男女の会話42

「最高機密」


男:こんばんは。男です。
女:こんばんは…で良かったと思ってる女です。
男:なんで良かったんや?
女:また例のタワオフィで、いや、タワオフィ『NEW WORLD OSAKA TOWER』の地下4階の会議室で会議せなあかんのかと思ってヒヤヒヤしてましたわ。
男:そない嫌がんなや。ほんで地下4階やなくて地上33階の絶景の眺めの会議室な。
女:ああ、絶景ね。あべのハルカスがあんなにちっさく見えますもんね。
男:そらわりと遠いからな。
女:桜ノ宮のホテル街は?
男:見んなや。
女:生駒山は?
男:方角が反対ちゃうかったかな?ってかさ、なんでキミは大阪城を無視すんねん?
女:ああ、グランシャトーね。
男:それは大阪城ちゃうし!!
女:大阪城ホールのドームは下の方に見えてます。
男:そうそう、見えるよな。
女:あたしの下の方のドームも見えてます?
男:キミの下の方にはドームがあんのか?それは一体なんや?
女:そのドームのもっと上にはツインタワーもありますよ。
男:ツインタワー?すぐそこにあるツインタワーじゃなくて?キミのツインタワー?それってどんなんや?
女:真剣に聞きなはんなや。
男:マジで知りたいって思ったわ。
女:それはそうとマンさん。
男:あからさまに話変えやがったな…。
女:取りあえず今夜はオフィスでの会議とテレパスィ~の事は忘れましょうよ。
男:忘れたいけど忘れられへんねんて。
女:「忘れたいけど忘れられへんねん…」……一度でも言われてみたいもんでんなぁ。
男:いちいちやかましいな。前もそれに似たような感じで反応してたやん。憧れてんのか?
女:あたしの憧れは数がハンパなく多いですから。憧れ多き女と呼ばれてます。
男:そうなんかい。
女:その一言でっか?
男:あかんのか?
女:忘れたいんやったら、あたしと朝まで飲む勝負しまひょか?
男:勝負したいわけやないけど、飲むのはええかもな。
女:あたしはいつでもオーケーストアですよ。
男:オーケー牧場って言うんかと思って構えてたのに…。しかしなんかえらい自信あるみたいやん。
女:自信なかったら言えまへんがな。
男:わかった。やろやろう。
女:じゃあ、あたし特製のいちご練乳オクラ大根スムージーで勝負ね。
男:なんやその得体の知れん飲み物は。なんか気持ち悪そう。
女:スムージーにはなんと!ひまわりの種をトッピングしまっせ。
男:リスかよ。そんなトッピングもいらんし、そもそもスムージーって!
女:スムージーの整腸作用でお通じもスムージー♪
男:いやいや、オレはそんな目的やないねんて。飲むってゆーたら酒ちゃうんけ?
女:マンさん、お酒飲みたいんでっか?
男:あのな、キミ…。普通はなにか忘れたい時に飲むってのはお酒ちゃうか?スムージー飲んで忘れるって聞いたことないぞ?
女:あたしはスムージー飲んで便秘を忘れてますけどね。
男:便秘は忘れても屁は忘れへんやろ。
女:屁は無意識ですから。
男:それも怖いな…。
女:怖いですよ。あたしの屁はもう一人歩きしてます。あたしからは独立してますからね。
男:どんな屁なんか想像もつかんな…。
女:屁が独立したあとのあたしはもう抜け殻のようになったかと思いきや、どんどん屁を量産して屁の独立と抜け殻状態を繰り返しています。
男:キミも大変やな。どれぐらいの周期で繰り返してんの?
女:45分周期ぐらいですかね?
男:キミ、体調おかしいんちゃうか?
女:まぁあたしの隊長は確かにおかしいやつです。
男:隊長?なにゆーとる?
女:隊長……って、あたしのボスですよね?
男:ボスってなんや?意味わからん?どーゆーこと?
女:こっそりゆーときますけどあたしは……一応隊員ですので。
男:隊員って…。なんの隊員なん?
女:言わなあきまへんか?
男:そこまでゆーたんやから言えよ。
女:………やっぱり言えまへんわ。
男:なんやそれ。めっちゃ気になるやんけ。言わんのやったら、拷問するしかないな。
女:なにがあっても吐かへんのが隊員としての責務なんで、例え殺されようとも覚悟はできてます。
男:なかなか偉いな。よし、じゃあ今から拷問する。
女:あんまり痛くないようにお願いします。
男:それじゃあ拷問にならんやないか。痛いのは当たり前や。
女:拷問を恐れてるわけやないですが、あたしの所属は…
男:吐くんかーい。
女:『特殊機密グリーンベレースワットスペシャルローリングハイテンショングランドマキシム工作部隊』に所属してます。
