お巡りさんが、なんともご丁寧に掃除してくださったおかけで、我が家の玄関は何事も無かったかのように元通り。
最初は憧れの本物のお巡りさんが珍しく、玄関でウロウロしていた三男も、お腹が空き飽きてきたのか
「ねぇ、いつまでいるの?」
なんて、失礼なことを言い出す始末。
「ママが来てくださいって言ったから来てくれたの。
もう少しだから待っててね」
三男は、「もう少し」という曖昧な表現が苦手だ。
もう少しって、どれくらい?これくらい?
と指で短い長さを示して何度も聞く。
あー答え方、間違えた。と反省しながら、お巡りさんにすみません、すみませんと何度も頭を下げた。
お巡りさんが帰ったあと、しばらくして夫が帰宅。
「このまま幹事のところに行ってくるから」
時間も夕ご飯時のため立て込んでいる時間帯だろうに、おまけに美人ママにはご迷惑おかけした。お詫びをこめて、地元銘菓を夫に託す。
子どもたちの就寝準備が終わり、帰宅した夫の話を聞く。
掲示板に「警告」という形で今回の出来事を張り出してくれることになった。
警察が既に介入していることも記載するとのこと。
「すぐに対応していただけて良かったけど、なんだか嫌。やっぱり、子どもたちと私の声がうるさいのかな。でも直接私にも幹事にも言えなくて、ごみ置いちゃった?」
「だからさ、うるさいのは悪いけど、だからと言って不法投棄は犯罪だよ」
「廊下に掲示してある子どもの騒音って、うちだって言われなかった?」
「それも聞いたけど、全然違うフロアからの苦情だってさ」
「違うフロアでもさ、幼稚園バスに乗るとき号泣絶叫祭りだよ。響いてうるさかったのかも…」
「あのさ、1日中とか、常識の範囲外の時間にそんなことやっていたら言われるよ。けど、子どもが幼稚園バスに乗るときの間くらい、いいだろって思わない?よくある話じゃないの?」
「よくあると思うのは、私たちが当事者だからで…お子さんいない夫婦もいるし、中学生・高校生・大学生ならうるさいって思っちゃうんじゃないかな」
「ここは、ファミリー向けの官舎だよ」
「子どもが大きくても、夫婦だけでも、それもファミリーだよ」
「官舎には、小さい子供や赤ちゃんがいるってこと、分かってない人間が多いんだよ。うるさいというくらいなら、子どもが大きい世帯の住む官舎に移るか、賃貸物件を借りればいいだけの話だろ?なんでこっちが追い出されなきゃならない?」
もう、私は子どもと私が悪いと思っているもんだから、思考はどんどんマイナスになる。
夫がそんな私にイライラしだしているのを感じた。
「分かった。まず、色々まだ分からないんだから、考えるのやめる」
「それなんだけど、目撃情報があったようだ」
は!?
なんでも我が家の前に置かれていた物たちと似ているものを持っていた人を見かけた方がいた。
でも、我が家に置くところは見ていないため、決めつけることはもちろんできない。
持っていた人は、誰に対してもだけれど、声をかけてもあいさつが返ってくることは無いし、あまり日中見かけることもないそうだ。
ちょっと病んでいるという話もあり、家族とのコミュニケーションも取れない状態なのかもしれない。
「あそこの子ども、うるさいから職場で言ってやってよ!とか、言えなかったのかな…」
「それこそ、家族でコミュニケーション取るのも大変かもしれない人が、どうやって自分の旦那に言うのさ」
「それもそうだ」
「まず、やりたいことは犯人探しじゃないだろ。もう2度と不法投棄をしないでほしい、ということなんだからさ」
それはそうだ。ここでの生活が続くのに、ご近所付き合いを滅茶苦茶になんてしたくない。
「大体の人はさ、この警告文を見て心当たりがあれば、やばいって思う。だって警察が既に来ているんだよ?
1回目のゴミ袋に関して、本人じゃなくても旦那が、あれ?ゴミどうしたっけ?とか考えて確認するはずだよ。うちに言えなくても、幹事には言えるかもしれないだろ。
名乗り出なくても、二度となければ良いねって言う話なんだからさ」
「そうだね。こんだけしっかりと対応していただくのなら大丈夫そうだね。良かったよ、どうもね」
考え出せばキリがない。
まずは当日中にここまで対応を進めていただけた事に感謝し、穏やかに過ごそう。
美人ママさんからもラインが届いており、今日はとてもお疲れになっているでしょうから、ゆっくり休んでくださいね、返信は不要ですので。という、どこまでも優しい心遣いがあった。
引っ越してきて大変なことばかり続いているけれど、その中でもこのような優しさに目を向けて、前向きに過ごしていこうと思う。