朝、家族がそれぞれ仕事と学校と幼稚園に行った後、布団を片付けながら涙が出てきた。
「、、、こんな、こんなことをするために・・・生まれてきたわけじゃないっ!」
気づけば泣きながら勝手に言葉が溢れていた。
(自分でもそんなこと感じてたんだとびっくりだ!)
このままでは生活が出来なくなってしまう。
経済的に自立できるよう、もう一度仕事を始めなければっ。
夫の希望通り専業主婦になってしまい、友人はおろか知人すらいないこの土地でどうやって始める?
今度仕事にするとしたら何をやりたい?と自分に問う。
自分の気持ち(目指す方向ややりたいこと)に正直に、アンテナを立てて待ち構えている感じをキープ。
で、やってきたチャンスをゲットしよう。
「幸運の女神は前髪しかない。」と教えてくれたのは大学の先生だったなぁ。
数日後、新聞をめくっていると、ある女性の記事が目に入った。
彼女は働く女性を応援する人だ。Kさんという。
うん、この人に会う必要がある。
直感がささやく。
すぐに連絡先を調べて電話し、事務所にお邪魔した。
その日のうちにノートPCを持参出来て、ワープロやExcelが使える私は、事務所を手伝うこととなった。
駐車場代だけは払ってもらうことにしたが、無報酬だ。
その事務所で色々な職業の方と出会った。
弁護士、行政書士、税理士、社労士そして相談者。
Rちゃんと知り合うきっかけになった絵画モデル事務所の社長さん。
会社員の方もいる。
モデルの方とはマドンナの写真集を見ながら筋肉談義をしたり、
社労士の先生から、もう引退するから事務所と職員3人まとめてあげると言われて断ったり。(笑)
弁護士ってかっこいいでしょ?でも来るのは問題を抱えた人ばかりだよ、と現実を見せられたり。
狭い世間しか知らなかった私にとっては、すこし広い世の中を知る場となった。
そんな中、素敵な税理士の先生に憧れて一念発起!
通信教育で簿記3級から開始した。
秘書検定も2級まで取得!
そんな日々を過ごしながら、ママ友たちと幼稚園バスを見送る。
さぁ、今日も事務所に行くぞーっと思ったら、ママ友たちに色々と聞かれる。
通勤に最初は自転車で頑張ったが、タイトスカートが無理で車に変えたと話すと
「いいわねー、車を持っていて。うちなんて夫が薄給だから車も買えないしー。」
話を聞いていると旦那さんのお給料が少ないからこんな生活をしなければならないと不満を抱えている様子。
ならば自分も働けばよいではないか?と素朴な疑問を口にすると、
今度は自分には何のスキルも能力もなく、子供も小さいから無理だという。
あー、なるほど。
考え方の土台、ベースが全然違うんだ。
この人たちは、不幸になるべくしてなっている。
頑張って働いている旦那様に感謝することだってできるのに。
人ってその人の考え方次第なんだ。
現象として起こってくる現実はその考え方、言動の結果として現れるということがわかった。
それからもコツコツと学び続け、次は簿記2級に挑戦だ!
テキストを開いている途中、震える声でKさんから電話がかかってきた。
Iさんが私に会いたいと、うちの会社で働かないかと言っているそう。
「1週間前夢でみたの。あなたを乗せて私が運転する車がビルの前を通りかかったときに、『ここで働いているんだ』ってあなたが私に言ったの。Iさんの勤務先のビルよ!信じられない。何で私が他人の身に起こることを正夢で見るの!」
驚きすぎて声も出ない。
ちょうどTVでは、トリッピーとしまじろうが正夢の話をしているではないか!
まるでスローモーションのように世界が見える。
時の流れがものすごくゆっくりになった、その流れの中に自分がいる。
2週間後、まずは週3日から、時間も幼稚園の送り迎えに間にあうようにしてもらって働き始めた。
一年ぶりくらいで仕事を再開したが、やはり楽しい!
経済的にもすこし楽になった。
そして多分この頃が一番スピ的能力を発揮していた気がする。
まず、気になる人にはリンクを貼れることを発見。
たぶんできる人が他にもいると思うんだけど、気になる人がどこで何をしているかが分かってしまうってこと。
例えば、夫がどのタイミングでバスから降りて、今どのあたりを歩いていて、どのタイミングで自宅のドアを開けるかが分かる。
「おかえりー♪」と先にドアを開けたら、驚いて固まる夫。
気持ち悪いと言われてしまった。(えー、喜んでもらおうと思っただけなのにー。)
そして、スクラッチのくじはどこを削ればよいか分かってしまう。
手をかざすと、わかるんだよね。
ビリビリってくるっていうか、なんというか。
マックのハッピーセットについていたくじ、子供たちに喜んでもらいたくて当てまくっていたら夫に宝くじ売り場に連行された。
これには本当に傷ついた。
楽しく過ごすため、誰かを喜ばせたくて使いたいのに。
生活費渡さないのに、宝くじを当てさせるために私を利用しようだなんて。
私のこと、気持ち悪いって言ったよねぇ?
すっかり嫌になって、この能力でいろいろと楽しい実験をすることを止めてしまった。
そして、その夜は泣きながら祈った。
能天気な私にしては本気モードだ。
守護霊たちを叱り飛ばす余裕もなく泣きながら寝入ってしまった。
この世界に私の本当のパートナーはいないのですか?
地球上にもしいるなら会わせてほしい。
夢をみた。
真っ白な大聖堂?
5人の中性的な大柄な人が等間隔に並んで立っている。
古代ギリシャの人たちのような白い布をまとったような服装だ。
左から2人目の人が、私をしっかりハグしてくれた。
とたんにハートとハートが繋がって癒されていく。
じんわりと心が温かくなり、私はすっかり安心してパチッと心地よく目が覚めた。
さっきまで大聖堂にいたのに布団の中だ。
あー、もう大丈夫だ。そう思った。
でも、それだけでは終わらなかった。
さらに数か月後。
気が付くとすぐ目の前は白い天井だった。
なんで?
なんで、こんなに近くに天井があるの?
ふと下を見ると自分の体があった。
あー、私、体から出ちゃってる。
カチャカチャと医療器具の音や、看護師さんたちの話し声も聞こえてくる。
このまま〇ぬんだな。
と思ったとたんに、走馬灯のようにこれまでの人生が思い出された。
(〇ぬ間際に走馬灯のように思い出すというのは本当でした!)
子供たちは?
しっかり育てた。後悔はない。私がいなくても大丈夫だ。
やり残したことは?
いつも夫の言いなりだった。家族のためにと自分のことを後回しにした。
やりたいことも我慢した。
特に仕事!思い切り取り組んでみたかった。
ああ!
私は自分の人生を生きてこなかった!
このままじゃ、〇んでも〇にきれない!
大きな後悔に胸を焼かれる。
瞬間、体に戻っていた。
その年の12月30日、個人事業主として開業届を出しに法務局の前に私はいた。