第2話「現場検証」

1986年4月26日午前1時23分、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国のチェルノブイリ原子力発電所で爆発事故が起こります


科学者であるレガソフは、ゴルバチョフ書記長のもと集まった閣僚会議に参加させてもらいます

事前に入手した資料により、レガソフは地球誕生以来未曾有の事故だと知ります
閣僚たちは、国内外の体裁ばかり考えている雰囲気です

事の重大さにまったく気づいていません

レガソフは閣僚たちに必死に危機を伝えます

レガソフはウラン235の原子を弾丸にたとえて
光速と同じ速さで金属、コンクリート、木、人体を貫くと説明します
1g当たりの弾丸の量は何兆個で、チェルノブイリはそれが300万グラムあるというのです
その弾丸が風に運ばれて、100年から50000年飛び続け、空気や飲料水に含まれます

そうなると飲み水でなくなるどころか、その水を摂取する動植物のすべてが人間にとって凶器と化すのです

ゴルバチョフ書記長は、事故処理の責任者ボリス・シチェルビナに
レガソフを偵察に同行させるように命じます

現場へ向かうヘリの中でボリスは威圧感むきだしでレガソフに命じます

 

原子炉のしくみを教えろ


はい?


簡単だろ


一口には言えません


なるほど
私の頭では理解できないか
では言い直そう
原子炉のしくみを教えないと
兵に命じて
君をヘリから突き落とす




レガソフは説明を始めます
原子炉では核分裂を利用して蒸気を発生させ電力を作り出します
燃料は不安定な物質ウラン235です
中性子を多く含んでいます

レガソフはその中性子を説明しようとします

 

ああ、中性子というのは…


弾丸だろ


ええ、弾丸です


レガソフは原子炉のしくみをわかりやすく説明します
その弾丸である中性子がウランから飛び出します
一つの原子から出た弾丸は別の原子にぶつかります
その衝撃で原子が分裂すると膨大なエネルギーを発生させます
これが核分裂で、中性子は速い速度で移動するので通常では原子にぶつかることはありませんが
黒鉛で包むことで中性子を減速させて核分裂を安定させています

その黒鉛の破片が外で見つかったということは、

炉心自体が爆発し剥き出しになっていることを示すのです

つまり弾丸である中性子が空気中に放出し続けているのです
一通り原子炉のしくみを聞き終えたボリスはレガソフに貸したペンを胸ポケットに収めながら言います


そうか
原子炉のしくみは理解した
君は用済みだ




最初の印象はお互い最悪のものでした

その後、レガソフは毅然として科学者としての対応を貫き通します

そんなレガソフの姿にボリスは信頼を置くようになります
しかし、レガソフは政府の住民避難に消極的な姿勢に批判的です

政府側の人間としてボリスは、レガソフと対立せざるを得ませんでした


ある時、ボリスは放射能に現場でさらされている自分たちはどうなるのか尋ねます


イリーン博士に聞いた
避難させるほど危険じゃないそうだ


物理学者じゃないでしょう


医学博士が言うんだから、安全なんだろ


ここは危険なんです


我々も?


ええ、そうです
あなたも五年後には死にます






すみません…あの…すみません


原子炉にたまった水を直ちに排水しないと、水蒸気爆発を起こします

その水蒸気爆発のレベルは核兵器の数倍の威力になります
レガソフは水蒸気爆発を防ぐために発電所にたまった水を排出する作戦を会議で提案します
しかし、それは作戦を行う者の犠牲を伴うものでした
三人の命を奪うための許可を求めるものなのです
ゴルバチョフ書記長は苦渋の決断を迫られます


そして答えます


同志レガソフ
すべての勝利に犠牲はつきものだ



ボリスとレガソフは発電所で排水作戦を志願してくれないか話し合いの場を設けます
作戦を説明するレガソフに作業員が質問します


死ぬことになるとわかってるくせに
まだ隠す気か?
なんで俺たちがやらなきゃならないんだ


やらねばならんからだ


ボリスの迫力のオーラに作業員たちは静まり返ります

 

 



君たちしかできないことだ
やらねば
大勢が死ぬ
十分な理由だと思わないか
我々は祖先の血を受け継いでる
世のために犠牲になった祖先の血だ
いつの世にも苦難は訪れる
事故を起こしたものを憎み、その代償を呪っているが
私は受け入れる
君たちも頼む
水に入ってくれ
やるしかないんだ

 

そして3人の若者が死を覚悟して志願します

 

 

 

人間の勇気は普遍的なのです

 

次回へ続きます