男女の会話17
「裏・浦島太郎物語」


男:こんばんは。男です。
女:こんばんは。玉手箱 明美(たまてばこ あけみ)です。開けてもええでっか?
男:誰やねんキミ。なんで玉手箱なん?開けたいんか?
女:名前からして開けたがりの開けたガールでしょ?
男:開けたガールとかゆーな。さっきからなんの話をしとんねん?
女:あたしが今考えてる物語の登場人物なんですよ。
男:物語?登場人物?玉手箱が?
女:玉手箱やないです。玉手箱明美です。
男:いちいち面倒やな…。で、その物語ってどんな物語なん?登場人物からして、なんとなく想像できそうな気がするんやけど。
女:えーっと、物語のタイトルは『裏・浦島太郎物語』です。
男:やっぱりな…って思えるんか、そうでもないのか…微妙なタイトルやな。ちょっと聞いてええか?
女:なんでっか?
男:浦島太郎って、あの浦島太郎か?
女:どの?
男:だから、あの昔話の浦島太郎なんやろ?
女:あの?
男:いちいちイライラするなぁ…。ほら、いじめられてる亀を助けて…
女:そうですよ。その物語の裏の物語ですよ。
男:そうなんかい。はよそう言えよ。
女:じらし作戦です。
男:今オレを相手にそんな作戦してなんの意味があんねん?
女:まったくないです。
男:ないんかーい。だったらすなすな。
女:ほんでですね、マンさん。
男:ほっぱらかしかい。
女:あたしが考えてる物語『裏・浦島太郎物語』がどんなんか知りたい?
男:え?いや~別に。興味ないな。
女:興味ないですと?そうですか。じゃ、小出しにして少しずつ興味を持たせたろっかい!
男:なんやその言い方。奥歯がたがた言わせ節っぽいぞ。
女:マンさんのケツから指入れたくないですから。
男:そらそーやろなとは思うけど、そこまでキッパリ言われるのもちょっとな…。
女:わかりました。じゃあ長手袋して…
男:もうええって。
女:で、小出しにしてもええでっか?
男:まぁそんなにやりたいんやったら、勝手にやってみたら?
女:じゃ始めます。
男:はいはい。
女:昔昔あるところに、浦島太郎という子どもが…
男:ちょっと待って。
女:なんでっか?
男:浦島太郎って、子どもなん?
女:そうです。まだ子どもです。小学4年生ぐらいの。
男:小学生なん?時代設定どうなってんねん?
女:あたしが小学生ぐらいですかね?
男:なんや?昔昔とかゆーてたけど、最近やんけ。
女:あらま。そんなにあたしが若いって言いたいんでっか?
男:いや、そうやなくて。
女:ってゆーか、さっきから話が進みまへんねんけど。
男:ああすまん。どうぞ。
女:ある夏の日、浦島太郎という小学4年生ぐらいの子どもが海岸を歩いてたんですよ。
男:海岸ね。はいはい。
女:そしたらですね、でっかいウミガメがサンオイル塗って寝てたんですよ。
男:なんでウミガメがサンオイル塗って寝てるん?なにしてんの?
女:知りまへんがな。甲羅干しでもしてたんちゃいます?
男:なんか設定が妙やな…。でっかいウミガメがサンオイル塗って甲羅干ししてたと。
女:はい。海岸…ビーチでええか。
男:言い直してるし。夏のビーチやな?人多いんちゃうの?
女:あたし人多いの好きやないから。
男:それ関係ないやろ?キミの好き嫌いを物語に入れてええんか?
女:自由ですやん。
男:自由なんはええけど、キミの物語は自由過ぎておかしくなっとるんちゃうか?
女:まだ冒頭やのにおかしくなってるとか…。イチャモン付けてますよね?
男:そんなつもりやないけど。
女:じゃつづけます。浦島太郎がそのウミガメのそばを通り過ぎようとしてたら、ウミガメが声をかけてきました。
男:ウミガメが?浦島太郎に?そのウミガメ、喋れるん?
女:サンオイル塗ってるぐらいですからね。人間並みの知能は持ってるんでしょうなぁ。
男:なんかちょっと不気味に思えてきたぞ、そのウミガメ…。で、なんて声かけてきたん?
女:これから言いますがな。ウミガメはこんな事ゆーてきました。「ちょっと背中にまんべんなくオイル塗りたいんやけど、手が届かんのよ。悪いけどオイル塗ってくれへん?」
男:めっちゃ人間ぽいウミガメやな。ほんでそのウミガメは男?それとも女?
女:なんでそう先を知りたがるんでっか?マンさんの質問に答えてるとネタバレの嵐になって読者さんからクレーム来ますがな。
男:読者さんって、この物語まだ世に出てへんやろ。キミが考えてる最中やん。
女:いつか世に出るかも知れまへんでしょ。
男:出るか~?
女:さっきから邪魔ばっかりしてますやん。
男:だまって聞いとこうと思ってるんやけど、あまりにもツッコみどころが多すぎて。
女:そらマンさん、幸せ者ですやん。
男:そうか?オレって幸せ者なんか?
女:浦島太郎は、ウミガメに背中にオイルを塗ってあげました。
男:オレはほっぱらかしかい!
女:そしたらウミガメが「ありがとね~❣でも、ビキニに指引っ掛けんとってね~」
男:女やん!そのウミガメ、女やん!
