化学物質過敏症に苦しむ兄弟のために 小学校が特殊建材で専用教室 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/657229
化学物質過敏症に苦しむ兄弟のために 小学校が特殊建材で専用教室
2021年10月14日 11:40

兄弟のために改修された教室(京都府与謝野町岩滝・岩滝小)
柔軟剤などの微量な化学物質に反応する「化学物質過敏症」に苦しむ児童のため、京都府与謝野町の岩滝小が今年、特殊な建材を使った専用の教室を造った。

一方、化学物質過敏症の子どもに学校が個別に対応することは一般的に難しく、専門家は多くの子どもが症状に苦しみ、学校に通えず学習の機会を失っていると指摘する。

 壁や床、天井が白く覆われた近未来的な空間で、2人の児童が学習机に向かい、真剣な表情でドリルに取り組む。

木造特有の香りは感じず、廊下の天井付近を横断する通風管を通り、山からのきれいな空気が取り込まれる。

 「他の子どもたちと同じようにのびのびと生活できず、とてもかわいそう」。

同小に小学4年の長男(10)と1年の次男(6)を通わせる与謝野町在住の女性(42)がやりきれない思いを口にする。

兄弟は入学前から化学物質過敏症に悩んできた。農薬や除草剤、柔軟剤や洗剤の匂い物質に反応し、立っていられないほどの頭痛や倦怠(けんたい)感、皮膚炎、呼吸困難といった症状が現れる。

女性本人も2年前に発症し、農薬散布で体調が悪い日は、家族で高台に避難する生活を続けてきた。

 昨年、それまで学校に通えていた長男が不調を訴えるようになった。

学年が上がり教室の場所が変わったことに加え、新型コロナウイルス対策のために習慣づけられた手指消毒用のアルコールに反応した。

他の児童が消毒をすると1~2時間しか学校にいられなくなり、欠席も増えた。

 今年、より症状の重い次男が入学するにあたり、両親は事前に学校に相談した。

できるだけ風通しの良い教室を探そうと下見したが、柔軟剤の香りやワックスの成分が学校全体にしみこんでいた。

「とても学校には入れない」。

それでもわが子を学校に行かせようと、両親は根気強く相談を続けた。

 「ここまで深刻な病気だとは思っていなかった」。

兄弟が通う岩滝小の宮﨑竜也校長は話す。

 子どもが大勢いる環境では厳しいと、学校は児童数の少ない病弱学級への編入も考えたが、新型コロナウイルスの感染が広まり、消毒ができないことが大きな障害となった。

前例が無く、学校としての対策には限界があったが、「児童が学ぶ場所をなんとかして確保したい」と、町教委との間で議論を重ねた。

 今年7月、町教委が改修のための予算を付け、兄弟専用の教室が作られた。

入学以降、屋根の無い中庭にテントと机を置き、一人で勉強していた次男も、2学期に入り1日3時間ほどは教室に入ることができるようになった。

「外での体育など、みんなと一緒に過ごせる時間が一番楽しい。早く治してみんなと遊びたい」と願う。

 化学物質過敏症は、周囲の理解や気遣いにより症状が緩和することもある。

しかし女性は「周りの人や学校が協力してくれるのはとてもありがたい半面、申し訳ない思いもある」と複雑な心境を口にする。

行政などに相談に行っても「事例がないため難しい」と対応を渋られることもあり、「患者の助けになる総合的な相談先がほしい」と話す。
■認知度低く、全国的な対応に遅れ

 化学物質過敏症は診察できる医療機関が少ないことや病気そのものが周知されていないことから、子どもの患者数は正確には分かっていない。

新潟県上越市の小学生約1万1千人を対象にした2017年のアンケートでは、回答児童の12・1%に化学物質過敏症の症状が見られた。

 過去3千人以上の患者を診てきたふくずみアレルギー科(大阪市中央区)の吹角隆之院長は、「潜在的な子どもの患者は膨大にいる」と警笛を鳴らす。

大人の患者と比べ、小学生以下は自分の症状の原因が分からず、「だるい」「学校に行くと疲れる」「なぜかおなかが痛くなる」などの理由で不登校になってしまうケースもあるという。

 化学物質過敏症は、記憶力の低下や集中力の低下など、学習障害につながる事例も多い。

本が読めなくなったり、簡単な計算ができなくなることもあるという。

吹角院長は「保護者や先生などが、症状に気付いてあげられるよう、化学物質過敏症の理解を増やすことが重要だ」と語る。

 化学物質過敏症に対応した商品の販売を行うパハロカンパーナ自然住宅研究所(京都市右京区)の足立和郎さん(63)は「10歳以下の患者が増えているという体感はある」と話す。

都市部の学校は空き教室が少なく、化学物質過敏症の児童に対応できない学校が多いため、田舎に転校したり苦しい思いをしながら通学を続ける相談者もいるという。

一方で、一般の認知度が低いため全国的な対応が遅れており、「安全な柔軟剤や芳香剤など、化学物質過敏症に配慮した商品開発が求められる」と話す。

 化学物質過敏症 柔軟剤やインクなどに含まれる化学物質により、頭痛や吐き気といった健康被害を生じる。

患者数は全国で100万人以上と推定されている一方、原因や発症のメカニズムは未解明で、治療法も確立されていない。