付喪神になっているという香炉。

両手で包み込むように持ちながら彼女が言う。

 

「こうやって持ってほしいって。」

掃除するときに私がひょいと持ち上げるとき、実はくすぐったくてたまらないと言っているそうな。
そっか、すまぬ。

 

「それから、仏壇に置かれるのは嫌だって。玄関に置いてほしいって言ってるよ。」

あらまぁ。

 

玄関では毎朝乳香を焚いている。

すっきりさっぱり浄化効果があるんで。

そっかぁ。羨ましかったんだな。

 

そんなに仏壇の前が嫌だったんだ。

ふと仏壇を見やると・・・気配がない。

首をかしげる私に彼女が

「ね、空気感ぜんぜん違うよね。」

「じゃあ、この仏壇にものすごーく違和感があって、夜中にガタガタ鳴ったりしてたのは・・・この子!?」

「仏壇の前がすっごく嫌で、なんとか気づいてもらおうとしてたみたい。」

「はぁ。」

「今日、私呼ばれたのかな。この子に。」

可愛いー♡ってつぶやきながら、付喪神の香炉をなでている。
「ほらほら、しっぽ振ってる。」

・・・残念ながら、そこまでは私には視えません。