2:内分泌かく乱化学物質による私たちの健康と未来への脅威に、私たちに何ができるか | 化学物質過敏症 runのブログ

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・毒性学の常識を覆した環境ホルモン
ところが、環境ホルモン作用には従来の毒性学の常識を覆す問題があることがわかってきたのです。
 毒性学の父、パラケルススの有名な言葉に「すべてのものは毒であり、毒性がないものは存在しない。

毒か毒でないかを決めるのは、その服用量である」があります。
どんな化学物質でも、微量なら毒性がなくても、ある量に達すると毒性が現れます。
つまり、少量なら問題がなくても、量が増えれば毒性が現れるという考え方です。

それが約500年にわたって信じられてきました。
その毒性学パラダイム(ある時代のものの見方)は、その後大きな変更を余儀なくされました。

環境ホルモン問題の登場によって、量が多いために毒になるばかりでなく、「極めて低用量でも毒性が高まることがある」ことがわかったのです。

「低用量効果」と専門家はよんでいますが、パラケルススの毒性パラダイムが覆され、新しいパラダイムにシフトしたのです。
 今でも広く使用されている有機リン系農薬は、長い間げっ歯類(マウスなど)には影響があっても、人間には害がないとされてきました。

ところがその後、有機リン系農薬によって、5~7歳ぐらいの子どもの知的レベルが下がることがわかりました。
また、極めて低用量であっても、子どもの脳の発達に重要な甲状腺ホルモンに影響することが判明したのです。

母親の子宮内で胎児が有機リン系農薬をあびると、たとえ母親の甲状腺ホルモンの値が正常でも、超低用量のばく露(その値が微妙にふれるほど)で、胎児の脳の発達に影響することがわかったのです。
 気づかない間に、私たちの体の中でさまざまな化学物質のレベルが上昇し続けているのです。多くの家具や生活用品に含まれる難燃剤の血液中レベルも、米国では日々上がっています。

低用量でも子どもの脳に影響することが問題なのです。
 

プラスチックが肥満や疾患を引き起こす
プラスチックにはさまざまな物質が使われていますが、その中には肥満を促す化学物質(obesogen = 肥満促進物質)がたくさん入っています。

これまでに肥満促進物質は50種類ほどわかっています。

例えばアルミ缶などの缶詰類の内面はプラスチックでコーティングされています。

そこに含まれている BPA*5は、肥満細胞を肥大させることや、心疾患を予防するたんぱく質、アディポネクチンの機能を阻害することがわかりました。

また、BPA は合成エストロゲンであり環境ホルモンとして作用するため、思春期などの不安定な発達段階では性特異的効果(女性・男性の特有の影響)を及ぼす可能性があります。
やわらかいプラスチック(軟質プラスチック)に使用されているフタル酸エステル類は、カロリーや熱を脂肪に変えて代謝を阻害します。

また、精子産生と性差に重要な役割を果たす男性ホルモンの働きをおかしくさせます。

ですから、フタル酸エステル類にばく露して男性のテストステロンレベルが低下すると、心血管疾患にも影響するのです。
 

環境ホルモンが経済的負担を増大させている
 欧米では毎年、環境ホルモンによって起こる疾患の治療に莫大な医療費がかかっています。米国では国内総生産の約2.3%(3400億ドル)にあたります。

また、欧州では国内総生産の1.2%(1630億ユーロ)程度になっています。
これらの算定の根拠となっているのは、数多くある環境ホルモンのわずか5%未満に過ぎず、しかも、それら物質に起因する疾患の一部分しか含まれていません。

ですから、実際の医療費はそれよりはるかに高額に上るといえます。

したがって、環境ホルモンという有害化学物質によって、国に必要以上の経済的負担が強いられています。
 

今こそ立ち上がるべき時
 世界保健機関 WHO と国際連合環境計画 UNEP は『内分泌かく乱化学物質に関する科学の現状2012年版』*6という総合的な報告書を発表しました。

ここには、それまでに世界中で蓄積された環境ホルモンに関する科学的証拠が満載されています。
 現代人なら誰でも100% が環境ホルモンに毎日ばく露しています。

しかし困ったことに、わずか1%の人しかそれが問題であることに気づいていません。
 医学界でもそうでしたが、少しずつ状況は変化しています。

米国小児科学会 AAPは、「食品添加物と子どもの健康(FoodAdditives and Child Health)」についての声明を発表しました。
 

図表│有害化学物質から子どもを守る方法
◇ 有機食品を摂取する。
◇ 缶詰類を避ける。
◇ プラスチック等の容器をレンジで加熱しない、食器洗い機で洗浄しない。
(レンジ対応のプラスチックは変形しないというだけで、どんな物質が出るかは不明)
◇ プラスチック製品の使用を減らす。
◇ 毎日数分でも室内の空気を入れ替える。
(外の空気はカーペットや電気製品から出る化学物質の濃度を下げる)
◇ 発泡剤がむき出しになっている古い家具などは新品に変えるか、カバーをする。
◇ 衣類は、綿やウールなど天然繊維の製品をなるべく使用する。
◇ ホコリが溜まるのを防ぐために定期的に掃除する。
◇ 子どもが難燃剤の入った製品を触ったり、口に入れたりしないように注意する。
◇ 古いカーペットなどには臭素系難燃剤(PBDEなど)が含まれているので取り扱いに注意する。
◇ ヨウ素を含んだ健康的な食事をとるようにする。
(ヨウ素含有量が多い食品:昆布、わかめ、ところてん、海苔、まだら・すけとうだら、まあじ、かつおなど)

 

たとえ地球温暖化が多少とも抑えられたとしても、環境ホルモンの問題に対処しなければ、次世代の有害化学物質による汚染は進み、人類の存続は脅かされることになるでしょう。

現代では、先進諸国で不妊症が広がり続けています。

このままでいくと、いつか私たちの社会は、絶対君主の元に妊娠できる女性のみが集められ、国家によって受精が可能な精子をもつ男性と強制的にカップルがつくられ、子どもが増やされる社会になるのではないでしょうか。
 私たちは今、環境ホルモンの脅威をしっかりと認識すべきです。

 

私たちができる安全で簡単な対策
 私たちは、環境ホルモンに対する国の規制が整うまで待っているだけでは、子どもたちの健康を守ることはできません。

有害化学物質のばく露を減らすために、日々の暮らしの中でできる安全で簡単な対策(図表)をしてください。
レオナルド・トラサンデ氏のご講演を元に、水野玲子(理事)がまとめたものである。