今、その料理人は素材を探しておる。豊かな発想や感性というものは、気持ちにゆとりがないと生まれないようで。目には見えない、時間や勢力に追われているときは美しい言葉や被写体も見落としやすいのだと料理人は言う。なるほど、ものごとの考え方や視点を変えるにはちょっとした「無」の意識が必要であるようだ。今、そこにある柵の位置を変えてみるだけ。今、そこにある塵を素材にしてみるだけ。とても簡単なことであった。