ナースの親指
ナースになってから、
点滴の滴下を調節する 「クレンメ」 という部分を
日に何十回となく上げたりずらしたりしている。
おかげで 親指の第一関節の内側はガサガサ
そのうち、そこだけ皮膚が厚く、硬く、
ガテン系のたくましさを帯びてくる ![]()
以前 ある介護タクシーの方(ウィルグループではありません)が
患者さんをお迎えに来られました。
持続点滴をしている患者さまだったので
「車に乗った時、点滴が落ちているかどうかだけ
見て下さいね」
と伝えたところ、
「私は運転手なので、それはできませんよ!」
と焦って、苦笑いされてしまった。
「いや、そうじゃなくて、車に乗せた時のことです。
走っている時に出来ない事はわかっています。
乗せたときに点滴が落ちているかどうか、それだけ
確認していただければいいんです。」
怪訝そうに 「あ はぃ・・・」 と無理ムリ返事していた。
そんな事いわれたのは初めてだったのだろう。
でもあなた 荷物運んでるわけじゃないでしょ![]()
点滴が落ちなくなるってどういうことかわかってるの![]()
そんなこと自分の仕事に関係ないと思ってるのなら
そんな仕事辞めちゃいなさいよ![]()
![]()
と、心の中で突っ込みながら
にこやかに 「お願いしま~す
」 とお見送りしました。
ターミナル期の外出
その女性は、ガン末期 だった。
足のしびれがあり、腰から下が思うように動かない。
それでも 「歩けるようになりたい」 と、一生懸命リハビリに
励んでいた。
ご自身の病状についても理解していた。
まだ車椅子で動けていた頃、私からこう質問したことがある。
「今 一番したい事は なんですか?」
すると意外な応えが返ってきた
「主人に ご飯を作ってあげたいです」
70歳代のご主人との二人暮らしだった。
ほとんど毎日、ご主人は面会に見えていた。
「主人の事が心配なんです」
彼女は、これまで他院への受診のため出かけることは
あったが、一時帰宅のための外出は一度もなかった。
「介護タクシーなど、
お付き添いもできるサービスがあるんですよ~」
それとなく勧めてみたが、結局実現することはなかった。
病棟ナースという立場上、自分が病棟の患者さまに
付き添って、介護タクシーに乗ることは難しかった。
だから、話を具体的にしたり、特定の業者さんを紹介
することは、躊躇された。
最終的には、本人やご家族が決めることだ、そう自分を
納得させ、話はそれきりになってしまった。
その方が亡くなってから、もう半年経つ。
ご本人の最期の望みを叶えることなく、急激に状態は
悪くなってしまった。
今だに強い後悔の気持ちが私の心に押し寄せてくる。
あの時、もっと強引に勧めればよかった。
自分の立場なんて関係ない
「自分が付き添うからすぐ帰ろう」ってどうして言えなかった
のか、強く後悔している。
ガンの末期で、ターミナルステージに入っている場合、
旅行や一時帰宅など、気持ちと身体がGOサインを
出す期間というのは、とても短い。
そのタイミングを逃すと、そうしたくても出来ない段階に
入ってしまう。当然ほとんどの方がそういった事態に直面
した経験もないので、「どうしよう」 と迷っているうちに、
その大事な期間を逃してしまうことが多い。
私たち医療者は、もっと伝えなければいけない。
『 今しかない 』 ということを!
この大事なメッセージを、その患者さまから教えていただいた。
つらく、重い メッセージだったが、
私のひとつの指針となっている。








