●足関節捻挫について

捻挫については、「手や足などの関節に無理な負荷がかかり、関節が外れかかって靭帯や腱が損傷された状態」と定義されています。捻挫によって損傷される組織は靭帯だけではなく、腱や軟骨にまで及ぶことがあります。

 

足関節の捻挫はスポーツ傷害でよく見られる傷害の1です。研究によると、足関節はあらゆるスポーツにおいてもっとも傷害の多い部位であり、特に捻挫は足関節の傷害でよく見られるものです。傷害に伴う競技離脱の要因の25%が足関節の捻挫によるものと言われています。また内反捻挫(外側側副靱帯の捻挫)は足関節捻挫の85%を占めるのに対し、外反捻挫は5%、それらのうち10%は脛腓靭帯の捻挫を伴います。足関節内反捻挫の受傷後、およそ2040%の患者に慢性的な不安定性が認められたという報告があります。

足関節捻挫の再受傷率に関してはさまざまな研究がなされており、それらによると約47-73%の人が複数回以上の捻挫を経験しています。

 

●足関節内反捻挫について

足関節捻挫には内反捻挫と外反捻挫に分けられます。内反捻挫は外反捻挫に比べて圧倒的に発生頻度が高い傾向にあります。では、なぜ内反捻挫が多いのか説明していきます。

足関節の特徴として、外果(外くるぶし)に比べて内果(内くるぶし)の位置が高いため、足首は内側に動かす方が大きく動き(外反に比べて内反の方が10°大きく動く)、内側に比べて外側に靭帯が少ないため、制動性が低いといった特徴があるため、内反捻挫が多くなります。

 

図1 内果(内くるぶし)と外果(外くるぶし)の位置 

  図2 内反の動き

 

足関節内反捻挫では足関節外側靭帯損傷が発生し、そのうち85%が前距腓靭帯の単独損傷2040%が前距腓靭帯と踵腓靭帯の複合損傷であり、踵腓靭帯の単独損傷や後距腓靭帯の損傷は稀です。

 

●足関節外反捻挫

 足関節の外返し捻挫は、不整な路面(でこぼこ道や砂利道)での捻挫や、足関節の外反変形、あるいは外反偏平足などの足の形態的・機能的異常を有する場合に起こりやすいといえます。 またしゃがんだ姿勢での作業やローラースケート、スケートボードなど、膝を曲げて体を屈む体勢を取るスポーツでの足首の捻挫、もしくは、ラグビーやサッカーなどで、足関節の外側から他者の足や体が乗って 足の外反を強制された場合に、重度の捻挫や骨折を伴う重傷を生ずることもあります。

 

三角靭帯損傷は足関節の内くるぶしに、外観的に三角形状をした靱帯群がありこれを三角靱帯と呼んでいます。この靱帯は4本の靱帯で構成され、非常に強力な靱帯です。そのため、強い外反強制などの外力を受けた場合や特殊な条件下で足の外返しを生じた場合に起こり、脛骨 や腓骨、距骨などの骨折を合併しやすいです。

 

図3 三角靭帯

 

●足関節重傷度の分類

Ⅰ度損傷:前距腓靭帯の部分断裂

Ⅱ度損傷:前距腓靭帯の完全断裂

Ⅲ度損傷:前距腓靭帯と踵腓靭帯の断裂

※Ⅰ・Ⅱ度損傷は保存的に治療。Ⅲ度損傷では手術が必要な場合があります。

重症になるにつれて、靭帯が断裂して足関節が不安定になっていくということです。

しかし、上記に記載した分類は、ほんの一部であり様々な分類の仕方があります。広く一般的な知識としてはⅠ度は靭帯を伸ばしてしまった程度、Ⅱ度が部分断裂、Ⅲ度が完全断裂などの分類が広く知れ渡っているのではないでしょうか。

そのため、病院や整形外科などでⅠ度損傷と言われたからといって、必ずしも靭帯が部分断裂しているというわけでは無いので注意が必要です。