2020年ゴールデングローブ賞(リミテッドシリーズテレビ映画部門)
作品賞・助演男優賞受賞
『チェルノブイリ -CHERNOBYL-』(全5話)
旧ソ連の敵国であるアメリカ合衆国のHBOテレビが
事故の内側で起こっていた人間ドラマを徹底的に描いています
敬意が感じられます
退屈な原発批判は皆無に等しいです
ドラマだと侮ってはいけません
下手なドキュメンタリー特集より事故の概要もわかりやすいし
放射能のなにが怖いのかも本当に理解しやすいのです
ストーリーは
事故の調査に使命を果たそうとする科学者のヴァレリー・レガソフ
政府から事故処理の責任者にされたボリス・シチェルビナ副議長
レガソフの同僚である科学者のウラナ・ホミュックの3人を中心にまわっていきます
3人が事故処理に奔走し、KGBに監視されながらも事故の真相を追求していくという展開です
ヴァレリー・レガソフ
無駄のない有能な科学者です
旧ソ連の典型的なタイプの科学者です
まっすぐな姿勢で科学と向き合い、真実のみを信じる男です
次に
ボリス・シチェルビナ
これまたステレオタイプの旧ソ連の官僚です
一見融通が利かなそうで、組織の中ではそつなく立ち回ろうとする官僚です
しかし根の部分では真実を追い求める男であり、
ともに行動するレガソフに徐々に共感していきます
この男の存在がドラマの凄みを作り出しています
ボリスを演じたステラン・スカルスガルドはゴールデングローブ賞 助演男優賞を受賞しました
そして
ウラナ・ホミュック
こちらはアメリカ的な正義を貫き通そうとするレガソフの同僚科学者です
上層部の隠蔽に断固拒否する姿勢を見せようとした科学者は旧ソ連の中にもいたでしょう
ただ正直にいうと、旧ソ連の閉鎖的で抑圧的な環境でそんなことできるの?と違和感を持たせるキャラクターではあります
実在した人物ではないようです
その他
旧ソ連に対して外国が持つステレオタイプな炭坑作業員や退役軍人がたくさんでてきます
ウォッカを水代わりに飲み、がさつで武骨で愛想のないキャラクターたちです
ただそれらのキャラクターに対してもアメリカ的な『英雄』というスパイスを入れて描き
嫌味なく敬意が感じられます
グルコフ(炭鉱夫のリーダー)
当時の旧ソ連に現実にいた人たちをモデルにしていると思います
人間というのは普遍的なものです
そういえば、映画『アルマゲドン』でロシア人技師がスペースシャトルの部品をレンチでぶったたいて修理に成功するというシーンがありました
公開当時のロシアをマジギレさせるようなわけのわからないエピソードはこのドラマにはありません
最後に超重要人物
チャルコフKGB第一副議長
世界最恐だった諜報機関KGBの幹部です
アメリカのCIAも怖い存在で描かれることが多いですが
KGBは何をしでかすかわからない不気味さも加わります
(あくまでもイメージですが)
チャルコフも基本無表情、無感情ですが
なにも知らない顔をして、すべてを見通しています
おまけですが
ミハイル・ゴルバチョフ書記長も登場します
第1話では
事故がどのように起こり、その直後何があったかドキュメンタリータッチに描いているだけです
ただショッキングな事実を淡々と見せられるだけなので
ここで挫折する人が多いんじゃないかと心配になります
映画『プライベートライアン』のように最初の何10分、やたらリアルな戦場の惨状をみせてから
やっとストーリーが動き始まるのに似てるので、我慢が必要です
その代わり、事故が起こった時の描写はものすごいリアルで迫力もあります
人々が橋の上に集まり、まるで花火を眺めるように原発の火事の明かりを見つめる描写も悲しい伏線です
ドラマが転がり始めるというか、主要キャラクターが登場して面白くなるのは
第2話からです
今回はイントロダクションということで
第2話からの素晴らしいセリフ集は
次回です