自転車で学校に向かう。
いつもと変わらない風景だ。
ただ、昨日から”吹奏楽部"という単語が頭の中に渦巻いている。
今まで音楽には縁の無い人生を送っていた。
流行の曲は人並みに聴いていたが、自分が演奏するなんて考えもしなかった。
ましてや吹奏楽部と言われても、どんな音楽を演奏するかも知らない。
俺が知っている吹奏楽部と言えば、甲子園で野球応援をしている事くらい。
ただ、北川先輩の存在が気になる。
下心という訳ではないが、思い返すと可愛かった。単純に可愛かった。
今まで男だらけの中で野球に打ち込んできたから、女子と絡む事なんてほとんどなかった。
(あんなに可愛い人と一緒に部活をするのも悪くないかぁ。。。)
でも、そんな理由だけで、今までやった事もない吹奏楽部に入部するのは、無謀と感じていた。
(やっぱり吹奏楽部は無理だ。)
俺はペダルを強く漕いだ。
クラスにつくと相変わらず賑やかだった。
授業が淡々と進み、昼休みになった。ぼんやり外を眺めていた。
「おーい!結城!」
大声で声を掛けてきたのは、入学式の時から妙に絡んでくる三島真治だ。
「なぁ、部活何やるか決めたか?」
「いや、まだ決めてないよ。どこにも入部しない気なんだけど、親が部活はやれっていうから悩んでる。」
「やっぱりさぁ、高校生といえば青春だよな!青春と言えば部活動!部活なにやろうかなぁ。」
「三島は中学時代なにか部活やってなかったのか?」
「ん?俺?帰宅部だったよ!って言うか、三島って言うのやめろよ。真治って呼んでくれ。」
(別にどうでもいい気がするが、、、。)
「そういえば、結城は中学時代は野球部だったんだろ?野球部には入らないのか?」
「うん、入らないよ。もう、野球は出来ないんだ。」
「え?なんで?怪我でもしてんのか?」
「まぁ、それはいいじゃないか。」
そう言うと、真治は申し訳なさそうな顔をした。悪い事を聞いたと感じたのだろうか。
なんだが空気が悪くなってきた。俺はふと黒板を見た。生徒会のメンバー募集の貼紙が見えた。
「あー、真治。お前、生徒会のメンバーになったらどうだ?お前が最高に青春出来るのは、案外生徒会かもよ。」
適当な事を言って、早くこの場から立ち去ろうと思った。
「生徒会かぁ、、、。悪くないかも。。。俺が汐川高校の生徒会長になって、歴史を作る。悪くないかも!」
単純なヤツだ。頭の中で妄想している真治を置いて、俺は渡り廊下に向かった。
海風が気持ちいい。この渡り廊下が俺は気に入った。
海を眺めているだけでも良い。そんな高校生活でも良いかも知れない。
でも、心は満たされていない。入学してから今日まで、本当にこれで良いのか。
モヤモヤした心持ちだ。
俺は何がしたいのだろうか。ずっと自問自答している。
「あっ。結城くんだ!」
呼ぶ声が聞こえた。振り返ると北川先輩が立っていた。
「北川先輩、こんにちは。」
「どうしたの、こんなところで。」
「別に何も無いんですけど、ここが好きで。」
俺は恥ずかしさからか、北川先輩の顔が見れなかった。
「昨日は、ありがとう!助かったよ。」
「いえ、大丈夫ですよ。気にしないでください。」
チラッと顔を見た。やっぱり可愛い。モテるんだろうなぁ。
北川先輩はしばらく黙った。
「ねぇ、今日の放課後、吹奏楽部に見学に来ない?」
「見学ですか?でも俺、入部するかまだ決めてないですけど。」
「いいのいいの!吹奏楽部を知ってもらえるだけで嬉しいんだ!」
北川先輩は満面の笑みでそう言った。本当に吹奏楽部が好きなんだろうな。
いいな、打ち込めるものがあるって。
「じゃぁ、少しだけなら、、、。」
「本当!?じゃぁ放課後、音楽室で待ってるから!」
そう言って、北川先輩はB棟へ走って行った。
(勢いで見学するって言ったけど、大丈夫かな。強制的に入部させられたらどうしよう。)
放課後、俺は音楽室へ向かった。
途中、真治がどこに行くのか執拗に聞いて来たが、付いて来られると面倒になりそうだから、追い払った。
真治には悪い事したな。
しかし、1人で行きたかった。自分の目でじっくり見たかった。吹奏楽部を。
音楽室の前に着いた。
中から楽器の音が聞こえる。たくさんの音が聞こえる。どの音がどの楽器かは全く分からない。
しばらく中から聞こえてくる音を聞いていると、北川先輩が音楽室から出て来た。
