納棺夫日記 読後所感 | 道標を探して

道標を探して

 ただ、そこに進んでみたい道がある。
 仰いで見たい空がある。
 踏んでみたい土がある。
 嗅いで見たい風がある。
 会ってみたい、人がいる。

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著者青木新門が、納棺師として働く中で感じた死生観をまとめた一冊。


この本を読んだ理由は、二年経って3月11日の震災が人々の意識から薄れ始めているような気がしてきたからだ。

災害に遭った人たちはこの震災を忘れない。というか、忘れることができない。かけがえのない様々な宝を様々な形で失った。

被災地はインフラ、記憶などの整理を今になってやっと何とかすることができるようになってきたと、テレビを通して見る俺は感じる。

二年経って、やっと目に見える禍々しいものの大半が片付いた。おそらく、今年の3月11日を境にして、被災地では本当の復興がゆっくりと始まっていくだろう。

そこではおそらく、被災地の人々は精神面で死の覚悟を経て、生の未来を見ていく覚悟を強いられる。

ならば、そんな過酷な環境でひとつながりの終わりと始まりを体験するだろう被災者との視点の差をどうすれば埋められるだろうかと考え、結局いつも通り読書に頼ることになってしまった。


本書は著者によって自身の日記を加筆訂正したもので、延々と人の死や自分の携わる仕事の中で起こる出来事を端的にまとめている。



読んだあとの感想としては

人の死を新しい視点で見つめることに役立ち、元から思っていた「死は決して汚いもの、穢れたものではない」という考えを補強するものとなった。

読む前から先入観を与えるのは嫌なので多くは語らないが、死の概念から遠く離れた現代の人には一度呼んで欲しい。






一言
風呂上がり、パンツ一丁の俺「……寒いな」