女:やかましいでんな。だまって聞いててください。浦島太郎は「バレた?」とニヤニヤしながら言いました。
男:小学生のクセにませたガキやの。
女:ウミガメが言いました。「さっきからバレてるって。大人をバカにしてたら竜宮城に連れて行ってまうで~」
男:なんや、竜宮城に連れて行ってもらうのって、悪いことなんか?
女:最悪の展開ですわ。あたしやったら絶対に行きまへん。
男:そうなん?なんかいつもの浦島太郎とは全然違うなぁ…って、さっきから違うことばっかりか。
女:違うからおもろいんですやん。
男:うーん…そうなんかな。
女:えっと…どこまで言いましたっけ?
男:ウミガメが浦島太郎に、竜宮城に連れて行くぞって脅してた。
女:ああ、そうでしたね。で、ウミガメは浦島太郎を竜宮城へ連れて行ってしまいます。
男:え?脅しただけやなくて、もう連れて行ったん?
女:そうです。このウミガメは容赦ない性格でしたからね。
男:そうなんや。初めて知ったわ。
女:初めて言いましたからね。で、浦島太郎をどうやって竜宮城に連れて行ったんか、知りたい?
男:んー…まぁ聞いといた方がええかな?ってか、その前にもう一つ聞きたいねんけど。
女:欲張りさんでんなぁ。なんでっか?
男:竜宮城ってどこにあんの?
女:まぁ!いきなりそんな事聞く?
男:え?え?なに?聞いたらあかんことやったん?
女:富士山のどっかです。
男:即答かい。ほんで海の中ちゃうんか?
女:ちゃいます。標高が高い場所です。
男:マジかい…ことごとく意表を突いてくるな。いやちょっと待てよ?ウミガメやろ?海の生き物やろ?どうやって富士山の…標高の高いとこまで浦島太郎を連れて行けんねん?
女:もしかしてマンさん、浦島太郎はウミガメの背中に乗って竜宮城に行ったと思ってはるんでっか?
男:やっぱり違うんか?
女:ちゃいます。少なくともあたしの頭の中では。
男:キミの頭の中はまるっきり想像できんわ。
女:あたしも。
男:どないやねん?それ。
女:ウミガメは、ミニバンで連れて行ったんです。
男:……ミニバン……え?ミニバンって、車?
女:当たり前ですやん。ミニ四駆とでも思ってました?
男:思うかい!しかし車って…どういうことやねん?
女:どういう事って、考えられるのは一つしかないですやん。ウミガメは竜宮城からミニバンに乗ってその海岸…ビーチに来てたんです。
男:なにしに?
女:マンさん、大丈夫でっか?今までの話聞いてました?
男:あ、ああ。えーっと、甲羅干ししに来てたんやな。
女:そうです。しかもちゃーんとサンオイルまで用意して。甲羅干しする気満々ですよ。
男:理解しがたい展開やな…。
女:その上、グラサンもしてましたからね~。
男:聞いてへんぞ、そこまでは!
女:ゆーてまへんからね。だってあらすじをゆーてるだけですから。
男:これってあらすじやったん?
女:当たり前ですやん。ホンマの内容は、ちゃんと本で読んでくださいよ。
男:本になってへんやろが。
女:それはまだね(^_-)-☆
男:ならんやろうけど。
女:とにかくあらすじゆーてますんで、細かい部分は省略させてもろてます。
男:ふん。省略ね。サングラスかけたウミガメ…まぁええ。その通りに想像しておく。
女:ウミガメはミニバンに浦島太郎を乗せ、標高の高い富士山のどっかにある竜宮城へ連れて行きました。
男:うん、そういうことやな。で、玉手箱を受け取って…
女:あきまへんて。まだ早い。
男:早いんか?
女:早いですよ。この竜宮城でも色んな出来事があるんですから。
男:そうなんや。それは大変やな。どんな出来事なん?
女:うーんと…それもあらすじとしてここでゆーときたいとこですけど、ちょっとそろそろあたし、お夕飯の支度が終盤を迎えてますので。
男:え?ここで終わり?しかもキミ、夕飯の支度中やったん?
女:支度の真っ最中でした。腕まくりしてますもん。エプロンもしてるし。
男:見えへんから。
女:というわけで、今日はここまでですかね。
男:マジかい。じゃつづきは今度?
女:つづきが知りたければ。
男:じゃええか。
女:知りたいでしょ?知りたいんでしょ?あたしは知ってます。
男:そらキミは知ってるやろ。キミが考えた物語やねんから。
女:いや、マンさんが知りたがってるって事を知ってるってゆーてますねん。
男:わかってへんやないか。まぁええ。今度このつづきを聞かせてくれ。
女:えー?しゃーないですねぇ。わかりました。
男:シバいたろか。
女:本になったらマンさんに最初に買ってもらいますわ。
男:売るんかい!タダでくれるやろ、普通。
女:ま、その交渉もまた後日って事で。
男:腹立つわ~。じゃ、今日は撤収やな。
女:はい、今日はこれで。あたしはお夕飯タイムに突入しますんで。
男:わかった。ゆっくり食ってくれ。
女:いや、さっさと食べてゆっくりカフェ&スイーツタイムを楽しみたい。
男:勝手にせーや!じゃ、また今度な!!
女:はいは~い。ほなね~♪

つづく