「結城くん、待ってたよ!さぁ、入って!」
「はい、、、お邪魔します。」
恐る恐る音楽室に入った。20人くらいはいるだろうか。結構多いんだ、吹奏楽部って。
それに見た事もない楽器ばかりだ。
みんな練習に没頭しているのか、俺が入って来た事に誰も気が付いていない様だ。
北川先輩は音楽室の隅に俺を誘導した。
「結城くん、楽譜読めないんだよね?」
「えぇ、全く読めないですし、楽器なんてやった事ないですから。」
そう答えると、北川先輩は得意げな顔になり。
「昨日も言ったけど、打楽器やってみない?打楽器ならそんなに楽譜難しくないし、初心者でも出来るよ!」
そう言って、音楽室の隅にある、もう一部屋のドアを開けた。
部屋に入ると、広さは教室くらいだった。結構広い。
「この部屋はね、汐川高校吹奏楽部の自慢、打楽器練習室。防音室なんだ!珍しいんだよ、学校に防音室があるのって。」
防音室と言われても、ピンと来なかった。
北川先輩は続けた。
「打楽器って音が凄い大きいから、近所から苦情が来るんだよ。だから校長先生が作ってくれたんだよ!」
「でも、防音室作るのって、凄いお金掛かるんじゃないですか?よく作ってもらえましたね。」
北川先輩は待ってましたと言わんばかりに。
「そう、凄いお金掛かるんだよ。でも、我が吹奏楽部には素晴らしい打楽器奏者がいるの!」
そういって、机に置いてあった雑誌を広げた。
(どうやら吹奏楽専門の雑誌の様だ。世の中いろんな雑誌があるものだ。)
見ると、汐川高校の文字があった。しかも1ページまるまる記事になっている。
(汐川高校吹奏楽、打楽器、秋山忍1年生。全国吹奏楽個人コンクール優勝)
「凄いじゃないですか!全国優勝したって事ですか?」
「そう!しかも、中学1年生の時からずっと優勝してるの!今年の夏には海外の大きな大会にも出るんだよ!」
北川先輩はキラキラした目で話している。
(凄いな、全国優勝だなんて。北川先輩も周りの人も、この秋山忍って人を尊敬してるんだろうな。)
ガチャ。ドアが開く音が聞こえた。
「お疲れ様。」
さっきまで雑誌で見た人、秋山忍が立っていた。
いつもと変わらない風景だ。
ただ、昨日から”吹奏楽部"という単語が頭の中に渦巻いている。
今まで音楽には縁の無い人生を送っていた。
流行の曲は人並みに聴いていたが、自分が演奏するなんて考えもしなかった。
ましてや吹奏楽部と言われても、どんな音楽を演奏するかも知らない。
俺が知っている吹奏楽部と言えば、甲子園で野球応援をしている事くらい。
ただ、北川先輩の存在が気になる。
下心という訳ではないが、思い返すと可愛かった。単純に可愛かった。
今まで男だらけの中で野球に打ち込んできたから、女子と絡む事なんてほとんどなかった。
(あんなに可愛い人と一緒に部活をするのも悪くないかぁ。。。)
でも、そんな理由だけで、今までやった事もない吹奏楽部に入部するのは、無謀と感じていた。
(やっぱり吹奏楽部は無理だ。)
俺はペダルを強く漕いだ。
クラスにつくと相変わらず賑やかだった。
授業が淡々と進み、昼休みになった。ぼんやり外を眺めていた。
「おーい!結城!」
大声で声を掛けてきたのは、入学式の時から妙に絡んでくる三島真治だ。
「なぁ、部活何やるか決めたか?」
「いや、まだ決めてないよ。どこにも入部しない気なんだけど、親が部活はやれっていうから悩んでる。」
「やっぱりさぁ、高校生といえば青春だよな!青春と言えば部活動!部活なにやろうかなぁ。」
「三島は中学時代なにか部活やってなかったのか?」
「ん?俺?帰宅部だったよ!って言うか、三島って言うのやめろよ。真治って呼んでくれ。」
(別にどうでもいい気がするが、、、。)
「そういえば、結城は中学時代は野球部だったんだろ?野球部には入らないのか?」
「うん、入らないよ。もう、野球は出来ないんだ。」
「え?なんで?怪我でもしてんのか?」
「まぁ、それはいいじゃないか。」
そう言うと、真治は申し訳なさそうな顔をした。悪い事を聞いたと感じたのだろうか。
なんだが空気が悪くなってきた。俺はふと黒板を見た。生徒会のメンバー募集の貼紙が見えた。
「あー、真治。お前、生徒会のメンバーになったらどうだ?お前が最高に青春出来るのは、案外生徒会かもよ。」
