現実の生活と砂の女
男は学校の先生で既婚、趣味は昆虫採集。
自分の名前を冠した新種の昆虫を探しに寂しい砂丘にやってくる。
あちこちに砂の巨大な窪みが有り、
それぞれの底には家がある不思議な光景だ。
まばらな時刻表のバスに乗り遅れた男は、仕方なくハシゴを使って、
蟻地獄の底のような場所にある一人暮らしの女の家に一泊する。
次の日の朝、ハシゴが外されており砂の外の世界には帰れない。
一泊のつもりがハシゴが無いので元の生活に戻れない。
何度もトライしても脱出できない。
あきらめた男はそこに住む女と生活を始める。
その生活の中で、いろいろ工夫をして自分の世界を作り始める。
砂の底の家でのいろいろな楽しみを増やしてゆき、
その家の女とも男女の仲になる。
ある日、同棲しているその女が妊娠する。
厄介な妊娠の仕方だったので女の容態が悪くなり、
砂の底から村人を呼んで病院に運んでもらう。
砂の底と外の世界を繋ぐハシゴは、村人が忘れて架かったまま。
読んでいる外の世界の自分(私)は、「やっとこんな所から出られる」と。
そしてこの重苦しさから開放されるのだと思った。
でも、この本の中の男は逃げ出さない。
そう、逃げ出すなどという考えすらなくなっている。
なぜなら、すでに砂の底が生活の全てになっているから。
阿部公房 の 「砂の女」 のあらすじです。
砂の底にいても、外の世界で先生をやっていても、
つまるところ人は自分の世界を生きているだけなのです。
私はこの小説のあらすじを例え話でよく引用します。(小)