朝から煙草に火を付けた、煙草の匂いが手に着くと嫌がるお客様がいるのですが
梨花のことが頭から離れなく何もしないで過ごせなくなっていました
愛子がいつもより早くやってきた
慌てて煙草の火を消したが愛子のご機嫌を損ねてしまった
カジモトの店内は既に愛子が衛生管理をしていたので申し訳なく思った
香枝とめぐみは
8チャンネルの生放送の収録の打ち合わせであった
天満の駅前でタクシーを待っていた
めぐみ 「 少し寒いですね 」
香枝 「 今日は外のロケなんでしょ 」
めぐみ 「 寒い日のロケは嫌なの 」
香枝 「 貴方なら大丈夫でしょ寒さなんて辛い内に入らないは 」
局での打つ合わせを終えて、ロケバスに乗って移動中
香枝はめぐみのメイクをチェックしながらこう言った
香枝 「 明るく振舞ながら、目で訴えるようにならないとね 賢い大人らしくね 」
香枝のメイクは魔法のようにめぐみの目を力強く見えるように手を食わせた
12時から始まる番組のスタンバイで待機
アポなしで商店街のお店を直撃する番組であった
香枝 「 私達の第二の地元の商店街だけど歩いたことないわね 」
二人は、カジモトが梨花の家だとは知らなかった
そして12時を迎え、一件目のお店の扉を開いた
カジモトであった
私の性格は温厚で優しいと世間では見られていますが
実はそうでもないともいえる
温厚と引き換えに我慢という心理的な負担を負っています
時々、自分がコントロールできなくなりそうな時も
「諦め」という解釈をすることで納得し、乗り越えてきました
こいう性格になった理由は多々ある
美人の嫁の言うことに逆らうことなく過ごすことに
違和感がなかった、梨花の笑顔に癒されていた
今日は違っていました
帰ってこない梨花を心配していることは愛子以上である
そんな心理状態で迎えたテレビの取材であった
めぐみは飛び切りの美人ではあるが
私は梨花のことが心の底から愛していた、めぐみなど比ではなかった
テレビ向きの大げさなメイクをされた目が私にはこうみえた
何様の思ってるんだ、付けあがり過ぎたなんだよ
お前に容赦する必要はない
昭和に建てられた床屋にしては清潔感のある店だと思っためぐみは
店内を見渡しながら行き届いた衛生管理をアピールしました
めぐみはカットチェーに座りながら床屋を楽しむ感じでレポートをすることにしました
椅子に座ると男の人って「刈上げ」とか注文してるイメージがあった
めぐみも幼い頃に父を床屋に行った思い出があり
その時は、満面の笑みでレポートしてました
極自然に「 刈り上げでお願いします 」と口にしていた
若くて可愛い愛子に目が止まった 愛子であった
愛子は薄緑のカットクロスを手に持って立っていた
この店には不釣り合いの若い店員、違和感しかなかった
世の男性はこの店員にどんな性を感じているのかと思うと寒気がした
少し時代遅れの白衣着たこの子の考えた男を虜にする罠なのか
うまいことやってるんだな、こんなお店でも儲かる訳だ
その瞬間が訪れた
美容院のクロスと違いカジモトのクロスには嫌な臭いがした
そして少し不衛生な感じがした
私は薄緑の刈布を少し強い目に巻いてやると
めぐみの体は凍り付いたように固まっていました
許せないという気持ちが私の頭の中にあった
お客様のオーダーは刈り上げ
私は真面目な理髪師です
バリカンをめぐみの首すじに当てがっていた
長い髪が床に落ちた
テレビカメラマンがめぐみの正面から背後に回ってきた
ADらしき方も凍り付いていたが
私に対してカンペを出してきた
「 続けてください 」 と書いてあった
テレビの視聴者は私のバリカンの動きに釘付けになっているのは間違いなかった
私も鬼ではない、
私 「 可愛い髪型にしてあげますよ安心してください 」
めぐみ 「 お願い致します 」
テレビの生中継を続けることにめぐみはプロとして覚悟を決めていた
視聴率が騰がることと、SNSの炎上に旨味を感じていた
視聴者は哀れみを感じさせたほうが自分に得がある
涙を流した
しかし、膝の上のに落ちた切り落とされた髪の毛を掴んだ手に力が入っていた
髪の毛をバッサリ切られると誰でもそうなるのですが
テレビの視聴者にはどのように映っていたのかは想像できなかった
可哀そう 止めて 中には、坊主にしてしまえ なんて思っている人もいるだろう
そう思うともう一人の私がもっと上までバリカンを入れるように囁く
取り返しのつかない当たりまで刈り上げてしまった
必死に耐えていためぐみの頬に一筋の涙が流れていた演技ではなかった
何日か前に梨花の髪の毛を切った仕返しをしているとは思ってもいませんでしたが
めぐみは、梨花の髪の毛を切った時の梨花の気持ちをそのまま味わっていた
めぐみは、止めてという言葉も出ないまま鏡を見ることも出来なかった
前髪も眉の2cm上でバッサリ切ってあげました
せっかくの香枝のメイクが台無しになり
あどけない子供のようにオデコが丸出しになり
10歳は若返らせてやったからね感謝しろよ
気分は良かった
もう今までのキャラでテレビには出れないとめぐみは思っていた。