過去のことを少し書いてみる。

忘れたいけど記憶は鮮明だ。


彼のことが頭から離れず毎日憂鬱だった。

当時の仕事は朝早い分、夕方には終わることが多かった。

だから夜のバイト(融通が利くキャバクラ)でもしようかと考えた。

どうせ夜は眠れないし彼のことを考える時間が

少しでもなくなると思ったから…。

半分ヤケになっていたこともある。


でも自分でお店を探そうにもどこがいいのかわからなくて

キャッチされていいところがあればそこに決めることにした。

仕事帰り、よくキャッチされる場所を歩いてみた。

でも話しかけられてもなんだかどこもピンと来なくて

その日はもう帰ろうとしたときだった。


「お姉さんお姉さん、キャバクラやんない!?」

人ごみの中からかなり大きい甲高い声で呼び止められた。

振り向くと短髪で細身の男の人がにこにこして立っていた。

なんとなくその人につられて「時給いくら?」と聞いてみた。


すると「ちょっとこっちおいで」って慣れた様子で

人ごみの邪魔にならないとこで話してくれた。

「いまから面接しにいかない?」って誘われて

軽い気持ちでついて行った。


不思議と怖いとは思わなかった。

なんとなくこの人は大丈夫、とわかっていた。


お店までの道のり、話していたら

彼はなんと私より一つ年下で驚いた、年上だと思ったから。

彼も私が年下だと思っていたらしく驚いていた。

キャッチという仕事柄か終始「かわいいね」と褒めてくれた。


最初はテンションが高かった彼。

でもお店に近づいてきたら急に口数が減ってきた。

「着いたよ、ここ!」と案内された建物には

ネオンライトの看板でピンクサロンと書かれていた。

場所を聞いたとき、もしかして…?と頭をよぎったけど

その予感は当たっていた。


キャバクラなんて嘘だった。

案内してくれた彼はすぐにいなくなっていたし。

まぁここまでついてきてしまったし

適当に話を聞いて帰ろうと思った。