったらどうする?」
と聞いてきました。そうしたらおばあさんはもっと目を輝かせながら、バッグの中の桃に話しかけました。
「桃ちゃんどーしたん?なんでそんなに動いてんの?なんか言いたいんやったらゆーてみ?」
すると、強く振動していた桃の動きがピタッと止まりました。
二人は
「あ、止まった」
と言いながら顔を見合わせました。
そしておばあさんがさらに桃に話しかけました。
「桃ちゃん、どしたん?」
一瞬間があってから、桃から小さな声らしき音が聞こえてきました。
「寒い…寒い…」
おばあさんは驚きながらおじいさんに
「寒いってゆーてる!」
と嬉しそうに言いました。
おじいさんは
「いや喜んでる場合ちゃうやん。寒いっちゅーてるんやからあっためてあげな」
おばあさんはトートバッグをそっと床に下ろすと、辺りをキョロキョロと見回しました。
おじいさんが
「ちょっと待てよ」
と言って、自分が座っていたジグソーパズルの前のふかふかの座布団の上にトートバッグを置きました。
そしたら今度は桃の中から
「ちょっとあったかくなった…けどまだ寒い…」
と聞こえました。
「これは間違いなく、中になんかおるな…」
とおじいさんが言いました。
おばあさんは
「そらおるでしょ。どうにかしてあげんと。そうや、布団敷いて毛布かぶせてあげようか」
と言って布団と毛布を用意しました。
「おじいさん、ほら、ここで桃をあっためてあげて」
おじいさんはトートバッグごと布団に乗せ毛布を掛けました。
おばあさんは
「桃ちゃん、あったかい?」
と桃に話しかけました。
すると桃の中から
「もーちょい…あともーちょい…」
みたいな音が聞こえました。《もうそれ、完全に喋っとるやろ》
それを聞いたおばあさんは急にキリッとした表情になり
「おじいさん、ウチ今からあっためるやつ買いに行くから、桃の面倒みてて」
「面倒?どうやって?なんか恐いんやけど」
「なにが恐いんよ!?ええから見守ってて」
「えー?しゃーないな、分かった。見守るだけやで。ほんでどこに買いに行くん?」
おばあさんはスマホを取り出しておじいさんの顔に近付けて見せました。
「こないだこんな記事見付けた。足元を囲ってあっためる器具やって。安いし、これ買うわ」
おじいさんはスマホから顔を遠ざけて画面を見ています。《老眼やな。そらそーやな》
「なるほど。ナトリの暖房器具か。これ、電気代も安いみたいやな。1時間0.8円やって。ええな。わしも欲しいわ」
「ナトリって、酒のおつまみちゃうんやから。ニトリやん」
「ニトリは酒のつまみやないか」
「マジでゆーてんの?チミはそれ、外で言わん方がええで」
「ワシはもう長年、誰とも喋らんから心配すんな」《寂しいな》
「とにかくナトリに行ってくる!」《おばあさんも間違ってもーてるやん》
「気を付けてな。ニトリは酒のつまみやで」《逆やて》

4時間後…。
おじいさんはやっと帰ってきたおばあさんに言いました。
「遅かったな」《遅過ぎやろ》
おばあさんは疲れ切った顔で
「どうしてもナトリに辿り着かんかった。最後の最後にスマホのナビで探して、これ買ってきた」
とため息をつきながら、チーズ鱈をちゃぶ台の上に投げた。《酒のつまみかよ》
おじいさんは
「こらこら、食べ物を投げたらあかんて。で、大豆ミートでつくったスモークカルパスは無かったんか?」
「無いわ!!」
と叫ぶと、おばあさんは急に泣き出しました。
おじいさんは慌てて
「そうかそうか。わしはずっと桃を見守ってたで。時々声も掛けてた」
と言いながら毛布を優しくさすりました。
「で、様子はどうなん?なんかゆーてる?」
おばあさんは泣きながらおじいさんに聞きました。
「なんか、あったかくなったとかゆーて静かになったで」
「え?そーなん?大丈夫なんかな?生きてるんかな?」
と言いながらおばあさんは毛布を少しだけめくって、トートバッグの中の桃に耳を近付けようとしました。

するとその瞬間…
桃が大きくブルンと揺れたかと思うと、トートバッグが倒れて中から桃が転がり出てきました。
二人はビックリして少し後ずさりました。
転がり出た桃は布団の上でモゾモゾと動いていたかと思うと、突然パッカーン!!と真っ二つに割れました。
「あっ!!!」
なんと、真っ二つに割れた桃の中には、それはそれは桃のように可愛い女の子が…いや、桃のようなケツをした可愛い女の子が寝そべっていました。《ケツゆーな。お尻って言え。ほんで寝そべってたって、態度悪いな》
しかもその女の子は、ニコニコ笑いながら立ち上がり、《いきなり立ったんか?》
割れた桃のようなオブジェと化した桃から《どっちやねん》
出てきて七歩歩いて右手で天を指し、左手で地をさして「天上天下唯我独尊」と言いました。《それ誕生した時の釈迦やんけ》



つづく《またかーい》




ほなね~♪