男:長い名前やな…。
女:略して『特殊帯』です。
男:短いな…。あんなに長かったのに。ほんで“隊”が“帯”になっとるぞ?
女:連帯が大切ですから。
男:なんの連帯なんかようわからんけど。ほんでキミはその部隊の隊員なんか?
女:そーゆー事にしといてもええと思います。
男:そーゆーことなんやろがい。
女:あくまでボカシときたいんで。モザイクでもええですし。
男:いらん表現すな。
女:ちなみにあたしの隊員コードネームは『Pixel 8 Pro』です。
男:なんかスマホのGoogle Pixelみたいな名前やな。
女:6.7 インチの Super Actuaディスプレイで、Google Pixel史上最も明るい画面が自慢ですねん。
男:やっぱりGoogle Pixelやないかい!!
女:ちゃいますよ。よく勘違いされますけど。
男:勘違いどころちゃうやないか。
女:ケツに“Pro”って付いてるでしょ?これが付くと“殺しのライセンス”が与えられますねん。
男:今度は007のパクりかよ。殺しとかやってんのか?
女:めっそうもない。平和のための部隊ですから。
男:だって“殺しのライセンス”ってゆーてたやないか。
女:一応ね、一応。実際は“車はA級ライセンス~どーんちゃんどんとこーいなーんでもこぉ~い♪”ぐらいのもんです。
男:キミ…結構な歳いってるよな…。
女:それよりもマンさん、あたしがコードネーム『Pixel 8 Pro』の特殊帯の隊員って誰にもゆーたらあきまへんで。ほなさいなら‥…━━ε=ヘ(*`゚ω´)ノ
男:逃げるな逃げるな。拷問すんぞ。
女:もう吐いたから拷問せんでもよろしいですやん。
男:まぁキミの妄想に付き合ってあげてるんやけどな。
女:「付き合ってあげてるんやけどな」……言われたくないセリフですな。
男:今度は憧れのセリフとちゃうんかい。面倒やの。
女:だけど憧れの多い女ですけどね。何度もゆーの面倒ですけど。
男:いちいちやかましいな。ところで、その特殊な部隊で活動する時って、どこでなにしてんの?
女:いや~それこそ言えまへんわ。最高機密の中の端っこの情報になってまいますから。
男:そうなんや。だけど普段こうしてオレとこんな感じで喋ってるよな。
女:まぁそうですね。よくご存知で。
男:知らん方がおかしいやろ。じゃオレと喋ってる時以外はなにしてんの?
女:だから言えまへんて。
男:拷問するぞ。
女:例えば…
男:ゆーんかい。
女:時にはイランでペルシャ絨毯作りの職人をしてたり…
男:キミはペルシャ絨毯職人やったんか?
女:時には世界中でパリコレに出たり…
男:モデルも?
女:時にはイギリスのロイヤルファミリーのフィッシュアンドチップス・パーティーに出席してたり…
男:フィッシュアンドチップスはおかしいやろ。いや、ロイヤルファミリーのパーティーに出席もあり得へん。
女:時にはギリシアでザジキ、パスティツィオ、ムサカなどの料理を食べてたり…
男:いつの間にギリシアに行ってメシ食っとんねん。
女:スパナコピタ、ギロ、スブラキも追加ね。
男:どんだけ食うねん。
女:時には江ノ島で海鮮丼食べたあとに歩き回って足がつって立往生してもーたり…
男:いきなり現実に戻ったな。まるで誰かさんのツーリング記事みたいやな。
女:はて(・・?…それは一体誰の事でっしゃろかいな?
男:いや、それはええ。
女:だけどこの事は絶対に誰にも言わんといてくださいね。
男:ゆーかい。オレがアホやと思われるわ。
女:もしゆーたらあたしも「こいつアホやわ(*‘∀‘)」ってゆーときますから。
男:うんうん、頼むわな……って、アホか!!
女:結局あたしがアホ扱いされてますがな。
男:すまん。アホっちゅーより、重い妄想癖のある年齢性別不詳の関西人ってとこやな。
女:テレパスィ~も追加しといてくださいね。
男:やかましいわ。昨日も会話してるし、今日はもう撤収しような。
女:あらま。そうでっか。じゃああたしは特殊任務に戻りますね。
男:勝手にせーや。次はどこでなにすんねん?
女:北京で北京ダック食べます。
男:グルメ旅行か!
女:もしかして横浜中華街に変更になるかもですけど。
男:急にショボく…いや、ショボいなんてゆーたらあかんがな。なんか感覚がおかしくなってきた。
女:前からおかしいですやん( ´,_ゝ`)プッ
男:キミに言われたら人間として終わりや。じゃ、また今度な(。・ω・)ノ゙
女:はいはい。また。ほなね~♪

終わり