「毎日草や花に話しかけていたら、ちゃんと答えてくれるようになったんだ。」
一度箱から取り出されたお野菜たちは、また薄暗くて今度はひんやりした倉庫のようなところに入れられました。
「ここは一体どこでゴザルかなあ。」「なんだか寒いわ。」「コカブー、バブバブ」
「お肌が乾燥するわ。」「我々の今後の運命はと。」
みんなが口々に話していると、外から足音が近づいてきました。
「しっ、誰か来るわ。」
息を止めて、お野菜たちに緊張が走ります。
そうっと天井が開いて、光が差し込んだかと思うと、男の子が目をきょろきょろさせて中を覗いて言いました。
「ねぇ、なかに誰かいるの?あっ、お野菜だ。ねぇ君たちどこから来たの?何お話していたの?」
「なんじゃコイツは、野菜の言葉がわかるのか?」
チンゲン斎の疑問をエビイ門が勇気を持って問いかけました。
「お主は人間なのに、野菜の言葉がわかるのでゴザルか?」
「うん、ぼく友達がいなくて、毎日草や花に話しかけていたら、ちゃんと答えてくれるようになったんだ。」
「そうなの、私たちも草や花とおんなじ植物だものね。不思議はないわ。」
ひの菜ちゃんの言葉にみんな納得して、空気が和んで口々に自己紹介を始めました。
男の子の名前はコウジ。コウちゃんです。コウちゃんにはケンちゃんと呼ばれるお兄ちゃんのケンイチがいます。
わんぱくで活動的なケンちゃんは内気なコウちゃんと遊んでくれないそうです。
ママが何が食べたいかと聞くと、決まってお兄ちゃんのケンちゃんが
「ぼく、ハンバーグ。」と答えます。そして「うめぇー、うめぇー。」とぺろりと平らげます。
「お野菜嫌い。」と言って、肉類ばかり食べるので、ケンちゃんのお腹はポッコリ出ています。
ママは仕事で忙しいことや、あまりコウちゃんに構ってくれないことを寂しげに話しました。
そして、ママは料理が得意でないのか、毎晩同じようなメニューのようでした。
次の日ママは大根マンだけを取り出していきました。
コウちゃんに聞くと、半分だけ切って大根おろしにして、
ポン酢をかけてハンバーグに付けて食べてそうです。
あとの半分はラップに巻かれて冷蔵庫の上の部屋にしまわれたようです。
毎日いろんな話をしているうちに、コウちゃんとお野菜たちはすっかり仲良しになりました。
ところがある日、小松菜ばあさんの元気がないことにチンゲン斎が気づきました。
つづく