いつも素気無いそぶりで珈琲を淹れて
カップはふたつ並べてる
まるでルーティンのように
玄関に置かれた踵の潰れた靴を直す
僕が今何をしてるなんて
きっと君にはどうでもいいことなんだろう
夜の雨は長くて降りてくる一粒一粒が
ただいまとおかえりを繰り返し囁く
少し煩くてとても心地良い
なんて言ったら君は怒るかな
季節が昨日よりも少し冷気を帯びるたび
嬉しそうに目を細めて
丸く小さくなっている僕に
退屈なのは貴方が見ていないからだよと
この上ない説得力のあるトーンで
立ち昇る湯気に揺らぐ唇で笑う
そして素気無いそぶりで扉を押さえて
僕の準備が整うのを今は待っている
しばらく袖を通していなかった外套を羽織り
君の腕をくぐりながら
その向こうに踏み出そうとするなか
そよ風のような
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で
君が言った
どこに住もうと君の自由だけれども
ここにいてくれたら嬉しい