キラキラ光るたからもの。
宇宙人が空から落としたマラカイトグリーンの宝石。
寝る時だって胸のポケットにしっかり仕舞って、出かける時はいつでもどこにでも持って行った。
大人になったら一番好きな人にあげるんだって、決めてた。
大きくなって、料理も洗濯も、仕事もできる様になった。
いまでもあのキラキラの宝石は毎日肌身離さず持っている。
でもね、ある日の朝、消えてしまったの。
お母さんに聞いても、お姉ちゃんに聞いても、友達に聞いても、
あんたそんな石もってなかったよ、って言う。
キラキラは、どこに行ったんだろう。
空と海は、夜になったら繋がって、
海が空になったり、空が海になったりするんだよ。
友達が笑った。
海は海だよ、空は空だよ。
私は驚いた。
だって小さい頃からそう思っていたし、夜の海に何度も行って確かめたのに。
友達が、笑った。
信じているからね、愛しているよ。
何度も何度も恋人が口にした言葉を心から信じていた。
同じ口から想像する事さえできなかったあの言葉が出てきてしまってからも。
心の中で小さく光ったキラキラはあなたの言葉で生まれたけれど、
私の中で育ったのだもの。
マラカイトグリーンの宝石は、どうやら飲み込んでしまったようだ。
そう言ったら、また友達が笑った。
永く永く守ってきた、信じてきたものがもしも偽りや虚構だったとしても、
その事になんの意味があるだろう。
対称は無くなれど、心は無くならない。
君が信じてきたものは、なんであれ君の心にキラキラ光った欠片を生み出す。
育てて行くのは自由だよ。
そしてそれはなによりも素晴らしいものになるから。