療育にも慣れ、幼稚園生活も落ち着いていると安心していた。
うちの子が通う幼稚園って、連絡帳が毎日返ってこないんですよ。
だから、書きたいことがあっても書けないということがある。
しばらく連絡帳戻らず、ようやく戻ったと思えば、まぁ長々と三男に対する要望というか、困っていることが書かれていた。
以前までは療育先での様子を毎週双子それぞれの連絡帳に書いて渡していたけど、書いても返事もなかなか来ないし、なら、もう書かなくてもいいんじゃない?と思うも様子を伝えるのは大事かなと思って書いていた。
だけど、ある日の先生からの返事で
「幼稚園では幼稚園のやり方がある」と書かれてしまい、別に療育先での声のかけ方を強要したわけでもないのに、なぜこんなこと書かれる?とげんなりしてしまった。
以来、連絡帳で療育先の様子を書くのをやめた。
そんな矢先、
三男が上履きを履いてくれない。
(制作やお遊びの)終わりが苦手、片付けもしたくないと泣く。
声をかけても、あまり聞いてもらえない。
などなど、書かれてきた。
声のかけ方や接し方が分からないから詳しく話したい。電話すると言われた。
電話で何を話せと?
それができないから療育に通っているんだが。
私だと角が立つ。
その週の療育の日。
電話でどう話せばと考えてもわからない。
どうしようかなと思い、給食は三男一人だったため、担任の先生に話してみた。
「先生、相談があるのですが…いいですか?」
三男が給食を滅茶滅茶にしようとしている手を止めながら、先生が目を大きくした。
「お母さん、どうしました?」
「私と言うか…幼稚園の先生から連絡帳に三男への声かけや接し方で、困っていると連絡来たんです」
「え?三男くん?こんなに落ち着いているのにね〜」
今この瞬間の給食の状況を見ても世間一般の落ち着いているとは、かけ離れている。
でもここの先生は、絶対に私たち保護者や子どもに不快感を与えない。
今まで、療育の日の過ごし方を連絡帳に書いて幼稚園の担任に伝えてきたことを話すと
「まぁ、それはそれは、どうもありがとうございます!良かったです!」
「えぇ。私も良かったと思ってたんですが…先生から先日幼稚園には幼稚園のやり方があると返事が来まして」
「「へ?!」」
後ろでお昼を食べに来た別の先生も驚いたのか、声をあげてこっちを見た。双子が通うにあたって様々な聞き取りや検査、小児科での診察補助をしてくれた先生だった。
「そんなことあります!?」
「幼稚園なり、保育園なりね、方針あるからそれはそうですけれども…お母さんびっくりしましたね」
「それから、連絡帳にここでの過ごし方を書くのがなんだか私、嫌になってしまって」
「わかりますよ。そうでしたか…」
「もちろん幼稚園は幼稚園のやり方あるのわかります。だから、押し付けたつもりはなくて、こうやって声をかけてもらいました。こうやって対処しましたって書いてたつもりなんです。…ああ、でも私の書き方が悪かったのかも…」
「「そんなことないですよ」」
ここでは、否定されない安心感がある。だから正直に思っていることを話せる。
「それでですね、今日の午後に先生から電話が来るんです。詳しく声のかけ方や接し方を知りたいと」
「具体的に、どのような状況の時に三男くん困っていると言われました?」
「特に、遊びの終わりや片付けの時に困っているみたいです。でもそれだけじゃなくて、上履きを履かないとか、身支度しないで遊びに行くとか…つまり1日通して困っているようで」
「それは、なんというか、お母さんも説明しにくいですね」
「う~ん…三男くん満3クラスですよね?ちょっとずつ長い目で見守ってもらってもいいような気もするんだけどなあ…」
「私だと喧嘩腰になりそうで。どのように先生に説明したら良いかわからなくて困ってしまって」
幼稚園には幼稚園のやり方があるのなら、その通りやっていればいい。
私はずっと連絡帳で伝えてきたのに、拒否をしたのは幼稚園なのに、と思ってしまうのだ。
うーん、と担任の先生が三男を見る。
「あの…外野が申し訳ないのですが、提案があります」
後ろの先生が給食のお盆にお皿を置き、手を挙げていた。
「私たちが幼稚園の先生とお電話しましょうか?
もちろんお母さん嫌だったら無理しないでください。
あとは、私たちが幼稚園に行って次男くん、三男くんの様子を見ながら担任の先生とお話をする。もしくは、先生に来てもらって、クラスを見学してもらう。という支援の仕方があるんですよ。先生の希望で、電話と見学両方してもらっても、もちろんオッケーです」
「え、先生たちが幼稚園の先生と直接お話ししてくれるんですか?」
「他にもね、こういう相談あるんです。私たちが幼稚園の先生と話すことはおかしなことではないですよ」
「それがいいですね!!そうしましょう!今日の午後ですよね?こちらに電話いただければ、私が担任の先生とお話しします」
「ありがとうございます!」
親の私だと、どうしても「なんで精一杯やっているのにそんなこと言うの?」と思ってしまうのだ。
先生同士だと安心する。
「もちろん、私が先生とお話したことは次回、お母さんにお伝えするので心配しないでくださいね」
あっという間に解決した。
そして、午後先生から電話が来た。
療育先の先生に相談したこと、先生同士で話してもらいたいことを伝えた。
すると担任の先生はとても喜んでいた。
担任の先生だって、親の私には言いにくいことは山ほどあるだろう。
様々な事情を持つ保護者がいて、その間に入ってくれて、子どもが少しでも生活で困ることがないように、生活しやすくなるような幅広い支援をしてくれる。
感謝感謝。