適当な事を言って、早くこの場から立ち去ろうと思った。
「生徒会かぁ、、、。悪くないかも。。。俺が汐川高校の生徒会長になって、歴史を作る。悪くないかも!」
単純なヤツだ。頭の中で妄想している真治を置いて、俺は渡り廊下に向かった。
海風が気持ちいい。この渡り廊下が俺は気に入った。
海を眺めているだけでも良い。そんな高校生活でも良いかも知れない。
でも、心は満たされていない。入学してから今日まで、本当にこれで良いのか。
モヤモヤした心持ちだ。
俺は何がしたいのだろうか。ずっと自問自答している。
「あっ。結城くんだ!」
呼ぶ声が聞こえた。振り返ると北川先輩が立っていた。
「北川先輩、こんにちは。」
「どうしたの、こんなところで。」
「別に何も無いんですけど、ここが好きで。」
俺は恥ずかしさからか、北川先輩の顔が見れなかった。
「昨日は、ありがとう!助かったよ。」
「いえ、大丈夫ですよ。気にしないでください。」
チラッと顔を見た。やっぱり可愛い。モテるんだろうなぁ。
北川先輩はしばらく黙った。
「ねぇ、今日の放課後、吹奏楽部に見学に来ない?」
「見学ですか?でも俺、入部するかまだ決めてないですけど。」
「いいのいいの!吹奏楽部を知ってもらえるだけで嬉しいんだ!」
北川先輩は満面の笑みでそう言った。本当に吹奏楽部が好きなんだろうな。
いいな、打ち込めるものがあるって。
「じゃぁ、少しだけなら、、、。」
「本当!?じゃぁ放課後、音楽室で待ってるから!」
そう言って、北川先輩はB棟へ走って行った。
(勢いで見学するって言ったけど、大丈夫かな。強制的に入部させられたらどうしよう。)
放課後、俺は音楽室へ向かった。
途中、真治がどこに行くのか執拗に聞いて来たが、付いて来られると面倒になりそうだから、追い払った。
真治には悪い事したな。
しかし、1人で行きたかった。自分の目でじっくり見たかった。吹奏楽部を。
音楽室の前に着いた。
中から楽器の音が聞こえる。たくさんの音が聞こえる。どの音がどの楽器かは全く分からない。
しばらく中から聞こえてくる音を聞いていると、北川先輩が音楽室から出て来た。
「結城くん、待ってたよ!さぁ、入って!」
「はい、、、お邪魔します。」
恐る恐る音楽室に入った。20人くらいはいるだろうか。結構多いんだ、吹奏楽部って。
それに見た事もない楽器ばかりだ。
みんな練習に没頭しているのか、俺が入って来た事に誰も気が付いていない様だ。
北川先輩は音楽室の隅に俺を誘導した。
「結城くん、楽譜読めないんだよね?」
「えぇ、全く読めないですし、楽器なんてやった事ないですから。」
そう答えると、北川先輩は得意げな顔になり。
「昨日も言ったけど、打楽器やってみない?打楽器ならそんなに楽譜難しくないし、初心者でも出来るよ!」
そう言って、音楽室の隅にある、もう一部屋のドアを開けた。
部屋に入ると、広さは教室くらいだった。結構広い。
「この部屋はね、汐川高校吹奏楽部の自慢、打楽器練習室。防音室なんだ!珍しいんだよ、学校に防音室があるのって。」
防音室と言われても、ピンと来なかった。
北川先輩は続けた。
「打楽器って音が凄い大きいから、近所から苦情が来るんだよ。だから校長先生が作ってくれたんだよ!」
「でも、防音室作るのって、凄いお金掛かるんじゃないですか?よく作ってもらえましたね。」
北川先輩は待ってましたと言わんばかりに。
「そう、凄いお金掛かるんだよ。でも、我が吹奏楽部には素晴らしい打楽器奏者がいるの!」
そういって、机に置いてあった雑誌を広げた。
(どうやら吹奏楽専門の雑誌の様だ。世の中いろんな雑誌があるものだ。)
見ると、汐川高校の文字があった。しかも1ページまるまる記事になっている。
(汐川高校吹奏楽、打楽器、秋山忍1年生。全国吹奏楽個人コンクール優勝)
「凄いじゃないですか!全国優勝したって事ですか?」
「そう!しかも、中学1年生の時からずっと優勝してるの!今年の夏には海外の大きな大会にも出るんだよ!」
北川先輩はキラキラした目で話している。
(凄いな、全国優勝だなんて。北川先輩も周りの人も、この秋山忍って人を尊敬してるんだろうな。)
ガチャ。ドアが開く音が聞こえた。
「お疲れ様。」
さっきまで雑誌で見た人、秋山忍が立っていた。